【東京医科大学】肝がん治療におけるマイクロ波焼灼療法の有用性を証明~第2世代マイクロ波焼灼療法 vs. ラジオ波焼灼療法:多施設共同ランダム化比較試験~

プレスリリース発表元企業:東京医科大学

配信日時: 2024-12-23 20:05:12





東京医科大学(学長:宮澤啓介/東京都新宿区)消化器内科学分野 糸井隆夫主任教授、杉本勝俊准教授、岩手医科大学(学長:小笠原邦昭/岩手県紫波郡矢巾町)内科学講座 消化器内科分野 黒田英克特任教授、聖隷浜松病院(病院長:岡俊明/静岡県浜松市)消化器内科・肝腫瘍科 室久剛 肝腫瘍科部長らが、肝細胞がん治療においてマイクロ波焼灼療法(MWA: Emprint Ablation System)と従来のラジオ波焼灼療法(RFA)の有効性を比較するランダム化比較試験(RCT)を実施しMWAの有効性を実証しました。
この研究成果は、2024年12月18日、国際学術誌「JHEP reports」に掲載されました。




【概要】 
東京医科大学(学長:宮澤啓介/東京都新宿区)消化器内科学分野 糸井隆夫主任教授、杉本勝俊准教授、岩手医科大学(学長:小笠原邦昭/岩手県紫波郡矢巾町)内科学講座 消化器内科分野 黒田英克特任教授、聖隷浜松病院(病院長:岡俊明/静岡県浜松市)消化器内科・肝腫瘍科 室久剛 肝腫瘍科部長らが、肝細胞がん治療においてマイクロ波焼灼療法(MWA: Emprint Ablation System)と従来のラジオ波焼灼療法(RFA)の有効性を比較するランダム化比較試験(RCT)を実施しMWAの有効性を実証しました。RCTとは研究群間(ここではMWA群とRFA群)の偏りを排除できる最も信頼性の高い評価方法です。肝細胞がんの穿刺局所療法では世界的にMWAが広く使用されていますが、MWAのRFAにおける有用性を報告したRCTの報告はありませんでした。今回の研究成果により、今後より一層MWAが広まっていくことが期待されます。なお、この研究は本邦の5施設(東京医科大学病院、横浜市立大学附属病院、岩手医科大学附属病院、聖隷浜松病院、東邦大学医療センター大橋病院)による共同研究として行われました。
この研究成果は、2024年12月18日、国際学術誌「JHEP reports」に掲載されました。

【本研究のポイント】
● 治療後2年における肝細胞がんの局所再発率は有意にMWAの方が低率でした。
● 両治療法とも偶発症の頻度は同等であり、両者とも安全な治療と考えられました。

【研究の背景】
肝細胞がんの標準的な治療法として、3cm未満で3個以内の腫瘍に対してはRFAが用いられています。その一方でMWA、特にEmprint Ablation Systemは、短時間で球状かつ広範囲の焼灼を実現することが可能であり、RFAと比較して革新的で有用な手法と考えられています。しかし、MWAの有用性については、依然としてRCTでの十分な検証が行われていませんでした。そこで本研究では、4cm以下の肝細胞がんにおいて、MWA(試験治療)とRFA(標準治療)の有効性をRCTで評価しました。

【本研究で得られた結果・知見】
2018年7月から2021年12月までに、240人の肝細胞がん患者が登録され、最終的に、119人の患者(130結節)がMWAで、117人の患者(136結節)がRFAで治療を受けました。MWA群の中央観察期間は33ヶ月(四分位範囲[IQR]:27-42)、RFA群は37ヶ月(IQR:27-44)でした。2年の局所再発率(LTP: local tumor progression)は、MWA群で16.4%(20/130結節)、RFA群で30.4%(38/136結節)であり、MWA群が有意に良好でした(リスク比:0.54 [95%信頼区間(CI): 0.33, 0.87]; p=0.007)。2年生存率(OS: overall survival)、肝内無再発生存期間(intrahepatic recurrence free survival)、および肝外無再発生存期間(extrahepatic recurrence-free survival)では両群間に有意な差は認められませんでした。また両群ともに重篤な有害事象(grade 2以上)は2例ずつ報告されましたが、治療に関連する死亡は認めませんでした。

【今後の研究展開および波及効果】
現在本邦の肝癌診療ガイドライン(2021年版)では「各穿刺局所療法の選択は、どのように行うのが適切か?」といったクリニカルクエスチョンに対して、穿刺局所療法としてRFAを推奨すると明記されています。しかし、今回の報告を契機にMWAの使用頻度が高まっていく可能性があります。また、近年大腸がんの肝転移巣に対する穿刺局所療法の有用性を示した欧州の施設からの報告が散見されます。今後は本邦から大腸がん肝転移巣に対するMWAの有効性を検証していくことが必要と考えます。

【論文情報】
タイトル:Microwave ablation versus single-needle radiofrequency ablation for the treatment of HCC up to 4 cm: A randomized control trial
著  者: Katsutoshi Sugimoto,¹* Kento Imajo,² ⁶ Hidekatsu Kuroda,³ Go Murohisa,⁴ Kazue Shiozawa,⁵ Kentaro Sakamaki,⁷ Takuya Wada,¹ Hirohito Takeuchi,¹ Kei Endo,³ Tamami Abe,³ Takashi Matsui,⁵ Takahiro Murakami,⁵ Masato Yoneda,² Atsushi Nakajima,² Shigehiro Kokubu,⁶ Takao Itoi¹(*:責任著者)

¹Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University, Tokyo, Japan
²Department of Gastroenterology, Yokohama City University Graduate School of Medicine, Yokohama, Japan
³Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Iwate Medical University School of Medicine, Iwate, Japan
⁴Department of Gastroenterology, Seirei Hamamatsu General Hospital, Shizuoka, Japan
⁵Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Toho University Ohashi Medical Center, Tokyo, Japan
⁶Department of Gastroenterology, Shin-yurigaoka General Hospital, Kawasaki, Japan
⁷Faculty of Health Data Science, Juntendo University, Tokyo, Japan
掲載誌名:JHEP reports
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jhepr.2024.101269



【消化器内科学分野ホームページ】
https://team.tokyo-med.ac.jp/syoukakinaika/

▼本件に関する問い合わせ先
企画部 広報・社会連携推進室
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【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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