子どもに人気のゲームが英語学習のモチベーションに
配信日時: 2020-08-21 12:00:00
子どもたちや若者に人気のゲームを活用した英語学習は、世界各国で研究が進んでいます。
日本では、特に小学生を対象にした実践報告はほとんどありませんが、2019年、立命館小学校でのMinecraftを活用した授業が世界的に評価されました。ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>は、この授業を設計した正頭英和教諭へのインタビュー取材をもとに、いまの子どもたちの英語教育に必要な「モチベーション」について考察しました。
先生はMinecraftを知らず、授業を作り上げたのは子どもたち
メディアでは「教育界のノーベル賞」とも呼ばれる「Global Teacher Prize 2019(グローバル・ティーチャー賞)」。そのファイナリスト10名の1人に選ばれた、立命館小学校(京都府) 正頭英和教諭は、Microsoft社から小学生に人気のゲーム、Minecraftの活用を提案された時点では、「知らなかったですし、自分はおもしろいと思えなかった」そう。
ところが子どもたち側が「Minecraftできるの?すごい!」と目をキラキラさせてリアクションしたことから、子どもたち自身に「どうしたら英語の授業にできるか」を考えてもらい、授業のパッケージができあがっていったといいます。
このような過程でつくられた授業では、子どもたちが4~5人ずつのグループに分かれ、Minecraftでブロックを組み合わせて金閣寺などの世界遺産をつくります。このときに、ゲームの操作方法やブロックを置く場所、必要なブロック数など、さまざまな会話が発生しますが、このときに使っていい言語は英語のみ。
しかもそのやりとりに必要な単語・フレーズが事前に教えるわけではなく、子どもたちの「知りたい」というモチベーションを最大限引き出すために、「これを英語で言いたかったんだけど、何て言うかわからへんっていうフレーズある?」と子どもたちに聞くのだと正頭教諭。
すると、子どもたちから「ここにブロックを4つ置いてほしい、って何て言うの?」などと質問が出てきて、そこで初めて、「ここを自分の好きな数字に変えてごらん」といった使い方とともに、フレーズや文章で教えるのだと言います。
子どもの英語教育では、いかに英語が好きな子どもに育てるか、いかに英語を学びたいと感じさせるか、というモチベーションの部分がよく議論されますが、機械翻訳の精度が上がってきた今、「子どもたちが英語を学ぶ理由なんて、突き詰めていけばいくほどない」と正頭教諭は言い、英語を英語として学ぶのではなく、そして、英語を学んでいる、と感じさせることなく、「楽しいことをしている過程でついでに英語が身についていた」という学び方を理想としています。
子どもの好奇心を奪わない授業がモチベーションを引き出す
Minecraftの授業からは、いまの英語教育には「子ども主導」が重要であることがわかります。正頭教諭は、機械翻訳などのICTが人々の知識の差を埋める時代になってきたものの、すべての人々が同じ知識レベルを保つかというと、実際には違うだろうと考えています。
その理由は、モチベーションです。知りたい、やりたい、というモチベーションの違いによって、「この人はこのことに関してはすごい」と差が出てくる、ということです。
英語教育に限らず、大人の感覚で考えたり先回りしたりすることが子どもたちの好奇心を奪ってしまうことは多々あります。誰でも簡単にインターネットやAI技術を使って知識を入手したり補ったりできる時代では、英語を知りたい、使いたい、というモチベーションを引き出すことが以前よりも難しいのかもしれません。
しかし、海外の人やものにふれやすくなった時代だからこそ、Minecraftのように、一見、英語学習と関係なさそうな、「寄り道」に見えるようなものであっても、子どもの好奇心をベースに進めてみると、大人には思いつかなかったような英語の学習機会を発見し、従来の授業よりも強いモチベーションを生み出せる可能性があります。
モチベーションは、第二言語学習の成果を左右する要素の一つであり、「なぜ学ぶのか」という理由はモチベーションの強さに影響すると言われています(Ortega, 2009)。
Minecraftを活用した英語の授業実践は、公立小学校や家庭にとっても、子どもたちのモチベーションを引き出す方法に対して新たな見方を与えてくれるのではないでしょうか。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■子どもの英語教育に必要な「モチベーション」 〜Minecraftを活用した授業取材より〜
https://bilingualscience.com/english/%e5%ad%90%e3%81%a9%e3%82%82%e3%81%ae%e8%8b%b1%e8%aa%9e%e6%95%99%e8%82%b2%e3%81%ab%e5%bf%85%e8%a6%81%e3%81%aa%e3%80%8c%e3%83%a2%e3%83%81%e3%83%99%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%b3%e3%80%8d-%e3%80%9cm/
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
URL :https://bilingualscience.com/
詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
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