今、最も注目される詩人、最果タヒの最新詩集。『さっきまでは薔薇だったぼく』
配信日時: 2022-05-12 13:54:04
【「合わせ鏡の詩」「激流」全文掲載】
[画像: https://prtimes.jp/i/13640/1673/resize/d13640-1673-f2cb7ca46953f46fb8f4-0.jpg ]
詩という言葉の連なりが、社会や世界とのつながりを紡ぎ出す。
斬新な日本語が心に沁みる、最果タヒの新詩集。
「冬の薔薇」「指」「惑星」「生理詩」「猫戦争」「才能」「飛ぶ教室」「ぼくたちの屍」「人で無し」「春の薔薇」――それぞれの詩のタイトルが、すでに「詩」になっているようだ。
言葉との新たな出会いが生まれる話題作から「合わせ鏡の詩」と「激流」を紹介する。
«生きるたびに削れていく命が降り積もって、
白い雪の道、月の光が反射して、ある朝それは鏡に変わる、
ぼくの人生をきみが、覗き込んでも、きみのことしか見えないから、
ぼくが誰であろうと、きみには、きみしか見えないから、
きみは、ぼくにだって恋をする。
愛されたことがないから、愛せないなんて、ありえない。
愛しているよ、ぼくは、きみを。»
(本書「合わせ鏡の詩」より)
«死を逃れ逃れ、命を、泳ぎ切って残るは
無数の誰かの手の跡ではなく無数の桜のはなびらで
一度も好きでなかった花に囲まれて死ぬ
一度も好きでなかった花に囲まれて死ぬ
「故人は優しい人でした」
私の好きな色は白でも黒でもない
でも冬は好きでした
誰も話を聞いていない
私だけが知っている桜の木々よ さようなら»
(本書「激流」より)
詩という言葉の連なりで自分の心が動く瞬間、社会や世界に風穴を開ける瞬間を目の当たりにするだろう。
«この時代に詩でどのようなことができると思いますか、と聞かれることがあり、私はその度に、詩が持つ「言葉の揺らぎ」だけが捉える「心の揺らぎ」について話していたけれど、それは今もそうだ、と思いながら、多分あの問いは、詩にできること、ではなく、心そのものにできることについて聞いていたのではと今は思う。私たちはこの時代に、この心で、どのようなことができると思いますか。傷つく人のことを考えてしまう、痛くて苦しいと思う人が少しでも減るならそれがいいと思う、目の前で誰か倒れたら心配で、できることなら手を差し出したい、その手を受け取ってほしいと、傲慢かもしれないが願ってしまう、誰かのためにと思いながらその人のためにやることが時に短絡的で、不要かもしれない手を差し出したあとで、不意に自分の未熟さに気づき、恥じていた。どうすれば、と思いながら、その「どうすれば」という思いも、前提が間違っている気がして不安だ。»
(本書「あとがき」より)
〈目次〉
冬の薔薇
恋は無駄死に
指
惑星
午前
氷の子
橙
me and you
すべり台
満開
生理詩
repeat
晴れ
合わせ鏡の詩
激流
紫陽花の詩
裸足
猫戦争
打楽器
才能
水色
商業主義
本棚
湖
飛ぶ教室
まばたき
三原色
天国
なって
部屋は氷
絶滅
雨だれの詩
カーキ・カーキ・カーキ
ぼくたちの屍
夕暮
ときめく
こいぬ座
短命花
雨になる
冬と昔
西の夕陽
人で無し
春の薔薇
あとがき
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『さっきまでは薔薇だったぼく』
著/最果タヒ
定価:1320円(税込)
判型/頁:4-6/96頁
ISBN978-4-09-388856-1
小学館より発売中(4/13発売)
本書の紹介ページはこちらです↓↓↓
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388856
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【著者プロフィール】
最果タヒ(さいはて・たひ)
詩人。1986年生まれ。2006年現代詩手帖賞受賞。2007年第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。2015年、以後の詩集に『空が分裂する』『死んでしまう系のぼくらに』(現代詩花椿賞)、『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(同作は2017年石井裕也監督により映画化)、『愛の縫い目はここ』、『天国と、とてつもない暇』、『恋人たちはせーので光る』、『夜景座生まれ』がある。ほかに、小説やエッセイ、絵本など著書多数。近著に『パパララレレルル』(小説)、『神様の友達の友達の友達はぼく』(エッセイ)がある。
公式サイト http://tahi.jp/
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