一般社団法人アジア家具フォーラム代表理事、株式会社東洋ファニチャーリサーチ代表取締役社長 阿部野 育三氏のインタビュー記事を『人民日報海外版日本月刊』にて公開
配信日時: 2024-11-21 12:00:00
『人民日報海外版日本月刊』は、株式会社東洋ファニチャーリサーチ代表取締役社長 阿部野 育三氏のインタビュー記事を公開しました。
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阿部野 育三氏
11月20日、一般社団法人アジア家具フォーラムが企画・運営する「アジア・ファニシング・フェア2024」が東京で開幕した。345のブースに、5カ国から147のブランドが出展し、中国の大手家具ブランド上位3社も名を連ねた。
業界の大手企業や関連産業の代表が集結する、日本最大規模の総合展示会を運営するアジア家具フォーラム。このフォーラムが、なぜこれほどまでに大きな影響力と集客力を持つに至ったのか。
私たちはその答えを探るため、一般社団法人アジア家具フォーラム代表理事であり、株式会社東洋ファニチャーリサーチ代表取締役社長の阿部野 育三氏を本誌編集部にお招きし、氏の経営哲学や中日家具業界の協力の歴史、そしてアジア市場の成長トレンド等について見解を伺った。
■アジア市場を見据えた発展戦略
―― 1968年の創立以来、株式会社東洋ファニチャーリサーチは56年間にわたり発展を続けてきました。その成長を支えてきた注目すべき経営理念や企業文化とはどのようなものですか。
阿部野 東洋ファニチャーリサーチは、私の父が広島で創業した会社です。創業当初から家具・インテリア業界に特化していたことが大きな強みでした。当時、日本経済は急速に発展し、消費者の家具需要も非常に高まり、わずかに流通していたヨーロッパ製品を除けば、日本製の家具が国内市場をほぼ独占していました。
父の事業を引き継いだ私は、次にアジア市場に目を向けました。競技スポーツに例えるなら、「国内での成果に満足せず、オリンピックに出られなくてもアジア大会に出場できるレベルを目指すべきだ」という考えです。これが東洋ファニチャーリサーチの今日の経営理念となっています。この理念を基に日本を飛び出し、アジア各国との交流を深める中で、視野や考え方が大きく広がり、多くの恩恵を受けました。
2003年から2007年にかけて、私はマレーシア家具産業促進局(MFPC)から日本首席顧問に任命され、これを機にアジア市場に本格的に注目するようになったのです。
―― 紙媒体が衰退している現在でも、東洋ファニチャーリサーチが発行する『ルームファニシング』や『全国主要家具企業要覧』は、依然として高い影響力を保っていますね。
阿部野 おっしゃる通りです。東洋ファニチャーリサーチが発行する週刊情報誌『ルームファニシング』は、1969年の創刊以来、今年で55周年を迎えます。この雑誌では、最新の家具業界ニュースや注目のトピックスを「10のコンテンツ」で継続的に提供しています。
また、『全国主要家具企業要覧』は、1978年に「業界の動向を一目で把握できる統計資料が欲しい」という業界関係者の要望に応えて創刊されました。近年では、日本国内のみならず、海外の業界関係者からも信頼と支持を得ています。
東洋ファニチャーリサーチは、業界関係者に対して誠実で信頼できる、実用的かつ効果的な情報を提供し続けることを使命としています。
■行動力で日中交流の道を拓く
―― 「アジア・ファニシング・フェア2024」には、合計101社の中国企業が出展しました。代表理事の中国での影響力がうかがえます。初めて中国に行ったのはいつですか。そのきっかけは何でしたか。
阿部野 1997年が私にとって初めて海外に出た年でした。当時は言葉の壁が大きな課題でした。中国・大連の大手企業が、東洋ファニチャーリサーチが作成した家具企業要覧を購入し、その企業から中国に招待されたことが、私が初めて中国を訪れたきっかけです。それ以来、中国との往来が増えました。その企業の責任者の娘さんが大阪に留学した際、私はささやかなお手伝いをしたこともあり、交流が深まりました。後に彼女の結婚式にも招待されました。
大連の人々は親切で誠実、率直でさっぱりした性格です。バスの切符を買おうとしたとき、どうしていいかわからず困っていたのですが、日本語を少し話せる通行人の方が自分でお金を出して切符を買ってくださったことがありました。そうした親切な対応に心を打たれましたし、中国の方々の行動力にも驚かされました。
その後、中国の多くの都市を巡る中で、中国の「硯(すずり)の町」を訪れた際、「広結善縁」(善い縁を広く結ぶ)という言葉が刻まれた硯に目を奪われ、その言葉の深い意味に感銘を受けました。この四文字は、私の価値観と深く共鳴し、座右の銘となっています。ただ、実際には中国語の発音は覚えられていませんが(笑)。
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座右の銘
―― 2000年代以降、頻繁に中国を訪れ、数々の展示会やフォーラムを開催されていますが、中日の民間交流に深く関わる中で、特に印象に残っている出来事や人物はいらっしゃいますか。
阿部野 一番印象に残っているのは、2012年に元官房長官の河村 建夫氏が団長を務めた訪中団に同行したときのことです。大連に到着した際、元閣僚の政府関係者も中国を訪問する際にはビザが必要だと知らされ、一行は大連空港で足止めされてしまいました。幸い、人道的なルートを経て無事に入国し、予定通り活動を進めることができました。河村氏が「大連訪問は本当に素晴らしかった!」と感激された時、私はプロデュースが成功したという大きな達成感を覚えました。
また、中国の友人たちの熱心なもてなしと迅速な対応にも強く感銘を受けました。たとえば、日本の家具バイヤー300名を大連の展示会に招待するという大規模なプロジェクトが、主催者との何気ない会話から実現したのです。主催者に「日本のバイヤーを招けますか?」と尋ねられ、私は「チャーター便を手配して、成田と関西国際空港から出発すれば可能です」と提案しました。あくまで現実的な案として答えたつもりでしたが、主催者はすぐにチャーター便の手配を進め、その報告を受けた時は本当に驚きました。
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2012年の大連展示会の訪問バイヤー
さらに、中国家具協会からの多大な支援と協力にも感謝しています。岐阜県高山市は日本の有名な家具産地で、特に中国市場の開拓に力を入れています。2010年には、当時の高山市長・国島 芳明氏が家具メーカーを率いて訪中し、中国家具協会と販路開拓や製品開発、情報共有について交流を深めました。同年11月には中国家具協会が高山市を訪れ、地元の家具メーカーとの温かい交流が実現しました。
私は幸運にも、バブル経済崩壊後の20年以上にわたり、中国が世界第2の経済大国に成長する過程を間近で見てきました。この驚異的な発展を目の当たりにし、今後も日中関係が良好かつ長期的に発展することを心から願っています。
■アジア市場の潜在力を共に発掘する
―― アジア家具フォーラムには、日本を含む7か国の会員企業が参加しています。各加盟国の違いをどのように調整し、会員の強みを最大限に引き出しているのでしょうか。
阿部野 私たちは、アジア市場を一つのマーケットとして捉えています。現在、ZoomやSNSなどのインターネットツールによって、人々の距離が縮まり、交流の手段もより便利で多様化しました。しかし、どんな時代になっても重要なのはやはり「人・モノ・金」です。この中でも特に大事なのは「人」であり、次に「商品」、そして最後に「価格」です。つまり、直接人と人との交流がなければ、すべてが無意味です。
会員同士の信頼と協力、そして緊密な交流は、アジア家具フォーラムの誇るべき強みの一つです。中国やマレーシアなどの国を訪れると、一つの工場から次の工場への連携がスムーズで、スケジュールも効率的に進むことがわかります。これは、メンバー同士の率直で実務的な協力関係があってこそ実現できるのです。
具体的な例を挙げると、中国の有名なマットレスメーカーが日本に工場および倉庫を設立しようとした際、日本の工場の賃貸にはさまざまな制約があり、契約までに時間がかかるという問題がありました。これを知った福岡県大川市のメンバー企業が工場と倉庫を提供したことで、そのブランドは日本での事業を無事にスタートさせることができました。メンバー同士が助け合いながら共に進む姿勢こそが、アジア家具フォーラムが安定して前進するための重要な原動力となっています。
―― 近年、中国の若者の結婚観や恋愛観が大きく変わり、一人暮らしやコンパクトな住まいがますます人気を集めています。日本の家具はこうしたライフスタイルにとてもマッチしていますが、優れた日本のインテリア製品を中国市場にどう展開していくかは、多くの人々が注目する課題です。この点について、どのような計画をお持ちでしょうか。
阿部野 最大の課題は物流です。特に高級インテリア製品は、精巧で複雑な技術が施されており、装飾部分の分解が難しく、製品全体をそのまま輸送する必要があります。そのため、どうしても物流コストが高くなってしまいます。現在、中国側と協議を進め、これらのパーツを分解して輸送し、現地で日本の職人が組み立てる方式を目指しています。これが実現すれば、日本の高級インテリア製品がより迅速かつ便利に中国市場に進出できるでしょう。また、日本製品と中国製品との規格の違いにも注目し、中国の消費トレンドに合わせた調整を積極的に進めています。
最近、私たちは中国の青島で、中国の顧客に日本市場を紹介する説明会を開催し、多くの中国の家具ブランドが参加して「アジア・ファニシング・フェア2024」に関心を示しました。これは、日本の業界関係者や消費者に中国の家具業界の実力を知ってもらう良い機会にもなりました。
昨年、中国駐日本大使の呉江浩氏が「アジア・ファニシング・フェア2023」に来場され、展示を丁寧に見学し、温かく質問してくださったことが非常に印象に残っています。今後、このような交流がさらに活発になることを期待しています。
21世紀はアジアの世紀です。現在、アジアから欧米への家具輸出コストが大きな課題となっています。だからこそ、アジア市場の成長に注目することが最重要課題となるでしょう。今後、デザイナーなどの交流を強化することで、アジア各国の家具・インテリア業界の協力が促進され、新たな成長機会がさらに生まれると確信しています。
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「アジア・ファニシング・フェア2023」の最終日に、中華人民共和国駐日本国特命全権大使の呉江浩氏が来場
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