オンライン講座の配信による市民の学びに関する実証結果について

プレスリリース発表元企業:株式会社日本総合研究所

配信日時: 2023-07-20 17:45:40

広島県尾道市(市長:平谷祐宏、以下「尾道市」)、株式会社Schoo(本社: 東京都渋谷区、代表取締役: 森健志郎、以下「Schoo」)、株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、オンライン講座の配信による市民の学びに関する実証(以下「本実証」)を尾道市の各公民館で実施しました。本実証は、市民の学びに対するニーズの把握とデジタル技術の活用による公民館の運営サービスの向上を目的として行われたものです。



 本実証では、生涯学習講座の録画をオンラインで配信(オンデマンド配信)するイベントを市内の複数の公民館において4回開催し、各公民館に集まり、講座を受講した参加者を対象にアンケート調査を実施しました(ただし、第3回目のイベントについては、市民の自宅からも参加できることとしました)。

■取り組みの背景
 尾道市の公民館は、主に「社会教育の拠点」「まちづくりの拠点」「防災の拠点」としての機能を有しています。
 これらの機能を円滑に形成させるには、多世代にわたる多様な市民が交流することで地域コミュニティを醸成する必要があります。尾道市では、そうした地域コミュニティ醸成のための場の一つとして、公民館で生涯学習サービスの提供を行っています。市民の学びへの多様なニーズに応えるほか、多世代にわたる市民同士が学び合い、教え合いながら交流を深めることを目指しています。しかしながら、現実には、公民館の利用者は高齢者に偏っており、若者を含めた交流を活性化させることは難しい状況です。また、尾道市の生涯学習サービスは、対面での提供を基本としているため、生涯学習講座を受講するためには、公民館まで出向かなければならないことなども課題となっています。
 そうした中、尾道市は、デジタル技術を活用して利用者の利便性の向上及び公民館機能の拡充を図ることにより、これらの課題を解決する「スマート公民館」の取り組みを進めています。最終的には、オンラインを活用することで、時間や場所の制約を受けずに、市民の学びや交流を促進し、地域コミュニティの醸成を支援すること及び公民館の価値向上を目指しています。

■本実証概要
目的:     生涯学習講座におけるオンライン配信に対するニーズの把握
        オンライン講座の配信の実装に向けた課題の把握
実施内容:   公民館および参加者自宅(参加者自宅は第3回のみ実施)宛てに下記のオンライン講座(録画)を配信。同時に配信された公民館同士および参加者自宅はオンラインでつながれ、参加者同士が交流を行う。
調査方法:   各回の参加者を対象に、紙またはウェブによるアンケート調査を実施
実施日/場所: 第1回目: 2023年2月28日 栗原北、木ノ庄東、山波
        第2回目: 2023年3月3日 長江、瀬戸田、藤井川
        第3回目: 2023年3月5日 向島、東部、参加者自宅
        第4回目: 2023年3月20日 市、大和、中庄
        ※参加者自宅は第3回目のみ実施
         地名はそれぞれ公民館名
講座内容:   Schooが提供する下記4講座
        第1回目: ヨガ ―15分で体リセット―
        第2回目: 元NHKのアナウンサーが教える「心が動く話し方」
        第3回目: カベストレッチ ―プロが行うセルフ整体を学ぶ―
        第4回目: たった1℃の違いで疲労が回復、医者が考案した「最高の入浴法」
参加者数:   計100名
[画像1: https://prtimes.jp/i/68011/18/resize/d68011-18-48be831ef1b50a9d8f6f-0.jpg ]

 本実証では、オンラインで配信される講座を単に視聴して学ぶのではなく、公民館に集まって学ぶことで、同じ趣味や関心事項を持つ市民同士の交流を創出することを目指しました。また、各公民館をオンラインで接続することで、島で離れているため普段対面で交流することはない市民とも交流することも目指しました。実際、講座の配信前には同じ公民館にいる市民同士が談笑したり、講座の配信後には講座の感想や関心事項等に対する自身の意見等を、離れた公民館にいる市民とも共有したり、質問し合ったりして、交流を深めることができました。

■本実証の結果要旨
 参加者に行ったアンケート調査の分析結果は以下のとおりです。

●オンライン講座には半数以上が満足
 本実証の参加者の約8割が60歳以上のシニア層であり、また7割が初めてのオンライン講座参加でしたが、満足度については、「非常に満足」(18.0%)と「まあまあ満足」(35.0%)を合わせると全体の過半数にあたる53.0%に上り、「不満」(5.0%)と「あまり満足していない」(21.0%)を合わせた26%のおよそ2倍の結果となりました。
 なお、不満の要因としては、音声など主に公民館の設備の問題が指摘されました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/68011/18/resize/d68011-18-ea8292e3517952247f09-0.jpg ]

●自宅ではなく公民館で学びたいというニーズ
 第3回目の講座では、公民館2箇所のほか、自宅からも参加できることとしましたが、17名の参加者のうち、15名が公民館を選択し、自宅からの参加者は2名にとどまりました。公民館からの参加を選択した理由で最も多かったのは、「自宅では集中できない」(5名)で、他には「他の受講者と交流したかった」「視聴に適した機器が自宅にない」などが挙がりました。
 公民館を選択した理由として、機器以上に、公民館が本来持つ「場」としての機能面が多く挙げられていたことから、オンライン講座に参加できる自宅環境の有無にかかわらず、公民館で学びたいというニーズが高いことが分かりました。

●オンライン講座のさらなる可能性
 本実証は、特定の日時に公民館に集まることを前提として開催しましたので、参加者にとって都合のいい日時や場所、そして好きな講座を自由に選べたわけではありませんが、それらの機能も含めてオンライン講座のメリットについても参加者に尋ねました。
 回答結果としては、好きな場所(自宅、公民館、その他)で学ぶことができる(56.0%)、普段公民館で開催されていない講座を受講することができる(54.0%)、様々な受講者とオンラインでつながることができる(28.0%)、好きなときに学ぶことができる(21.0%)の順に多いという結果となりました。
[画像3: https://prtimes.jp/i/68011/18/resize/d68011-18-dd890ae8dbd2af46e56f-0.jpg ]

■総括
 アンケート結果を踏まえると、生涯学習講座をオンラインで配信すること自体は、満足度は高いことが考えられます。
 また、自宅からでもオンライン講座に参加できる環境を整えたとしても、公民館からの参加者が大きく減ることはなく、むしろ自宅ではなく公民館で学びたいというニーズがあることも確認されました。
 さらに、オンラインによる生涯学習講座は、好きな場所で学ぶことができる、普段、公民館で開催されていない講座を受講することができることに、参加者がメリットを感じていることが明らかになりました。
 これらの結果から、公民館における生涯学習講座のオンライン配信は、地域コミュニティの醸成と生涯学習サービスの向上を両立して実現できることが確認されました。具体的には、他の受講者と交流しながら学びたいというニーズを満たし、市民交流を促し、地域コミュニティの醸成に寄与するという公民館のこれまでの役割、価値が再確認されました。また、これまでは、対面で集まることを前提としていましたが、今後は、オンラインで講座や情報を発信したり、遠く離れているものの、趣味や関心ごとを共にする市民同士が、講座の感想や趣味の内容等を語り合い交流する機会を創出したりするという新たな役割を担う可能性があることが確認されました。
 さらに、オンライン配信によって、講座の受講方法の選択肢を増やし、いつでもどこでも学びたいという市民ニーズを満たしつつ、多様な生涯学習講座を提供し、市民の学びを充実させるという生涯学習サービスのオンライン配信の役割、価値も再確認されました。

■今後の予定
 尾道市は、本実証実験の結果を踏まえ、これまでの公民館活動に加え、オンラインを活用した取り組みも促進し、さらなる地域コミュニティの醸成を図り、公民館の価値向上に努めます。
 Schooは、本実証実験の結果を踏まえ、地域それぞれが掲げるビジョンの実現に資する、様々な実証実験や取り組みを推進します。
 日本総研は、本実証実験の結果を踏まえ、公民館の利便性や生涯学習サービスの質の向上に資する社会実装を支援する活動を推進します。

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