ユニ・チャームと長崎大学が、NIRSで赤ちゃんの触覚刺激に対する脳の反応を共同研究 赤ちゃんの脳はおむつ素材の違いを区別し“気持ちいい”触感を実感 ~2013年3月27日(水)第90回日本生理学会にて発表~
配信日時: 2013-04-04 11:00:00
ユニ・チャーム株式会社(本社:東京都三田、社長:高原 豪久)は、国立大学法人長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の篠原一之教授と協力して、乳幼児を対象に脳の血流量変化をNIRS(ニルス)※によって測定し、赤ちゃんの触感について研究を行いました。この結果、「赤ちゃんは紙おむつ素材の触感の違いを区別していて、素材の気持ち良さを実感している」ことを実証いたしました。この研究成果を、2013年3月27日(水)の第90回日本生理学会大会にて発表しました。
※NIRSとは、近赤外線分光法(Near Infra-Red Spectroscopy)を指す
《図1 NIRSによる2種類の素材の触刺激時の脳活動比較》
http://www.atpress.ne.jp/releases/34487/1_1.jpg
《赤ちゃんのNIRSを装着している風景画像》
http://www.atpress.ne.jp/releases/34487/4_4.jpg
■背景
近年、先行研究により、乳幼児が認知・情動能力によりさまざまな外界の感覚刺激に反応し、外界に適応していることが明らかにされている。しかしながら、乳幼児の触覚に関してはほとんど研究がなされていない。そこで本研究は、ユニ・チャーム株式会社生活科学研究グループと国立大学法人長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の篠原教授と共同で、乳幼児が日常生活において触れている紙おむつ素材に焦点を当て、乳幼児が紙おむつ素材の触感を区別できるか、またどのように感じているかについて、脳機能計測を用いて検証しました。
■研究の概要
対象:2~6ヶ月の合計26名(男12人、女14人)の健康な日本人の乳児
期間:2012年2月~2012年10月
方法:触刺激を乳幼児の左腰部へ呈示した時の前頭前野(APFC:眼窩前頭皮質(OFC)と前頭極皮質(FPC))の脳の活動を調べた。脳の活動性は、NIRSで酸化ヘモグロビン量を測定することによって計測した。触刺激として、素材風合いの異なる2種類(P及びR)の紙おむつの素材サンプルを選び、それぞれ30秒間、これを2回繰り返すという刺激を呈示した。触刺激呈示の圧力は約10hPa、速度は約2cm/秒とした。
研究方法図解
http://www.atpress.ne.jp/releases/34487/3_3.jpg
■研究の成果
乳児の左腰部において、サンプルPはサンプルRに比較して、6倍の脳血流量の増加が見られ、有意に高いAPFCの活動性が見られた(図1)。つまり、乳児が、紙おむつ素材の触感の違いを、おむつを装着する腰部において、感じ取っていることを示唆している。さらに、APFCは報酬系(快の情動や認識を担う神経系)の役割を担っていることが知られていることから、乳児はサンプルRに比べて、サンプルPの触感を気持ち良いと感じていると考えられる。
■結論
乳児は、日常生活においておむつで覆われている部位である腰部においても、素材の違いを敏感に感じ取っていることが今回の検討から初めて確認することができた。おむつ素材の風合いを向上させることで乳児に快適な触感を提供できることも確かめられた。今回、構築できたNIRSによる乳児の触感評価法を用いて、素材の触感の改良を進めることが可能となった。
■学会発表
今回の研究成果を、第90回日本生理学会大会(日時:3月27日、場所:タワーホール船堀)にて発表しました。
■研究参加メンバー
国立大学法人長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 篠原 一之
国立大学法人長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(2012年時) 藤澤 隆史
国立大学法人長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(2011年時) 木田 哲夫
ユニ・チャーム株式会社 生活科学研究グループ 丹下 明子
ユニ・チャーム株式会社 生活科学研究グループ 曽我 洋行
【国立大学法人長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の篠原教授のコメント】
赤ちゃんが、お母さんのお腹の中いる時から指しゃぶりをすること等から考えても、触覚は他の感覚に比べて早く発達することが考えられます。しかし、赤ちゃんの触覚の実態については、測定の難しさもあり、これまであまり詳しく調べた研究はありませんでした。さらに、赤ちゃんは生まれてから24時間365日、おしり周りの肌はおむつに包まれています。デリケートな肌の赤ちゃんが、紙おむつという触覚刺激に対して実際どのように感じているのかを、ユニ・チャーム社と共同して脳科学的指標を用いた研究を行いました。
その結果、赤ちゃんは、おしり周りの触感で紙おむつの素材の違いを区別し、素材の違いによって気持ち良さが異なっていることが示唆されました。赤ちゃんのおしり周りの触覚は、生後数ヶ月から発達していて、繊細な感受性を持っていることが分かりました。
今後もさらに赤ちゃんの触覚の研究が進むことによって、スキンシップのメカニズムが解明され、より良い製品の開発に繋がっていくことを期待しています。
長崎大学篠原教授
http://www.atpress.ne.jp/releases/34487/5_5.jpg
■当社のコメント
動物やヒトが外界を認知するための多種類の感覚機能には、古来からの分類による五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)があります。五感で感じる「気持ちの良さ」のレベルは、脳の報酬系の活動性を測定すれば分かると考えられていますが、いままで触感に関しては、詳細な研究はなされていませんでした。特に、赤ちゃんは言葉で気持ちを伝えられないので、赤ちゃんがオムツを装着してどう感じているかを調べ、数値化するためには、報酬系の脳活動を計測する方法が、有効なのではないかと考えました。この度、NIRS脳活動測定による乳児の触感研究を長崎大学大学院医歯薬学総合研究科と共同で実施できたことで、触感の測定において生まれて間もない赤ちゃんが腰でも素材の違いを区別して感じていることが明らかになりました。また追加試験により、母親が手のひらで撫でた時の触覚刺激が赤ちゃんにとって気持ち良く感じる触感であったことも分かりました(図2)。一方、様々な先行研究から、母親が赤ちゃんを撫でる等、スキンシップを多く取ると、母子間の愛着の形成が促進されることも確かめられています(M.J. Hertenstein, J.M. Verkamp, A.M. Kerestes, R.M. Holmes, The communicative functions of touch in humans, nonhuman primates, and rats: a review and synthesis of the empirical research, Genet. Soc. Gen. Psychol. Monogr. 132 (2006) 5-94. S.G. Ferber, I.R. Makhoul; The effect of skin-to-skin contact (kangaroo care) 255 shortly after birth on the neurobehavioral responses of the term newborn: a 256 randomized, controlled trial, Pediatrics 113 (2004) 858-865; Perinatal Depression, Edited by Dr. Maria Graciela Rojas Castillo, 2012)。母親のスキンシップは赤ちゃんにとって理想的な触感であると言えるでしょう。
今回の新素材の風合いを、母親のスキンシップのような“赤ちゃんが気持ちいい”と感じる触感にさらに近づける素材革新や商品開発に展開していきたいと考えます。
【追加試験結果】
図2 NIRSによる2種類の素材の触刺激時とママが撫でた時の脳活動の比較
http://www.atpress.ne.jp/releases/34487/2_2.jpg
■会社概要
社名 :ユニ・チャーム株式会社
設立 :1961年2月10日
本店 :愛媛県四国中央市金生町下分182番地
本社 :東京都港区三田3-5-27 住友不動産三田ツインビル西館
社員数 :1,228名[グループ合計10,287名](2012年3月)
事業内容:ベビーケア関連製品、フェミニンケア関連製品、
ヘルスケア関連製品、化粧パフ、ハウスホールド製品、
ペットケア関連製品、産業資材、食品包材等の販売
≪消費者の方のお問い合わせ先≫
ユニ・チャーム株式会社 お客様相談センター
TEL:0120-192-862
ユニ・チャーム株式会社 ホームページアドレス
http://www.unicharm.co.jp/
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提供元:@Press
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