<ニューノーマルの社長との心理的距離調査>社長との心理的距離は「1万キロ以上」25.2%リモートワークが増えるほど心理的距離も遠い。「雑談」「対話」の重要度高まる。
配信日時: 2021-03-23 14:00:00
JTBグループで様々なコミュニケーションサービスを提供する株式会社JTBコミュニケーションデザイン(以下JTBコミュニケーションデザイン)は、「ニューノーマルの社長との心理的距離調査」の報告書をまとめました。
【調査結果のポイント】
1.社長との心理的距離(気持ちの上での距離)は「1万キロ以上」(25.2%)。
リモートワーク頻度が高いほど遠い傾向。実際の距離よりも遠く感じている人が41.4%。
2.社長、上司、同僚との気持ちの上での距離が近いほど、仕事に対するモチベーションが高い。
3.リモートワーク増加で重要度が高まる「雑談」「対話」。
20代、30代、部長クラスで特に重要度が高まる。
4.会社との気持ちの上での距離を縮めるのは、「仕事のやりがい」「評価」「人間関係」。
5.一体感を高めるのは、工夫されたミーティング、上司の意識的なアプローチ、参加しやすい
社内イベント。
【まとめと提言】
リモートワーク下で拡大する心理的距離を適正化し、モチベーション向上につなげる
雑談で情報の価値とアクセシビリティを高め、対話で誇りやビジョンを確認する
本調査では、リモートワークを行う人を対象に、社長や上司、同僚との間に感じる心理的距離(気持ちの上での距離)について調査し、その背景や影響を検討しました。心理的距離は親密さの度合いを表すとされ、実際の距離が遠いほど心理的距離も遠くなることが指摘されています。調査結果からは、心理的距離とモチベーションとの関連や、適切な距離を保つための方法に関する示唆が得られました。
<調査概要>
[画像1: https://prtimes.jp/i/31978/715/resize/d31978-715-787171-10.png ]
<主な調査結果>
1.社長との「気持ちの上での距離」は「1万キロ以上」25.2%。リモートワーク頻度が高いほど遠い傾向。
平均して週2日以上リモートワークを行っている人1,030人に、社長との「気持ちの上での距離」をたずねると、「違う都道府県にいる(500キロメートルくらい)」が23.9%で最も多く、次いで「別の部署、別のフロアにいる(30メートルくらい)」が21.0%でした。
「違う星にいる(4億キロメートルくらい)」という回答も14.4%ありました。4億キロは、地球と火星の距離に相当します。「海を隔てている、違う国にいる(10,000キロメートルくらい)」も10.8%で、「1万キロ以上」の回答をまとめると、25.2%と4人に1人の割合となります。
[画像2: https://prtimes.jp/i/31978/715/resize/d31978-715-262943-0.png ]
「違う星にいる」という回答は、リモートワーク日数が多いほど多く、「ほぼ毎日リモートワーク」の場合18.3%に上りました。リモートワークの増加は、社長との心理的距離を遠ざける要因になることが推測されます。
自由記述回答では、リモートワークの導入・増加で、社長と「直接会う、話す機会が減った」「発信がない・思いが伝わらない」などのコメントが見られました。一方で、リモートワークで社長からの「情報発信がある・理解できる」「オンラインなどでコミュニケーションの機会がある」などの肯定的なコメントもあり、ふれあう機会が増えて心理的距離が縮まったと感じている人もいました。リモートワーク下でも心理的距離を近く保つ工夫が可能であることがわかります。
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2.社長は、実際の距離よりも、「気持ちの上での距離」のほうが遠い。
「気持ちの上での距離」の回答と物理的な距離の回答を比較し、その相違を集計しました。その結果、社長では「気持ちの上での距離の方が遠い」ケースが41.4%を占めています。
一方、上司、同僚は「同じ」が約半数にのぼり、「気持ちの上での距離の方が近い」が3割以上となりました。
[画像4: https://prtimes.jp/i/31978/715/resize/d31978-715-208150-2.png ]
3.上司との「気持ちの上での距離」は、「姿は見えているが、少し離れている(5メートルくらい)」が3割。
リモートワーク頻度が高いほど遠い傾向。
直属の上司との「気持ちの上での距離」は、「姿は見えているが、少し離れている(5メートルくらい)」が34.0%と最も多く、「すぐそばにいる(1メートルくらい)」が24.0%と続きました。「5メートル以内」でまとめると、62.5%になり、社長に比べて、近いと感じられていることがわかります。
リモートワーク頻度で見ると、平均して週に2日程度と頻度が少ない人では、「すぐそばにいる(1メートルくらい)」が32.3%と多いものの、ほぼ毎日リモートワークの人では16.8%にとどまっています。リモートワーク日数が多いほど、上司との「気持ちの上での距離」が遠くなることがわかります。
[画像5: https://prtimes.jp/i/31978/715/resize/d31978-715-847502-3.png ]
自由記述の回答を見ると、リモートワークの導入・増加によって上司との「気持ちの上での距離」が「遠くなった」と感じている人では、「直接会う、話す機会が減った」「上司の感情が読めない・状況がわからない」「状況を理解してもらえない」など、コミュニケーションの機会が減り、上司との相互理解ができない状況がうかがわれました。逆に、上司との「気持ちの上での距離」が「近くなった」と感じている人では、「オンラインなどでコミュニケーションの機会が増えた」などふれあう機会が増えたことや、「理解や思いやりを感じる」ようになったという意見がみられました。コミュニケーション頻度を増やすことや上司からのアプローチの内容によって、リモートワーク下であっても心理的距離が近くなるケースがあることがわかりました。
4.最も親しい同僚との「気持ちの上での距離」は、「すぐそばにいる(1メートルくらい)」が36.0%で最多。
「ほぼ毎日リモートワーク」の場合は、「姿は見えているが、少し離れている(5メートルくらい)」が最多に。
最も親しい同僚との「気持ちの上での距離」を聞いたところ、「すぐそばにいる(1メートルくらい)」が36.0%と最も回答が多く、「姿は見えているが、少し離れている(5メートルくらい)」が30.6%となり、「5メートル以内」でまとめると、76.7%になりました。社長や上司に比べて、大変近いと感じられています。
しかし、リモートワーク頻度別にみると、平均して週に2日程度と頻度が少ない人では、「すぐそばにいる(1メートルくらい)」が45.9%と多いものの、ほぼ毎日リモートワークの人では27.2%にとどまりました。最も親しい同僚であっても、リモートワークが多いほど、「気持ちの上での距離」が遠くなることが示されています。
自由記述での回答を見ると、同僚との「気持ちの上での距離」が「遠くなった」と感じている人では、「職場で会う機会も減ったし、外食、飲み会もしないので」「ちょっとした雑談や会話のコミュニケーションがなくなった」など、気軽な交流の機会が減った様子を示すコメントが見られました。また、「オンラインの発言で、仲間の本音や微妙な心の内を知ることになったが、理解に苦しんだ。感覚の違いで、同僚だと思いたくなくなった」などの感情のすれ違いが発生した様子も記述され、リモートワークでのコミュニケーションの難しさが浮き彫りになりました。
一方で、同僚との気持ちの上での距離が「近くなった」と感じている人からは、「チャットツールを入れ、雑談も推奨されているので、出社時よりコミュニケーションがとりやすくなった」など、企業側の施策が功を奏した例や、「一体感を持って乗り越えようという気持ちが強まった」などの社内の意識が良い方向に向かう例が報告されました。
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5.社長、上司、同僚との「気持ちの上での距離」が近いほど、仕事に対するモチベーションが高い。
「気持ちの上での距離」別に、仕事に対するモチベーションの高さを見ると、社長、上司、同僚ともに「気持ちの上での距離」が近いと感じる人ほど、仕事に対するモチベーションが高いことがわかります。心理的距離は親密さの度合いを表します。社長、上司、同僚という仕事上の重要な人物と一定の親密さが保てることは、安定的な関係の実感や心理的安全性につながり、内発的なモチベーションを支えている可能性があります。
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6.リモートワーク増加で重要度が高まる「雑談」「上司との対話」
20代、30代、部長クラスで特に重要度が高まる
コロナ禍によるリモートワークの導入・増加によって、重要度が増したことについて聞きました。その結果、「同僚や上司との雑談」が48.3%で最も高く、半数近くの回答者で重要度が増していることがわかりました。次いで「直属の上司との対話」が43.7%、「部門などの枠を超えた、社内のコミュニケーションの場」が43.3%、「社長など経営トップから従業員に向けた、今後のビジョンや方針等を伝えるメッセージ」が42.7%など4割を超える人が、重要度が増したと回答しました。
年代別でみると、20代および一部では30代で数値が高く、また、役職別では部長クラスの数値が高い結果でした。若年層にとっても、役職の高い層にとっても、同僚、上司、社長とのコミュニケーションの重要度が高くなっていることがわかります。
[画像8: https://prtimes.jp/i/31978/715/resize/d31978-715-986076-6.png ]
7.対面で行いたいのは「同僚との対話」「上司との対話」。
60代、部長クラス、課長・係長クラスで対面への要望が高い。
仕事をする上で、対面で行いたいことについて聞いたところ、「同じ立場の同僚と、対面で直接話をする」が63.4%と最も高く、対等な関係にある同僚とのリアルコミュニケーションを求める人が6割以上いることがわかりました。次いで「直属の上司と対面で直接話をする」が56.2%でした。
年代別、および役職別に見ると、「同じ立場の同僚と、対面で直接話をする」では、20代、30代、一般社員も6割以上と高い数値を示しましたが、60代、部長クラスでは7割以上という非常に高い素値が示されました。こうした傾向は、「直属の上司と対面で直接話をする」についても見られました。若年層や非役職者だけでなく、年代の高い層や役職の高い層でも、同僚や上司との直接対話への要望が強いことがわかります。
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8.会社との気持ちの上での距離を縮めるのは、「仕事のやりがい」「評価」「人間関係」
「会社」との「気持ちの上での距離」を縮める上で、役に立つ施策をたずねると、「やりがいのある仕事ができる」が42.3%でトップとなりました。次いで、「自分の仕事への評価に納得できる」が36.4%、「職場の人間関係に満足できる」が33.7%でした。
一方、職場の設備や立地、会社の名前などが世間に認められることは、選択する人が少ない結果となりました。設備や立地、会社の知名度といった組織に関わることよりも、やりがいや自分の仕事への評価などの自身の職務内容に関わることや、自分に直接かかわりのある人間関係などが、会社との距離感に影響していると推測されます。
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9.一体感を高める、「社長の信念」「ミーティング」「雑談コミュニケーション」「アセスメントツール活用」
所属する会社で実施している「一体感を高める施策」について、自由記述で回答を求めました。
回答の多かった施策1:社長からのメッセージや社長との交流
社長からのメッセージや社長との交流に関し、複数の意見がありました。社長とのコミュニケーションが、働く人の印象に残っていることがわかります。社長の信念や戦略の一貫性についての記述もあり、こうした経営者の行動が、社員から一定の評価を得ていることが推測できます。
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回答の多かった施策2:ミーティング
ミーティングに関する記述も数多く見られました。朝礼や会議の定期的な開催が職場のコミュニケーションの基礎になっていることがうかがわれます。1on1ミーティングの記述が複数見られ、広く実施されていることが推測されました。また、業務上のミーティング以外に対話や特別なテーマを設けた話し合いも行われていることもわかりました。
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回答の多かった施策3:雑談
雑談に関する記述が複数見られました。孤立感や孤独の軽減を目的として雑談による気軽なコミュニケーションの推奨が行われていることもわかりました。
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回答の多かった施策4:アセスメントツール、社内イベント、社内広報
アセスメントツールの活用や、社内イベント、社内広報などの取り組みに関する記述もあり、多様な取り組みがあることがうかがわれます。
[画像14: https://prtimes.jp/i/31978/715/resize/d31978-715-243092-13.png ]
<まとめと提言>
心理的距離を縮めてモチベーションを向上させる
雑談で情報の価値とアクセシビリティを高め、対話で誇りとビジョンの確認を
ニューノーマルの働き方が模索される中、本調査では、リモートワークの頻度が社長や上司、同僚との心理的に影響を与えていることが示唆されました。仕事へのモチベーションと関連が深い心理的距離を、今後どう適切に保つかは、組織経営にとって重要な課題と言えます。
■リモートワーク増加による社長、上司、同僚との心理的距離の拡大とモチベーション低下の危機
リモートワーク頻度が高いほど、社長、上司、同僚との心理的距離は遠のいていました。心理的距離は仕事へのモチベーションと関係が深いため、結果的にリモートワークがモチベーション低下につながる可能性もあります。心理的距離は、相手と共通の視点を持つことや体験を共有することで近くなります。職場でも社長、上司、同僚と共通の視点や体験を持つことが、仕事の価値観や目指すビジョンを共有することにつながり、これがモチベーションにも影響すると考えられます。
リモートワークの導入や拡大にあたっては、ハード面の環境整備だけでなく、心理的距離を縮めるソフト面の環境整備が必須です。社長が一貫性のあるメッセージを発信し、社員の声を聞き取り、ともに同じ場面を共有すること、上司からの配慮やきめ細やかなマネジメントが感じられること、同僚と感情の行き違いなどがなく、良い人間関係を保てることなどは、リモートワーク下で組織運営をする上でのインフラともいえます。
■雑談の情報性とアクセシビリティへの影響
リモートワーク下で重要度が増したのは雑談でした。雑談の雑という言葉から、メインではないもの、不要なものという印象があります。リモートワーク下では、真っ先に切り捨てられたものの1つでもあったでしょう。しかし、実際には雑談こそ求められているものであることが示されました。
雑談には大きく2つの効果があると考えられます。1つは情報です。特定のテーマに沿って話す会議やミーティングと違い、話題の範囲は広範で多彩です。個々の体調やプライベート、社内外のちょっとした動き、それに対するちょっとした思いも取り上げられます。これは大変な情報量です。相手の事情や意向への理解が進み、今後の協働の仕方のヒントが得られます。また、相手にとっての「ちょっとした」情報が自身にとって「大きな」意味を持つ場合もあります。「それ、知らなかった。教えてもらってよかった」と実感した経験は多くの人にあると思います。そうした情報が業務上の適切な判断を助け、業務の革新や新しいビジネス創造のきっかけになることもあるでしょう。
2つ目は、互いのアクセシビリティの向上です。話しかけやすさ、連絡のしやすさを上げることになります。リモートワーク下では、「小さな疑問への回答が欲しい」「相手の意見を一言聞きたい」と切望しながら、しかし相手への申し訳なさ等で躊躇してしまうことが多く、その結果として業務効率が低下したり、メンタル面の不調につながったりする場合もあると思われます。雑談で、相手とフランクに話したことで、話しかけやすさが向上すれば、「ちょっとした」疑問が解決し、業務が円滑に進行したり、ストレスが軽減したりする可能性もあるでしょう。こうした支援関係やつながりの実感は、次項で述べる、さらに深い対話の基盤にもなります。
組織内に、雑談ができる仕組みと雰囲気づくりが必要です。ある決まった時間や、ミーティングの前後などに雑談タイムを設けたり、上司が気軽に声をかけやすい雰囲気を作ったりすることも大切でしょう。
■対話で、誇りやビジョンを確認する
リモートワーク下で重要度が増したこととして、上司との対話の回答が多く、また対面で行いたいこととしても、同僚と話すことや上司と話すことが上位に挙がりました。対話が求められていることがわかります。雑談でアクセシビリティが向上し、つながりが実感できると、さらに深く濃い内容の対話もしやすくなります。上司との1on1ミーティングや特定のテーマを掘り下げる話し合いが対話の一例です。
対話を一層有効に進めるために留意したいのが、話題を掘り下げる、深めるということです。業務の進捗状況などの現象面のみにとどまらず、進捗を通して何を実現させたいのか、何を目指すのか、という点にまで話を進めていきましょう。当社が先に行った「ウィズコロナ時代のモチベーション調査」では、がんばろうという気持ちは会社への誇りやビジョンの実現と関係していることが分かりました。リモートワーク下では特に、なぜこの会社で働いているのか、何のための仕事なのかという確固とした手応えが不足しがちです。対話は、誇りやビジョンを確認できる貴重な場です。特に上司から問いかけや投げかけをすることで、こうしたテーマについて考え、話し合う習慣をつけていくことが大切です。あるいは、組織内での意識向上のために、誇りやビジョンについて思い切り語り合う「対話イベント」を実施するなども考えらえます。
■やりがいの醸成と評価の納得度向上
会社との距離を縮めるものとして、やりがいと評価への納得が挙げられました。リモートワーク下では、会社の知名度や設備よりも、こうした一人一人の職務に関わる要素がクローズアップされている可能性があります。やりがいや評価への納得度を高めるには、個人の要望に応えることと、個人と組織をつなぐことの両方が必要です。前者については、1人1人の仕事の結果とその評価について、可能な限り「見える化」して提示し、上司との対話によってその評価への納得感を得られるようにすることです。後者は、個人の仕事が組織のビジョンとどう結びついているのかを示すことです。組織全体の中で、1人1人が何を担い、どう貢献しているかを図や数値で具体的に示すことが有用です。
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JTBコミュニケーションデザイン ワーク・モチベーション研究所
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