イタリア文学賞の権威「カンピエッロ賞」受賞。多感な少女の“ひずみ”を描く『戻ってきた娘』
配信日時: 2021-04-03 12:15:19
イタリアで30万部のベストセラー、世界28か国で翻訳、映画化も進行中。
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強くしなやかで、無慈悲な生命のドラマ
イタリアで30万部を売り上げ、世界28か国で翻訳、ジュゼッペ・ボニート監督の下で映画化も進行中のベストセラー。非情な世界に放り出され、自らの居場所を探してさまよう姉妹の姿を描き、イタリア二大文学賞のひとつ「カンピエッロ賞」のほか、「アラッシオ賞」「ナポリ賞」を受賞した話題作です。
中流家庭の一人娘として育った13歳の「わたし」はある日突然、それまで両親と思っていた人たちから手放され、実の家族のもとに戻された。知らない家には、記憶にもない両親と初対面の兄妹がいた。
«がちゃりという金属音に続いて女の子が顔をのぞかせた。おさげの三つ編みは何日か前のものらしく、緩んでいた。わたしの妹のはずだけど、会うのはそれが初めてだった。刺すような視線をこちらにむけたまま、扉を少しだけ開けて中に入れてくれた。あのころのわたしたちは、大人になったいまよりよく似ていた。»
(本文より)
「戻ってきた娘(アルミヌータ)」は、慣れない環境で理不尽な仕打ち――暴力、貧困、無関心――に遭い自我を覆される。
«あれから何年もの歳月を経たいま、わたしは当時抱いていた「普通」に対する混濁した概念さえも見失い、母親というものがどのような場所なのか、まったくわからずにいる。健康だとか、雨露をしのげる場所だとか、安心といったものと同様、いつも手に入れたいと心から願うばかりで、一向に叶わない。それは執拗につきまとう空虚感であり、知覚はできるけれども乗り越えられないものなのだ。なかをのぞくと眩暈がする。そこにひろがる荒涼とした風景が、夜になるとわたしから眠りを奪い、かろうじて手にした睡眠にまで忍び込み、悪夢を見せる。わたしがつねに失わずにいたのは、そんな恐怖を生み出す母親だけだった。»
(本文より)
わたしはなぜここに連れてこられたのだろう? 大人たちがひた隠しにしている真実とは・・・。寄る辺の無さに悩みながらも、奔放な妹と感情を分かちあい、やがて大人を乗り越えていこうとする少女たちの成長の物語。
「子どもにとって母親は、神聖かつ理想の存在だ。自らの胸の内にある母親像を壊したくないがために、理不尽な仕打ちを受けると自分のせいだと思い込み、激しく自分を責める傾向があるという。それは子どもにとってひどく残酷なことであり、心が悲鳴をあげる。そうした子どもたちの痛みを、この小説で描きたかったのだと著者のドナテッラ・ディ・ピエトラントニオは述べている。心の傷(フェリータ)は小窓(フェリトイア)であり、その奥をのぞき込むことでしか見えてこないものを語るのが小説の役割だと」
(「訳者あとがき」より)
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【著者プロフィール】
ドナテッラ・ディ・ピエトラントニオ
1962年、イタリア中部アブルッツォ州テーラモ生まれ。1986年にラクイラ大学の歯学部を卒業後、小児歯科医として働きはじめる。2011年、生まれ故郷の村を舞台にした処女小説『川のような母』でトロペア文学賞を受賞。2013年にはラクイラ地震(2009年)をテーマとした2作目『美しきわが町』でブランカーティ賞を受賞。2017年2月、やはりアブルッツォ州を舞台にした本書『戻ってきた娘』を発表、ベストセラーとなり、イタリア二大文学賞のひとつカンピエッロ賞を受賞。
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