理科の実験ワークショップは理科離れ防止に一定の効果~児童の学習意欲の大規模追跡調査から有効性が明らかに~ 滋賀県立大学

プレスリリース発表元企業:滋賀県立大学

配信日時: 2017-12-22 14:05:04



後藤崇志(滋賀県立大学人間文化学部助教)、中西一雄(守山市教育研究所研究員(研究当時))、加納圭(滋賀大学教育学部准教授)による共同研究プロジェクトでは、公立小学校に通う3600名以上の児童(3年生~6年生)を対象に1年間にわたる学習意欲の追跡調査を行い、理科の実験ワークショップを行うことが理科離れの解消にどの程度有効であるかを検討した。
その結果、実験ワークショップへの参加は、児童の学習意欲を伸ばすという点では有効であることが明らかになった。




 この研究は、後藤崇志(滋賀県立大学人間文化学部助教)、中西一雄(守山市教育研究所研究員(研究当時))、加納圭(滋賀大学教育学部准教授)の共同研究プロジェクトとして、博報財団「第10回児童教育実践についての研究助成」の支援を受けて行われたもの。



 滋賀県守山市で理科の実験ワークショップを行いながら、市内のすべての公立小学校に通う3600名以上の児童(3年生~6年生)を対象に1年間にわたる学習意欲の追跡調査を行い、理科の実験ワークショップを行うことが理科離れの解消にどの程度有効であるかを検討した。

 その結果、実験ワークショップの参加は児童の学習意欲を伸ばすという点で有効ではあるが、学習意欲の低い児童まで幅広く多くの参加者を獲得するための工夫が必要であるという課題が明らかになった。
 理科の実験ワークショップの有効性について、これだけ大規模な調査によって検討を行うのは、世界的にも例の少ない貴重な試みであり、本研究成果をまとめた論文は「Learning and Individual Differences」誌に採択され、2017年12月9日にオンライン上で早期公開されている。

〇 調査の概要
 2015年度に滋賀県守山市内のすべての公立小学校に協力いただき、児童の1年間の学習意欲の変化を追う4度の質問紙調査を行った。
 プロジェクトの一環として行われた理科の実験ワークショップ、および別プロジェクトとして行われていた市内の理科の実験ワークショップの参加データを、学習意欲の追跡調査のデータと結びつけて分析。
 その結果、理科の実験ワークショップに参加した児童は、参加しなかった児童よりも、理科を深く学ぼうとする意欲が高くなっていた。これは、理科の実験ワークショップが児童の学習意欲を伸ばすという点で理科離れ防止に有効であることを示唆する結果である。

 一方で、実際に参加した児童は市内全体の児童数のおよそ3%と非常に少なく、学習意欲と合わせた分析から、もともと理科を深く学ぼうとする意欲が高い児童の方がワークショップに参加しやすいということが明らかになった。
 ワークショップの開催は市内のすべての公立小中学校の児童・生徒に行き渡るようにチラシを配布して告知されており、地理的・日程的な偏りも少なくなるように市内4か所の公民館で日程を分けて行われた。理科離れを解消するためには、学習意欲の低い児童まで幅広く多くの参加者を獲得することが重要である。そのためには、このプロジェクトで行った以上に、広報や実施の工夫が必要であるということが示唆されている。


〇 今後に向けて
 理科や科学を題材としたイベントにおいて、ふだん科学に関心が低いような人も含めた幅広い参加者層を獲得することが課題であることは、プロジェクトメンバーがこれまでに行ってきた成人を対象としたイベントでの参加者層調査からも示されていた。
 今後は、理科や科学を題材とするイベントについて、どのような内容の取り組みを行うことが目的の達成(例えば、学習意欲の向上や、専門家・非専門家間のリスク・コミュニケーションなど)に有効かという視点だけでなく、より幅広い層の参加者を集めるためにはどのような工夫が必要かという視点からも評価を行い、研究や実践を蓄積していくことが必要であると考えられる。


 論文タイトル:A large-scale longitudinal survey of participation in scientific events with a focus on students' learning motivation for science: Antecedents and consequences
 著者:Takayuki Goto, Kazuo Nakanishi, & Kei Kano
 掲載誌:Learning and Individual Differences, 61, 181-187.
 DOI: 10.1016/j.lindif.2017.12.005
 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1041608017302194

▼本件に関する問い合わせ先
滋賀県立大学 人間文化学部
後藤
住所:滋賀県彦根市八坂町2500
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