技術ソリューション事業 技術開発テーマの決定

プレスリリース発表元企業:JOGMEC

配信日時: 2015-06-19 18:29:07

~平成26-28年度フェーズ2案件公募採択と事業開始のお知らせ~

JOGMEC(本部:東京都港区、理事長:河野博文)は、平成26-28年度における技術ソリューション事業技術開発公募(技術開発・実証プロセス フェーズ2)において、「膜型CO2分離回収技術の小規模実証試験」を採択しました。



[画像1: http://prtimes.jp/i/12624/17/resize/d12624-17-142139-0.jpg ]


JOGMECは、平成25年度より技術ソリューション事業を実施しています。本事業を通じて、産油ガス国の国営石油・ガス会社、あるいは国際石油・ガス会社等(以下「産油国等」という。)が抱える技術的課題 (ニーズ)に対し、JOGMECと日本企業等が一体となって、解決策(ソリューション)を提案していくことで、日本と産油国等との関係をさらに強化したいと考えています。
今般の技術開発公募において、CO2分離技術に係わるエネルギー消費の低減、CO2分離装置のコンパクト化に関するニーズに対して、坑井元におけるCO2分離技術の適用によるソリューションを提供することを目的に、CO2分離技術を保有し、かつJOGMECと共に実証試験を実施できる日本企業等として、千代田化工建設株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:澁谷 省吾氏)からの提案を採択し、3月に事業を開始しました。
今後JOGMECは、千代田化工建設株式会社、及び共同実施先である三菱化学株式会社と共に小規模実証試験を通してCO2分離技術を確立し、次期フェーズでは産油国等における現場実証を実施し、本技術が石油・天然ガス分野における日本の最先端技術となるように取り組んでまいります。


◆ 採択案件の紹介

[表: http://prtimes.jp/data/corp/12624/table/17_1.jpg ]


本案件で開発を進める技術は、無機セラミクスのCHA型ゼオライト※1を適用したCO2分離膜を用いて天然ガス中に含まれるCO2ガスを分離する技術です。天然ガスを燃料或いは化学原料として使う場合、その中に含まれるCO2は使用上好ましくないものであり、天然ガスを効率的に利用するためには予めその量を減らす事が求められます。ガスからCO2分離除去するには、吸収法、吸着法、ふるい分けなど種々の技術が使われますが、ここで開発する技術はゼオライトの均一な細孔構造に起因する分子ふるい効果を利用する技術です。天然ガスの主成分であるメタン分子とCO2分子の大きさの違いに着目し、目の大きさを均一に調整したふるいに当たる均一な細孔を持つゼオライトを利用することで、原料ガスと分離後のCO2ガスの圧力差を利用してCO2分離を行います。この技術では、多孔質アルミナ上にゼオライト膜で形成したCO2分離膜を結晶成長させる構造を取っており、図2に示されるような外観の細管を数百本束ねたモジュール構造の設備を考案しています。CHA型ゼオライト膜は無機材料であり、上記の分子ふるい効果で分離ができ、しかも均一な緻密薄膜に結晶化されているため有機材料の膜に比べCO2分離性能及びCO2透過係数が高く、耐久性に優れていると考えられます。

今回採択した小規模実証実験計画では、図‐3の小型管にてベンチスケールで確認されている分離性能を実用設備で使われるモジュール構造の設備で確認し、性能をキープした実用規模のスケールアップの目途を付ける事を目指しています。合わせて、種々のCO2ガス濃度原料の運転、或いは長期間の連続運転などを計画しており、この膜設備の耐久性、融通性のベースとなるデータの取得も目指しています。
[画像2: http://prtimes.jp/i/12624/17/resize/d12624-17-921479-2.jpg ]

※1ゼオライト:アルミ(Al)とケイ素(Si)と酸素(O)の化合物(アルミノケイ酸塩)のなかで、規則的な細孔構造を持ち、その細孔径が数Åである結晶の総称でもあり、分子ふるい、イオン交換材料、触媒、吸着材料として利用される。

◆ 技術必要性の背景と今後の展開
天然ガスや随伴ガス中にあるCO2は燃料としては価値がなく、合成ガスなどを製造する場合でも効率や経済性を損なう要因となり、出来るだけ除去する事が求められます。代表的なCO2分離回収技術としては、溶液吸収法、固体吸着法、深冷分離法、膜分離法があり、アミン系の吸収剤を用いた溶液吸収法が一般的に普及しています。溶液吸収法は吸収剤の再生に多量の熱エネルギーが必要であり、原料天然ガスのCO2濃度が高くなるにつれてエネルギー消費が過大になり、吸収剤の使用量も増えるため運転コストが増加するといった課題があります。膜分離法は、CO2とCH4の分子サイズ差や溶解度差、分圧差等を利用して動作するので、他のCO2分離技術のように加熱・冷却や圧力スウィング等のエネルギー投入が必要ないためにエネルギー消費が少なく、装置構成がシンプルなために低コストです。また、供給ガス中のCO2濃度が高くなるほど分圧差が大きくなり分離特性が向上することから、溶液吸収法に比べて運転コストや設備規模の面で有利になります。アミン系溶液吸収法の不利な点を補える技術として膜分離技術は期待されており、経済性のある膜分離技術確立はガス開発事業に求められる課題となっています。

本実証開発にてゼオライト膜モジュールの性能と運転安定性が確認されれば、高濃度CO2含有のために開発が遅れ未利用となっている高濃度CO2含有天然ガス田の利用促進に多大の貢献が期待されます。更に分離選択性の良い膜で分離されたCO2ガスは、そのままCO2EORと呼ばれる石油の増進回収に使う事も可能であり、成熟油田の再開発を促進する技術としても将来性を期待されています。

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