「pussyfoot」とはどんな意味? 猫にまつわる英語イディオム (21)

2025年9月22日 16:22

印刷

 英語には「beat around the bush(遠回しに言う)」や「sit on the fence(態度を決めかねる)」といった、はっきりしない態度を揶揄する表現がある。

【こちらも】猫にまつわる英語イディオム (20) 猫とネズミの関係から生まれたことわざ2選

 今回取り上げる「pussyfoot」もそのような表現の一種だ。直訳すれば「猫のように歩く」だが、それがどのようにニュアンスを変化させていったのだろうか。

■Pussyfootとは

 「pussyfoot」は、もともとは「猫のように忍び足で歩く」という意味の動詞だ。

 現在でも「そっと歩く」という意味で使われることはあるが、比喩的に「慎重すぎる態度を取る」「問題をはっきりさせず曖昧にする」という意味合いを込めて、批判的な文脈で使われることが多い。特に、動詞句として「to pussyfoot around」とすると、批判的なニュアンスが強まる。

 「pussyfoot」の語源は、19世紀末にさかのぼる。1893年に出版された雑誌「Scribner’s Magazine」に、「men who were beginning to walk pussy-footed and shy at shadows」という記述があり、この時点ですでに「猫のように忍び足で動く人間」を揶揄する文脈が見られる。

 その後20世紀初頭には、「そっと歩く」という動詞として定着し、同時に「回りくどい態度を取る」という比喩的な意味も広がった。

 ただ「pussyfoot」という言葉を世に広めたのは、禁酒法時代の取締官William Johnson(1862-1945)である。彼は、先住民居留地での違法な酒の取引を取り締まるため、夜間に猫のように忍び足で行動したことから「Pussyfoot Johnson」と呼ばれた。

 また彼を支持する禁酒主義者たちも「pussyfooters」と呼ばれ、この言葉は一時、「禁酒運動家」を意味するようになったほどだ(現在、この意味で使われることはほとんどない)。

■政治や社会問題でも用いられる批判的表現に

 20世紀初頭、当時の大統領セオドア・ルーズベルトも、この言葉を使って臆病で態度をはっきりさせない人物たちを揶揄した。そのため、さらにこの語の否定的ニュアンスは強まり、政治や社会問題において立場を明確にしない態度を批判する表現として定着していった。

 近年では、2016年に、元アラスカ州知事サラ・ペイリンが、ドナルド・トランプ支持を表明した際に、優柔不断さを排した姿勢を強調するために「no more pussyfooting around」と語っている。

 このように、「pussyfoot」はもともとは猫の忍び足を想起させる身近な言葉だったのが、現在では、政治的駆け引きや社会問題の議論などシビアな場面で使われることが多い。

 例文
 ・During the debate, he kept pussyfooting instead of giving a clear answer.
 (討論の間、彼は明確な答えを出さずに言葉を濁し続けた)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事