情報コミュニケーション学部石川教授らが疑似科学に関するオンラインサイトを開発情報の海にはもう溺れない!Gijikaからはじめる正しい健康生活!〜あなたもウェブで参加!科学の目で解き明かす、そのカラダにいいこと、ウソ?ホント?〜
配信日時: 2019-02-27 11:00:00
明治大学情報コミュニケーション学部の石川幹人教授、同研究科博士後期課程の山本輝太郎と信州大学人文学部の菊池聡教授らの研究グループが、「疑似科学※」に対するオンライン上の情報拠点サイト「Gijika.com(ギジカ.コム)」を開発しました。本サイトは、生活者と科学の現場を結ぶオンライン上のプラットフォームとして、さまざまな工夫が凝らされています。ポイントとして(1)疑似科学と疑われる個別具体例の解説・評価を行う「科学性の評定」、(2)疑似科学をはじめとする科学と社会の問題について話し合える掲示板、(3)疑似科学に陥らないためのリテラシーをつけるオンライン教材が実装されています。
■Gijika.com(ギジカ.コム) URL:https://gijika.com
※「疑似科学」とは、科学を装っているにもかかわらず、実際には科学的根拠が薄弱な主張・商品などの総称です。生活者の適切な選択を阻む問題として話題になっています。
開発した石川教授のコメント(開発趣旨)
近年、テレビやネット上において健康に関する情報が氾濫し、さながら情報の海に投げ出されているような錯覚を覚えることが多くなってきました。「良い」と言われたものを翌日買いに行ったけれど売り切れ続出、そして1ヶ月もすると見向きもされなくなる、といった事態が繰り返されています。
このたび開発したGijika.comは、そうした情報の海から生活者を救出するためのボートの役割を果たそうとしています。例えば、「カラダによい!」とされる健康食品の効果は本当でしょうか? どのような人に対して、どれくらいの効果が確かめられているのでしょうか? その広告に意味の分からないグラフや数値を見かけることはありませんか? もしかするとそれらは、「効果があるかも」と思わせるために、科学らしく見せているだけかもしれません。実際、生活者の健康や老いへの不安につけこみ、謳われている効果に対して、科学的検証が不十分なまま高額商品を販売するといった問題商法が横行しています。
こうした背景の中、私たちの研究グループでは、「疑似科学」に生活者が惑わされてしまう心理や、どうすれば「疑似科学」を見抜くことができるか、などを中心に研究を進めてきました。また、「疑似科学ではないか」と疑うことを通じて「そもそも科学とは何か?」といった問いを社会全体で共有していく拠点づくりも目指しています。
(1)科学性の評定
ポイント:疑似科学的言説に対して生活者が情報収集できるオンライン上の拠点である
Gijika.comではマイナスイオンや水素水、EM菌、グルコサミン、イチョウ葉エキスなど、社会的に話題を集めている37項目についての科学性の評価・解説を行っています。これまでの科学哲学・科学社会学の知見から科学性を推し量る10条件を抽出し、評価しています。例えば、遺伝子組換え作物は危険であるとする説や、牛乳が人体にとって有害だとする説などに対して、「メタ分析」をはじめ信頼性の高い研究結果に基づき評価しています。また、一般市民からの情報提供やディスカッションを通して評定内容が更新されることもあります。(詳細は(2)で記載)
Gijika.comの前身サイトである「疑似科学とされるものの科学性評定サイト(URL:http://www.sciencecomlabo.jp/)」(*)が、疑似科学に対するオンライン上の情報拠点として定評を得てきた実績を引き継ぎ、生活者が手軽に情報収集できる最新の表示・閲覧機能が実装されました。
(2)オンライン掲示板
ポイント:公的資金を原資とした科学(疑似科学)と社会問題に関するオンライン掲示板である
Gijika.comでは前身サイトには無かった、誰でも利用可能なオンライン掲示板を新設しています(TwitterなどのSNSアカウントと連携したログイン利用も可能)。掲示板では身近な疑似科学に関する相談から情報提供、広く科学と社会の在り方についてまで自由に話し合うことができます。
また、掲示板には「コミュニケーター」という役が設けられています。疑似科学というテーマを扱うため、感情的なやり取りの応酬に終始してしまう危険性があり、議論の推移を管理する“調停役”として、議論をサポートする試みを行います。他にもコミュニケーションを良好に行えるよう、さまざまな工夫が凝らされています。
公的資金(**)を原資としてこのようなオンライン掲示板が開発されることは稀であり、社会的な要請に応えた実践的な研究と言えます。
(3)eラーニング教材
ポイント:信頼できる情報の選択や判断の際に役立つ「科学的な考え方」を身に着けられる
Gijika.comではさらに、科学リテラシーの向上を目的としたeラーニング教材を新たに提供しています。疑似科学を理解するには、そもそも科学とは何か、といった科学に対する体系的な把握が必要です。これは、単に自然科学分野の知識獲得を意味しているのではなく、広く社会科学や人間科学を含めた、科学的探求方法の理解を指しています。市民の科学リテラシーの向上は国際的な重要課題としても位置付けられており、Gijika.comで提供している教材を利用することによって、疑似科学に対する自己防衛、あるいは科学と社会の問題に対する意識向上に繋がります。また、科学の考え方を学ぶことによって、「どのような情報が信頼できるか」「何を信じるべきか」といった個人の判断、意思決定の助けにもなるでしょう。
今後の展開
長期的な展望として本研究では、疑似科学に対して生活者が主体的に情報収集し、意思決定できる環境構築を目指しています。実際に、「疑似科学そのもの」を主題とする研究は海外でも行われており、特にフェイクニュースへの関心の高まりに伴い、マスメディアやSNSにおける真理を巡る争いが「ポスト真理」の時代として認識されつつあります。このような社会情勢において、本研究は学術研究上の価値だけでなく、独自の実践的価値を有しています。
(*)疑似科学とされるものの科学性評定サイトは運用開始3年半で、130万ユーザー、1500件のコメントを獲得しています。
(**)JSPS科学研究費補助金17H01984および基金17K18673の支援を得ています。
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プレスリリース提供元:@Press
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