堀江翔太、稲垣啓太、具智元、長谷川慎コーチのインタビューが満載! 光文社新書『ONE TEAMのスクラム』発売!
配信日時: 2020-02-26 16:52:47
2月20日(木)に光文社新書『ONE TEAMのスクラム 日本代表はどう強くなったのか?』が発売されました。2019年ラグビーW杯日本代表の堀江翔太、稲垣啓太、具智元、そして長谷川慎コーチのインタビューも掲載しています。
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2019年の流行語大賞にも輝いた「ONE TEAM」。その象徴はスクラムだ。
長谷川慎コーチ、堀江翔太、稲垣啓太、具智元が明かす、フィジカル勝負、心理戦、頭脳戦の攻防。
にわかファンだからこそ楽しめるシン・スクラム論!
【プロローグより】
はっきりいいたい。日本代表のラグビーW杯でのベスト8進出の原動力はスクラムだった。2019年の流行語大賞にも輝いた「ONE TEAM」の象徴はスクラムだろう。フォワード一丸のセットピースだった。
日本代表は国内初開催のラグビーW杯の5試合で結局、マイボール30本、相手ボール40本、合わせて70本のスクラムを組んだ。時間帯、エリア、スコアによって、それぞれのスクラムにはゲームの流れにあっての位置づけがある。戦略、ストーリーがある。
1本1本のスクラムにおいて、フィジカル勝負、心理戦、頭脳戦が展開されていた。フォワード合わせて約1トンの肉体の塊のぶつかりあいのウラで何が起きていたのか。とくに伝統工芸のごとき技がつまった日本スタイルのスクラムにスポットライトを当て、その深遠なる戦いをつまびらかにする。
【シン・スクラム論とは?】
日本スタイルのスクラムとは、長谷川慎コーチが情熱と経験と分析力を持って徹底指導した「慎さんのスクラム」である。左プロップ稲垣の言葉を借りると、「日本に革命をもたらした慎さんのスクラム」ということになる。「基本的には」と稲垣はつづける。「日本代表のスクラムというのは、ひとつの方向性があって、まず一番大切にしている方向性はみんなで3番を助けることです。フッカーの向きを右に向けてあげるのが僕の役割なんです。そして、全体の方向性をフォワードが矢印の形になるようにするのです」。
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スクラムには、ラガーマンの喜怒哀楽が満ちている。いわば人生哲学でもある。奥が深い。スクラムとは、と聞けば、堀江は考え込んだ。「なんやろう。うまいたとえがないですね」。2015年W杯の時のフランス人のダルマゾ・スクラムコーチの「心臓」という言葉を出せば、「そんなもんやと思います」と賛同した。
「ゲームの主導権を握れるかどうかは、スクラムの優劣が大きいから」
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同じ質問。稲垣は「スクラムってラグビーであって、別の競技みたいなものです」と答えた。「そう、スクラムというひとつの競技みたいな。スクラムだけは、ラグビーとは別個に考える必要があるんじゃないですか」
笑わない男の顔が少し、ほころんだように見えた。
「スクラムの楽しさを伝えるのが、一番、難しいと思います。やっている方は楽しみとはとらえてないですけど」
それはそうだろう。
「スクラムで相手にプレッシャーをかけた時、相手チームに与える影響というのははかりしれないですね」
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慎さんのスクラムとは? と聞けば、具智元は短く、言った。
「8人で組んで、“待ったら負け”のスクラムです。ヒットもそうですけど、押されるのを待つのではなく、自分たちから攻めていく。相手より、いいポジションでセットしてから、こっちが100%、相手は70%の窮屈な姿勢をつくらせるスクラムです」
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フッカーの堀江は“慎さんのスクラム”をこう、説明した。これまでのスクラムコーチは「8人で結束して倒せ」とは言うけど、その方法論、どう押せばいいのかという詳細までは説明してくれなかった。長谷川コーチは違った。
「自分たちひとりひとりに明確な仕事があって、それを僕らに提示してくれて、どうやれば押せるかという方法を教えてくれた。そうやってつくられたスクラムが、ま、いわば慎さんのスクラムです」
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4年の前のスクラムとの違いは? と聞けば、稲垣の目が瞬時、鋭くなった。
「ひとりひとりの役割が細分化されて、明確になったのが一番の違いですね。まあ、それはシステム上の違いで、スクラムの結果としての違いは相手ボールのスクラムにプレッシャーをかけることができるようになったことです」
では、稲垣個人はどう変わったのか。「個性を捨てました」とボソッと漏らした。
1番の左プロップは、3番の右プロップと違い、頭の左側が空いている。だから、ルースヘッド(解放された頭)と呼ばれることもある。片側が空いているから、構造上、前に出やすいポジションである。両チームの左プロップが単純にそうすると、スクラムは右回りに回ってしまう。
「それをしたら、スクラムにならないのです。自分たちのスクラムを有効に進めるために、じゃ、僕が何をすればいいのかというと、まず個性を捨てる。自分が押したい、前に出たいという欲を捨てることなのです」
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では、堀江はどうだろう。「相手を崩すという部分は4年前とは全然違います」とほのぼの口調で漏らした。
「エディーさん(ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ〈HC〉、現イングランドHC)の時はそんなことはしていなかった。“崩す”って、首とか胸とかを使って、相手の嫌がるところに力をいれて入っていくんですけど、僕らは相手を崩す、相手を悪い姿勢にするという感じですね。相手を崩せば、(自分たちの)うしろの押しが前にいきやすくなるんです」
(本文より一部抜粋)
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【著者プロフィール】
松瀬学(まつせ まなぶ)
長崎県生まれ。福岡・修猷館高校、早稲田大学でラグビー部に所属。早大時代のポジションは主に右プロップ。1983年、共同通信社に入社。'96年から4年間、米ニューヨーク支局勤務。2002年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現在、日本体育大学准教授。夏季五輪は'88年ソウル大会から2016年リオ大会まですべてカバー。ラグビーW杯は'87年第1回大会から2019年第9回大会まですべて現場取材。著書は『汚れた金メダル―中国ドーピング疑惑を追う』『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』『ノーサイドに乾杯!―ラグビーのチカラを信じて―』など多数。
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【書籍詳細】
書名:『ONE TEAMのスクラム 日本代表はどう強くなったのか? 増補改訂版『スクラム』』
著者:松瀬 学
発売:光文社
発売日:2020年2月20日
定価:本体1,100円+税
判型:新書判ソフトカバー
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