2017年12月4日のアルパインの声明および説明に対するオアシスの返答

プレスリリース発表元企業:Oasis Management Company Ltd.

配信日時: 2017-12-13 22:06:00

*アルパインの少数株主にとって公正な取引ではない *詳細情報はwww.ProtectAlpine.comで入手可能

(香港)- (ビジネスワイヤ) -- アルパイン・エレクトロニクス(以下「アルパイン」または「当該会社」)の9.36%の持分を有する最大の少数株主であるオアシス・マネジメント・カンパニー(以下「オアシス」)は本日、アルパインが12月4日に発表したアルプス電気(以下「アルプス」)との経営統合案に関する声明および説明を受けて、本声明を発表します。

2017年12月4日のアルパインの声明は、なぜ株式交換比率をはるかに高い水準に設定すべきであるのか、またなぜ現在の提示内容ではオアシスは本取引に反対票を投じることになるのかを裏付けるものです。さらに、アルパインの声明からは、偏った結果を得るために偏った取引プロセスが行われたことが明確になりました。

このような低価格での買収を提示して推奨するアルプスの提案は、全体で59.07%を保有する少数株主を含め、すべての株主に正当に帰属する価値を侵害することになります。少数株主には公正な価格と公正なプロセスが提示されるべきであり、オアシスは少数株主の権利を保護し、公正な価格と公正なプロセスを実現するために最善を尽くす考えです。

オアシスの最高投資責任者のセス・フィッシャーは、次のように述べています。「アルパインの声明は非常に有益なものでした。というのは、実際のところ、その声明は当社の立場を支持するものであり、また提案の大幅な改善が必要である理由を明確に示しているからです。日本版スチュワードシップ・コードに基づく義務に従い、オアシスはすべての関係者にとって公正な結果を達成するための取り組みを続けます。」

背景

オアシスは2017年6月、アルパインの評価額が当社の考える適正価値を大幅に下回っていること、および親会社のアルプスの影響力が強まっていることに対するガバナンス上の懸念について記した書簡をアルパインに送付しました。

2017年7月27日、アルプスは、2019年1月1日を効力発効日として、アルプスが保有していないアルパイン株1株に対してアルプス株0.68株の交換比率に基づいてアルパインを統合する計画を発表しました。この計画が発表される前、アルパイン株式のアルプスの持株比率は40.43%でした。この提案では、アルパインの株式は発表翌日に2108円と評価されました。

これを受け、後の会社ガイダンスの上方修正前に、オアシスは独立した算定専門機関であるBVCJにアルパインの評価を依頼しました。BVCJによるアルパイン株の評価額は1株当たり3516円~6734円でした。オアシスは、このような著しく割安な水準でのアルパインの買収を提案するに至ったアルプスとアルパインによる算定評価とそのプロセスにおける問題点を指摘した書簡を両社宛に送付し、アルパインの少数株主の権利を保護するための「プロテクト・アルパイン」活動を開始しました。

アルパインがアルプスを必要とする以上にアルプスはアルパインを必要としている

買収および合併提案における一つの重要な考察点は、その取引を行う「理由」です。追加的な開示資料は、本合併がアルパインの株主よりもアルプスにとってはるかに大きな利益をもたらすものであることを明確に示しています。

開示資料によれば、スマートフォン市場の成熟化に伴いアルプスの市場シェアは鈍化傾向にあり、アルプス製品はコモディティー化のリスクに直面しています。アルプスは、人材と経営ノウハウの強化を急いでいるように思われます。一方で、アルパインは世界規模の自動車メーカーを顧客として自動車セクターで急成長中です。

本件は、親会社が子会社を救済するという事例ではなく、子会社が親会社を救済するものです。シナジー効果はアルプスの方がはるかに大きく、以前に示唆された通り40億円を超える見込みです。これは、アルパインの株主に提供されるプレミアムの拡大という形で反映されなければなりません。統合によるシナジー効果をアルプスが何の対価も支払わずに享受することは、アルパインの株主にとって公正とは言えません(アルパインの財務顧問による公正価値意見書の記述にある通り、このようなシナジー効果は適正価値の算定において一切考慮されませんでした)。アルパインとの取引によりアルプスの株主がこのようなシナジー効果を享受するのであれば、アルパインの株主もその恩恵を共有すべきです。

消えた現金

少数株主を軽視するアルパインの姿勢は、300億円の現金を運転資本のための手元資金、配当、税金に割り当てるとの恣意的な決定に表れています。この決定により、株主は1株当たり400円以上の損失を被ることになります。現金はあくまでも現金であることを強調させてください。単に用途を「運転資本」とすることにより、現金を企業価値から差し引くべきではありません。

運転資本は、資本を裏付けとする最低限の現金が手元にあれば、運転資本用融資枠や負債性資金によって賄うことができます。そして、アルパインは、そのような融資枠を既に持っています。2017年9月時点で、アルパインは100億円の未使用の運転資本融資枠を持っています。また、アルプスは負債性資金により運転資本を賄っています。

当社は、割引率を7.71%~8.71%と極めて高く設定して永久成長率を0%とするアルパインの偏った前提を踏まえても、なぜアルパインが割引キャッシュフロー(以下「DCF」)によるこのような低水準の価値の算定に至ったのかが疑問でしたが、ようやくその訳が分かりました。アルパインは、単純に300億円を差し引いたのです。これは明らかに、DCFを低水準に抑えるために用いられた「ごまかし」の数字です。この価値算定における重大な問題は、アルパインによる少数株主の無視を如実に示しています。このような評価方法は、標準的な企業ファイナンスの評価プロセスでは一切用いられていません。この300億円はアルパインに帰属し、適正価値の算定に含まれるべきものです。

成長の恩恵はどこへ?アルプスへ

SMBC日興証券によるDCFに基づく価値算定では、予測期間における急速な成長をアルパインが予想しているにもかかわらず、永久成長率(以下「PGR」)は0%とされています。

年平均30%以上のペースで増加していたアルパインの利益が、再び成長することは決してないとは考えにくいことです。3年間高成長を記録した後、突如として完全に成長が止まると断言するのはまったく非現実的です。

アルパインが2017年5月に発表した当初の2018年3月期通期予想では、営業利益成長率は15.8%とされていました。7月下旬の経営統合に関する発表でもこの予想が維持され、さらにそこでは、公正価値意見書を提出する財務顧問に開示された経営陣の業績予想で2019年3月期通期の営業利益成長率は38.5%、2020年3月期通期は33.3%とされていることが指摘されています。

またこの5月の発表では、中期経営計画で打ち出された2021年3月期通期の売上高成長率10%、営業利益率5%という目標が繰り返されました。この目標に基づくと、2021年3月期通期の営業利益はさらに37.5%増加することになります。経営統合に関する発表ではこの点には言及されておらず、価値算定においてこの点は勘案されていないと推測せざるを得ません。

投資家は、アルパインが開示情報では目標成長率を37.5%とし、企業価値算定では予想成長率を0%としているのはなぜかを考えてみる必要があります。

その後、アルパインは2018年3月期通期の営業利益予想を上方修正し、予想成長率を従来の15.8%に対して60.4%としました。SMBCが採用したDCFによる価値算定にはこの上方修正は反映されておらず、したがって事業価値が大幅に過小評価されています。

財務顧問の意見書の根拠となっている経営陣の予想には変更がないため、2018年3月期通期の営業利益成長率は60%、2019年3月期通期の成長率は0%、2020年3月期通期の成長率は33%、それ以降は0%ということになります(しかしながら中期経営計画ではさらにもう1年間、33%成長を目標とすることが示唆されています)。

私たちは、アルパインがこれらの数値について十分な透明性を提供していないと考えており、成長率と為替相場の変化を根拠に2019年3月期および2020年3月期の予想を維持することはできないとする理由、さらに公正価値意見書を提出する財務顧問への経営陣による開示情報には含まれていないと見られるアルパインによる2021年3月期通期の高水準の営業利益成長率予想について、明確な説明を求めます。

SMBCが長期的な予想を用いるべきであったことは明らかで、例えば大幅な成長を前提とする期間10年のDCFモデルであれば、予測期間の最終年には成長率が0%の安定局面に入るということが株主にも十分説明がつきます。あるいは、PGRを少なくとも3%と高めに設定することができたはずです。高成長を想定した期間3年のDCFモデルでPGRを0%とすることはあまりに乱暴です。これも、偏ったプロセスが偏った結果を生んでいることの一例です。

当社が依頼した独立した価値算定専門機関による利益予想の上方修正を加味したDCFに基づく評価では、アルパインの株式の評価額は1株当たり4943円となります。

効力発効日までの期間がこれほど長いのはなぜか?アルプスにとってアルパインの株価上昇が望ましくないため

発表から取引完了予定日までの期間が近年の日本における事例では最長となる合併案の提示を正当化するため、アルパインは米国証券取引委員会へのフォームF-4の提出要件を満たすことのできるタイミングで発表を行ったと述べており、したがって、このプロセスに18カ月を要することになります。当社の知る限りでは、通常このプロセスに要する期間は3~4カ月です。また、日本企業が合併取引を完了するためにこの種の文書の提出を求められる例はこれが初めてではないと思われます。

またアルパインは、「投機的取引」および「アルパインの株価の著しい変動」を防ぐために早期に発表を行ったとしています。当社は、アルパインが懸念していた株価の変動とはすなわち営業利益予想の38.5%の上方修正の発表後にアルパインの株価が上昇することであったと考えています。

これほど早期に本取引を発表することにより、アルプスと同社のアドバイザーは、アルパインによる利益ガイダンスの大幅な引き上げ前の水準に基づく不適切な実績倍率を用いた低水準の価格を「正当化」することができました。アルパインとアルプスがアルパインによる利益予想の上方修正後まで合併案の発表を遅らせていれば、実績の評価倍率がこれほど著しくアルプスに有利な方向に傾くことはなかったと思われます。

これは、偏った結果を生む偏ったプロセスです。

類似会社比較 –低水準の買収価格を正当化するためにマルチプルの低い企業を選定?

類似会社の比較分析においてSMBC日興証券は、類似性があるとして選定された企業の中で唯一妥当と考えられる企業で、EV/EBITDA倍率が5.6倍のクラリオン株式会社だけでなく、ロシアとブラジルへの依存度が大きいために過去5年のうち3年にわたって赤字を計上しているパイオニア株式会社(EV/EBITDA倍率は3倍)と、JVCケンウッド(EV/EBITDA倍率は4倍)も類似企業として採用しています。

パイオニア、JVCケンウッドともに自動車以外の分野と自動車のアフターサービス市場への依存度が大きく、両社を含めることによりEV/EBITDA倍率のレンジが大きく低下します。3.4~4.6倍というEV/EBITDA倍率の想定水準は低すぎます。当社は、適正な水準は5倍以上と考えます。

SMBCは独立性を維持していない時を除けば独立機関

SMBC日興証券の独立性に関するアルパインの声明での回答は、疑問に答えるどころかはるかに多くの疑問を引き起こすものです。

この回答において、SMBC日興証券はアルパインに対する注意義務を負っており、「グループ会社との間でそのための体制整備その他必要な措置を講じて」おり、また「アルパインのために誠実公正に業務を行っている」ため、利益相反はないことが確認されています。

こうした回答は、SMBCがアルパインの少数株主を保護し、少数株主が公正な価格を受領できるようにする義務を負っているという安心感を与えるものではまったくありません。

一貫してアルパインは、SMBC日興証券の公正価値意見書を本取引が公正なものであることの証しとしています。本取引にはSMBC日興証券のお墨付きがあるのかもしれませんが、SMBC日興証券は独立した機関ではなく、むしろ親会社のアルプスに対する最も重要な資金の貸し手です。さらに、アルパインはSMBC日興証券に前例取引分析を依頼すべきであったと考えます。SMBC日興証券の公正価値意見書は、偏った結果を得るための偏ったプロセスのもう一つの証左です。

ゴーショップの欠如

最も重要な点として、アルパインは、独立委員会と取締役会が他の買主を模索することをせず、また第三者に売却した場合、アルパインの価値と売却価格がどのような水準となるかを判断する努力、すなわち公正な市場取引であるかどうかの真の検証を行っていないことを確認しています。市場調査あるいは「ゴーショップ(他の買主候補を探して交渉すること)」が行われず、真に独立したアドバイザーや意見が存在しない状況では公正な価格を算定する手段を大きく欠くことになり、このプロセスを公正と見なすことはできません。

プレミアムがプレミアムではない事例

提示されている株式交換比率は、当該会社が挙げている上場子会社の親会社による他の買収例に比べると高いプレミアムを提供すると言えるかもしれませんが、これは、第三者に企業を売却する場合の価格と比べればプレミアムではありません。しかし、こちらの方が適切な基準なのです。

2017年に完了した取引で第三者が支払ったプレミアムの平均水準は37%です。本取引はこの真の第三者への売却という基準に基づいて判断されるべきであり、少数株主の権利を侵害した過去の関係者間の取引を基準とするべきではありません。

この点は重要です。他の濫用的な取引を基準とすることは、ハードルを非常に低く設定することを意味します。私たちは、すべての人々に同じ高い基準を求めます。株式交換はこれまで、公開買付に比べると低い評価額で実施されてきましたが、株主が株式を譲渡するよう求められる際には、常に株主は公正な補償を受けるべきです。アルパインはそれを試みることさえしていません。アルパインは、自身の取引を他の濫用的な取引と比較しているにすぎません。

しかしながら、アルパインの将来的な急成長見通しが株主に知らされていないため、アルパインは貧弱なガバナンスと業績の低迷を理由に根源的価値に対して大幅に割安な水準で取引されています。大幅に割り引かれた価格に小幅のプレミアムを付与しても、単にプレミアムが付与されたというだけで「公正価値」が確立されたことにはなりません。アルパインの基調的なファンダメンタルズと貧弱なガバナンスを踏まえると、提供されているプレミアムは無意味なものと言えます。

アルパインによる少数株主の無視

第三者委員会が注意と独立性を欠き、アルパイン経営陣がアルパインの少数株主を蔑視していることは、アルパインによる今年度の営業利益予想の38.5%の上方修正を踏まえた株式交換比率の修正要求をアルプスが拒絶したことに明確に示されています。

これは大幅な修正ですが、価値算定では勘案されていません。当初の株式交換の発表には、重大な変化が発生した場合は株式交換比率が変更されることがあるとの但し書きがあることが注目されます。

声明においてアルパイン経営陣は、「上方修正が財務予測へ与える影響は極めて限定的であり」、「株式交換比率を見直す必要はない」と考えていると述べています。

当社は、上方修正は大幅なものであり、翌年度の38.5%の成長ははるかに高い比較基準をもとに算定されていることを意味すると考えます。この成長は大幅なものではなく、アルプスが支払う価格の上方修正を求めないとするアルパインの意見および示唆は、良いガバナンスを著しく侵害するものであり、アルパインが目指していることを如実に示しています。すなわちそれは、すべての株主に帰属する価値を奪い、それをアルプスに移転するということです。

日立国際電気とKKRの取引では、利益の大幅な増加を受けて第三者委員会はKKRの提案の受け入れを無効とし、最終価格の調整を求めました。アルパインの例でも、第三者委員会が真に独立性を持ったものであれば、これと同じ対応をしたものと思われます。これは、すべての株主に気を配る所有者および独立した経営陣であれば誰もが行うと考えられることです。

以上の理由ならびにその他の理由から、当社はアルパインを守るための取り組みを続けていきます。

当社は、公正な取引を要求します。この価格では本取引は否決されると予想されるため、当社はアルパインに対して当面は統合に時間を費やすのをやめるよう求めます。当社は、アルパインに対する大幅に改善された買収提案に基づいてアルパインが手続きを進めることについてデューデリジェンスを行う機会があれば、歓迎します。

当社は、アルパインならびに特別委員会による返答を求めます。アルパイン経営陣および取締役は、改善されたデューデリジェンスと売却手続きを通じてアルパインのすべての株主にとってより高い価値を達成する機会を歓迎すべきであると当社は考えます。

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オアシス・マネジメント・カンパニーは、さまざまな国やセクターの幅広い資産クラスの投資機会に重点を置いたプライベート投資ファンドを運用しています。オアシスは、最高投資責任者として当社を統括するセス・H・フィッシャーにより2002年に設立されました。オアシスに関する詳細情報は、 https://oasiscm.comをご覧ください。オアシスは日本の金融庁の「責任ある機関投資家の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)」を採用しており、この原則に従って投資先企業に対する監視と関与を行っています。

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