地域課題解決に「労働者協同組合」を活用する提言を発表

プレスリリース発表元企業:株式会社日本総合研究所

配信日時: 2024-11-21 14:00:00

~ミドル・シニアの副業先や地域の担い手育成、事業承継受け皿など~

 株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、2022年10月から設立が認められた労働者協同組合の現状を分析し、活用方法の提言を取りまとめた報告書「協同労働研究会 労働者協同組合の現状と我が国を取り巻く地域課題解決策としての可能性」(以下「本報告書」)を発表します。
 本報告書は、日本総研が主催した「協同労働研究会」(注1/以下「本研究会」)において、労働者協同組合を地域課題解決のために活用する方法について、専門家との意見交換を踏まえて作成されたものです。
 本報告書は、以下のリンクからご覧いただけます。
 「協同労働研究会 労働者協同組合の現状と我が国を取り巻く地域課題解決策としての可能性」
 〇報告書
 https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2024/1121-1.pdf
 〇参考資料
 https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2024/1121-2.pdf

■本報告書作成の背景・目的
 市民や働く人々が出資し事業・経営の担い手となって仕事を協同で行う「協同労働」は、地域課題の解決をはじめ、多様な人材が活躍できる機会の創出、主体的な働き方を通じた生きがいや働きがいの獲得など、多くの役割が期待される働き方です。2022年10月1日には、労働者協同組合という法人としての活動が認められるようになり、2年後の2024年10月1日時点では、1都1道2府27県で計110法人が設立されています。
 現在、労働者協同組合は、定年後のシニアや自治会など従来から地域活動への関心が高い人たちによる、生活や地域に必要な活動が主となっています。しかし、協同労働が持つ「自ら出資をし、経営も行い、労働する」という自律的な特性は、本来、現役の社員やこれから社会で活躍する若者による活動にも広く展開することが可能です。
 そこで本研究会では、専門家を招聘し、「大企業等のミドル・シニア人材の副業・兼業先」「地域課題解決に取り組む若者の育成の場」「事業承継の受け皿」にする可能性について議論を行い、提言として取りまとめました。

■本報告書の提言
提言1. 大企業などのミドル・シニア人材の副業・兼業先としての活用
 定年の引き上げや継続雇用制度の導入などによって、ミドル・シニア層(45~64歳)の就労者比率は42%に上ります(注2)。しかし、大企業などでは役職定年や定年後における活躍の場が限定的になることが多く、ミドル・シニア層の意欲や能力を十分には活かせないことが課題となっています。
 そこで本報告書では、そのようなミドル・シニア人材の副業・兼業先として労働者協同組合を活用する方法について提言しています。人材側にとっては、企業に籍を置きながら、長年のスキルや経験を地域のために活かすことは働きがいや生きがいの獲得につながるメリットがあります。また、企業側にとっては、従業員が地域と築く新しい関係のほか、獲得した経験やネットワークを本業に活かすことが期待できます。

提言2. 地域課題解決に取り組む若者人材の育成の場としての活用
 人口減少が進む地域社会で企業が事業活動を持続させるには、ビジネスを通じて地域課題の解決に貢献し、活性化した地域からの恩恵を受けていくサイクルが必要といわれるようになりました。そのため企業の間では、大学に対し、地域課題解決についてより実践的な課題解決型の教育カリキュラムによる人材育成を求める声が大きくなっています(注3)。
 そこで本報告書では、大学のカリキュラムとして、労働者協同組合や協同労働の理念を持って活動する団体で、学生が協同労働を学ぶことを提言しています。学生が現地を視察し調査・分析を行ったり、実際の活動を体験し地域の人々と交流しながら課題解決を探ったりするなどして、協同労働を学ぶというものです。
 こうしたカリキュラムを経験することで、学生は今後のキャリアと地域の課題解決の両立について深く考えるようになり、将来就く職業を通じて、地域課題を解決する人材に育っていくことが期待できます。

提言3. 事業承継先としての活用
 後継者の不在を理由とする倒産件数が2024年上半期に過去最多に上るなど(注4)、事業承継に課題を抱える企業は今後も増加していくことが懸念されています。
 既にイタリアでは、従業員を組合員とする労働者協同組合が事業承継できる、ワーカーズバイアウトに関する法律が整備されています。日本でも、例えば後継者が不在となった際に労働者協同組合が事業を承継し従業員が組合員として経営に携わる形であれば、事業を継続できる企業は少なくないと考えられます。
 そこで本報告書では、長年蓄積してきた中小企業の技術やノウハウ、従業員の雇用を維持する上で、労働者協同組合が事業承継として活用できる環境を整備していくことを提言しています。そのためには、労働者協同組合に対する社会の認知を広げつつ、一時的に必要な資金の支援など含め、労働者協同組合への移行が可能な法整備や施策を検討していくことが求められます。


(注1)労働者協同組合の新たな活用に在り方について議論を行うために日本総研が主催した研究会。行政担当者、弁護士、研究者、活動団体とともに、2023年8月から2024年3月まで、計4回の意見交換会を実施した。意見交換会で取り上げた主なテーマは、「大学教育と協同労働」「イタリアのワーカーズバイアウトについて」「ミドル・シニアの活躍におけるワーカーズコープの可能性」「世界の労働者協同組合」の4つ。
(注2)総務省統計局「労働力調査」(1976年、2023年)によれば、1976年に45~64歳の就労者の比率は全体の30%であったが、2023年は42%まで上昇。
(注3)日本経済団体連合会「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」(2022年1月18日)
(注4)東京商工リサーチ「2024年上半期の「後継者難」倒産 過去最多の254件 労働集約型の産業では、人手だけでなく、後継者不足も顕著」(2024年7月9日) 

■株式会社日本総合研究所について
 日本総合研究所は、生活者、民間企業、行政を含む多様なステークホルダーとの対話を深めながら、社会的価値の共創を目指しています。シンクタンク・コンサルティング事業では、パーパス「次世代起点でありたい未来をつくる。傾聴と対話で、多様な個をつなぎ、共にあらたな価値をつむいでいく。」を掲げ、次世代経済・政策を研究・提言する「リサーチ」、次世代経営・公共を構想・支援する「コンサルティング」、次世代社会・市場を創発・実装する「インキュベーション」を、個人間や組織間で掛け合わせることで、次世代へ向けた価値創造を強力に推進しています。

■本件に関するお問い合わせ
【報道関係者様】 広報部      山口 電話: 080-7154-5017
【一般のお客様】 創発戦略センター 小島 電話: 090-5508-3565
                      メール:kojima.akiko@jri.co.jp

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