インフォマート、24年12月期は利益上振れ、25年12月期も大幅増収増益予想、データセンター費の大幅減少などが寄与

2025年2月10日 10:02

印刷

記事提供元:日本インタビュ新聞社

 インフォマート<2492>(東証プライム)は、企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoB電子商取引プラットフォーム(飲食業向けを中心とする受発注、全業界を対象とする請求書など)を運営している。24年12月期は利益予想を上方修正して増益幅が拡大する見込みとした。そして25年12月期も大幅増収増益予想としている。新規利用企業数が増加するほか、価格改定効果やサーバーのクラウド移行完了によるデータセンター費の大幅減少なども寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏だが反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。なお2月14日に24年12月期決算発表を予定している。

■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム

 企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoBプラットフォームを運営している。24年3月には、食品卸と個人飲食店の受発注デジタル化サービスを展開するタノム(21年2月に資本業務提携)を子会社化した。

 主なプラットフォームとしては、BtoB-PF FOOD事業では飲食店(主に外食チェーン)と食材卸・メーカー間の受発注業務を電子化する受発注、小・中規模飲食店向けの受発注ライト、食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理する規格書、LINEを使った発注が可能なTANOMU、店舗オペレーション管理ツールのV―Manage、BtoB-PF ES事業では全業界を対象に請求書発行・受取業務を電子化する請求書、安心・安全な契約書管理を実現する契約書、取引先との見積書・発注書・納品書・検収書をデジタル化するTRADE、業務用食品食材の商談をデジタル化する商談などがある。また、多様な価値提供の一環および新たな収益源育成に向けて、100万社の顧客基盤に基づく商流データを活用したBtoB Financeを開発中(一部機能をリリース済み)である。

 23年7月には自治体のLGWAN(総合行政ネットワーク)に対応したBtoBプラットフォーム on LGWANを本格稼働、23年12月には紙やPDFなど様々な形式で受け取る請求書をAI OCRでデータ化するサービスBP Storage for 請求書の提供を開始した。また25年4月にはBtoBプラットフォームTRADEにおいて、建設業の商慣習に対応した新機能「請求書機能」の提供を開始する。

 なお23年12月期の売上高は、BtoB-PF FOOD事業が84億47百万円、BtoB-PF ES事業が49億16百万円だった。主な収益は利用企業から得る使用料収入およびセットアップ費用である。受発注ではフード業界の買い手企業(外食チェーン、ホテル、給食等)から得る月額システム使用料、売り手企業(食材メーカー・卸等)から得る定額制または流通金額に係る従量制のシステム使用料、請求書ではシステム使用料(基本料金+従量制)などが柱となっている。

■26年12月期営業利益50億円目標

 中期業績目標値には26年12月期売上高200億円、営業利益50億円、売上高営業利益率25%を掲げ、5年間平均のCAGR(売上高成長率)は全社16%(FOOD事業8%、ES事業30%)としている。

 中期経営方針として、BtoBプラットフォームの強化(新サービス・新プロダクツを含む機能強化、販売力強化、認知度向上、CS向上など)、増収増益基調の継続と高収益性への回帰、出資先のシナジー拡大と収益化を掲げている。24年12月にはBtoBプラットフォームが、クラウドセキュリティの国際標準規格ISO/IEC27017認証を取得した。

 なおFood Techに特化したファンドを設置し、20年6月にはAIを活用した飲食店向けの自動発注クラウドサービス「HANZO自動発注」を開発・提供するGoalsに出資して資本業務提携(22年6月に追加出資)した。23年6月には、国内の旅館・宿泊業の再生支援を行うRQ旅館再生ファンド投資事業有限責任組合に出資した。

■利用企業数は増加基調

 利用企業数の増加に伴って収益が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調で、23年12月期末の全社ベースの利用企業数は22年12月期末比18万5502社増加の101万1176社、事業所数は36万1904事業所増加の188万8288事業所となった。主要なプラットフォームでは、受発注の買い手企業が273社増加の3915社、買い手店舗が4088店舗増加の7万2468店舗、売り手企業が2016社増加の4万4044社だった。請求書は18万5737社増加の100万2514社となり100万社を突破した。有料契約企業は3193社増加の1万1808社(受取モデルが1631社増加の6913社、発行モデルが1562社増加の4895社)となった。なお24年10月には請求書の利用企業数が110万社を突破した。

 国内最大級のBtoBプラットフォームである。東京商工リサーチの調査(24年6月)においてはBtoBプラットフォーム請求書が、請求書クラウドサービス市場国内シェアNO.1を4年連続で獲得した。24年9月には未来トレンド研究機構調べ(調査期間24年7月~8月)の受発注クラウドサービス市場における受発注流通金額において国内シェアNo.1を獲得した。

 BOXIL SaaS AWARD Autumn 2024においては、BtoBプラットフォーム請求書が請求書発行部門で、BtoBプラットフォーム受発注が受発注管理システム部門で、それぞれ1位を受賞した。アイティクラウドのITreview Grid Award 2024 Springでは、BtoBプラットフォーム請求書が請求書・見積書作成ソフトおよび請求書受領サービスの2カテゴリで最高位のLeaderを受賞した。24年6月にはアイティクラウドのITreviewにおいて、Customer Voice Leaders 2024をエグゼクティブ活用部門で受賞した。

■アライアンスも積極推進

 アライアンス戦略も積極推進している。21年3月には三井物産と共同出資で特別目的会社I&Mを設立し、中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携、22年4月にはプロダクト・データ・プラットフォームを開発・提供するLazuliに出資した。

 21年10月に串カツ田中ホールディングス<3547>と業務提携して設立した合弁会社Restartz(リスターツ)は、22年11月に飲食店舗運営のDXを支援する店舗オペレーション管理アプリ「V-Manage」をリリースし、23年4月に串カツ田中ホールディングスの全ての直営店舗(155店舗)への導入を開始した。そして23年8月末に利用企業数が100社を突破した。

 24年11月にはJTBのグループ企業であるJTB旅連事業と業務提携した。宿泊施設と生産者・加工食品業者をつなぎ、食材の調達業務効率化する「ホテル・旅館向けマーケットプレイス」を「BtoBプラットフォーム商談」内に開設し、宿泊業界のデジタル化を推進する。24年12月には国立大学法人東京大学大学院工学系研究科早矢仕研究室とAIを用いた共同研究を開始した。

■24年12月期は利益上振れ、25年12月期も大幅増収増益予想

 24年12月期の連結業績予想(1月22日付で売上高を下方修正、各利益を上方修正)は、売上高が23年12月期比16.9%増の156億26百万円、営業利益が44.2%増の11億97百万円、経常利益が87.2%増の11億83百万円、親会社株主帰属当期純利益が117.8%増の6億49百万円としている。配当予想は23年12月期比57銭増配の1円54銭(第2四半期末77銭、期末77銭)としている。

 前回予想(24年2月14日付公表値、売上高160億86百万円、営業利益10億円、経常利益7億80百万円、親会社株主帰属当期純利益5億39百万円)に対して、売上高は4億59百万円下回ったが、各利益は営業利益が1億97百万円、経常利益が4億03百万円、親会社株主帰属当期純利益が1億10百万円、それぞれ上回った。

 売上面はBtoB-PF FOOD事業が順調だが、BtoB-PF ES事業のBtoBプラットフォーム請求書におけるインボイス制度特需が想定以上に落ち着いたことが影響した。利益面は売上原価で顧客紹介手数料およびソフトウェア償却費、販管費で支払手数料などの一部が未発生となったことが寄与した。なお特別損失にソフトウェア資産に関する減損損失3億18百万円を計上する。

 セグメント別に23年12月期比で見ると、BtoB-PF FOOD事業は売上高が17.7%増の99億44百万円で営業利益が1.7%減の19億42百万円、BtoB-PF ES事業は売上高が15.6%増の56億82百万円で営業利益が7億45百万円の損失(23年12月期は11億49百万円の損失)だった。

 25年12月期の連結業績予想も1月22日付で公表し、売上高が24年12月期比24.7%増の194億91百万円、営業利益が92.1%増の23億円、経常利益が92.9%増の22億83百万円、親会社株主帰属当期純利益が108.8%増の13億56百万円としている。

 セグメント別の計画は、BtoB-PF FOOD事業の売上高が21.2%増の120億54百万円で営業利益が18.0%増の22億92百万円、BtoB-PF ES事業の売上高が30.9%増の74億37百万円で営業利益が7百万円(24年12月期は7億45百万円の損失)としている。

 新規利用企業数が増加するほか、価格改定効果(BtoBプラットフォーム受発注は24年8月実施、BtoBプラットフォーム請求書は25年4月実施予定)や、サーバーのクラウド移行完了(24年9月)によるデータセンター費の大幅減少なども寄与する見込みだ。BtoB-PF ES事業は黒字転換の計画である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は反発の動き

 株価は安値圏だが反発の動きを強めている。週足チャートで見ると26週移動平均線を回復した。好業績を評価して出直りを期待したい。2月7日の終値は311円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS2円87銭で算出)は約108倍、前期推定配当利回り(会社予想の1円54銭で算出)は約0.5%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS46円66銭で算出)は約6.7倍、そして時価総額は約807億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

【関連記事・情報】
【株式市場特集】産金株、貴金属回収のリデュース株、貴金属買い取り・再販のリユース株に注目(2025/02/10)
【デジタル変革の最前線】生成AIがもたらす劇的な生産性向上、大手企業が相次ぎ導入(2025/02/09)
生成AI後進国からの脱却へ──ソフトバンクが仕掛ける4500億円の大勝負(2025/02/07)
【株式市場特集】不動産市場の勝者と敗者、投資家が注目すべき銘柄は(2025/02/03)

※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

関連記事