ファンペップ Research Memo(2):独自開発した抗体誘導ペプチド技術で抗体医薬品の代替医薬品の開発に挑む

2024年9月19日 14:02

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記事提供元:フィスコ

*14:02JST ファンペップ Research Memo(2):独自開発した抗体誘導ペプチド技術で抗体医薬品の代替医薬品の開発に挑む
■会社概要

1. 技術概要
ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科にて確立された機能性ペプチド※のデザイン、創製、最適化の技術を実用化する目的で2013年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーである。社名のファンペップの由来は、機能(function)を持つペプチド(peptide)の可能性を追求し、新たな医薬品などの開発によって世界の人々を健康にするだけでなく、元気を与えられるような企業になるとの想いを込めて名付けられたものである。

※ アミノ酸が2〜50個程度つながった化合物をペプチド、50個以上つながった化合物をタンパク質と呼ぶ。ペプチドのなかにはインスリンやグルカゴンなどホルモンとして体内の器官の働きを調整する情報伝達を担う物質もある。特定機能を持たせることを目的に人工合成したものを機能性ペプチドと呼び、食品や化粧品分野でも注目され製品に使用されている。


同社の機能性ペプチドはヒト由来の抗菌ペプチド「AG30」※1を起源としており、安定性や製造コストの最適化に取り組むなかで現在の主要パイプラインの1つである「SR-0379」や抗体誘導ペプチドのキャリアとなる「AJP001」※2、抗菌及び消毒剤分野での需要が見込まれる抗菌ペプチドを開発している。また、「AJP001」に標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープ※3を組み合わせることで標的タンパク質の働きを阻害する抗体誘導ペプチドを作製し、医薬品として開発を進めているほか、「AJP001」を短くした機能性ショートペプチド「OSK9」※4や「キュアペプチン」※5を美容・アンチエイジングなどの非医薬分野で展開している。なお、抗体誘導ペプチドは同社の登録商標となっている。

※1 「AG30」はアミノ酸を30個つなげたペプチドで、血管新生作用や抗菌活性の機能を持つ。
※2 「AJP001」は抗体誘導ペプチドを作るためのキャリア(自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を持つ)となり、標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープと組み合わせることで、多様な抗体誘導ペプチドの作製が可能となる。
※3 エピトープは抗原決定基とも呼ばれ、免疫系、特に抗体、B細胞、T細胞によって認識される抗原の一部。
※4 「OSK9」は、繊維芽細胞の増殖を促進し、ヒアルロン酸やコラーゲンの産生を促進する効果が確認されている。
※5 「キュアペプチン」は、天然型アミノ酸で構成する合成ペプチドで、細菌の細胞膜を破壊することにより抗菌作用を示す。広い抗菌スペクトルを有していることが確認されている。

「体外」で人工的に製造する抗体医薬品に対する抗体誘導ペプチドの優位点は、体内で抗体を産生させることである。このため、抗体誘導ペプチドは(抗薬物抗体を原因とする)効果の減弱が起こらず、長期にわたる治療効果の維持が期待される。免疫細胞が一定期間抗体を産生するため薬剤の投与間隔が長くなり(数ヶ月に1回の注射投与)、服薬アドヒアランス(服薬遵守)及び利便性の改善により患者のQOL向上につながる。さらに、化学合成による大量生産で低コスト化が可能となるため、高額な抗体医薬品を代替できれば患者負担の軽減だけでなく、先進国で深刻化する医療財政問題の改善にも貢献できるため開発意義は大きい。

また、抗体誘導ペプチドの競合技術との比較において、既存の生物由来のキャリア(高分子)が抱える課題点を解消できることも、「AJP001」の優位点として挙げられる。生物由来の既存キャリアは反復投与時に効果が減弱する可能性があること(標的タンパク質よりもキャリアに対して抗体が産生されるリスクがある)、製造上の品質確保の難易度が高いこと(生物由来で高分子のため品質管理が難しく、キャリアとエピトープの制御も難しい)、副作用リスクがあること(アレルギーやアナフィラキシーなどが生じる可能性)などが挙げられる。

知財戦略も進めており、「SR-0379」については日米、欧州の主要国で特許を取得したほか、「FPP003」やそのほかのパイプラインについてもそれぞれ日米、欧州の主要国で特許が成立または出願中である。直近では2024年8月に抗IgE抗体誘導ペプチド「FPP004X」の米国での特許が成立している。なお、「AJP001」に関する特許は大阪大学が保有し、独占的使用権を同社子会社のファンペップへルスケアが有している。同社はファンペップヘルスケアからサブライセンスを受ける格好となっていたため、2022年10月に株式交換により完全子会社化し知財戦略を強化した。抗体誘導ペプチドの開発品については「AJP001」の特許が含まれるため、ライセンス契約交渉において、同特許がサブライセンス契約の形となっているのは契約交渉面で好ましくなく、子会社化によって契約交渉もスムーズに進むと期待される。

ファンペップヘルスケアは(国研)科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業大学発新産業創出プログラムに基づき、大阪大学の中神教授の研究成果である「AJP001」及び機能性ショートペプチド群の実用化を図るために2016年に設立された。大手化粧品会社の高級化粧品にアンチエイジング機能を持つ機能性ショートペプチド「OSK9」が採用されるなど、美容分野を中心に事業展開している。2022年にファンペップヘルスケアを子会社化したことを機に、創薬以外のビジネス(機能性ペプチドの化粧品分野などへの販売業務等)を子会社に移管して事業効率を高め、創薬以外の事業の育成によって創薬事業の開発費の一部を確保する狙いである。


塩野義製薬や住友ファーマとライセンス契約及びオプション契約を締結

2. 会社沿革
同社は2013年に設立され、本格的に事業活動を開始したのは大阪大学との間で抗体誘導ペプチドの共同研究を開始した2015年に入ってからである。同年10月には塩野義製薬との間で機能性ペプチド「SR-0379」に関する全世界を対象としたライセンス契約を締結し、現在は第3相臨床試験まで進んでいる。2016年9月から大日本住友製薬(株)(現 住友ファーマ<4506>)と標的タンパク質IL-17Aに対する抗体誘導ペプチドの共同研究を開始し(2018年3月に開発コード「FPP003」としてオプション契約を締結)、直近では2024年3月に塩野義製薬と花粉症ワクチンとなる抗IgE抗体誘導ペプチド「FPP004X」に関する全世界を対象とした独占的開発及び商業化権のオプション契約を締結するとともに資本業務提携を行った。

創薬以外の分野では、化粧品や除菌スプレーなどの成分の一部として機能性ペプチドを販売している。具体例としては、2018年3月にファンケル<4921>が発売開始した「マイルドクレンジングシャンプー」で、特徴の1つとなっている「根活トリプル成分」の1つとして採用されたほか、2020年4月に(株)SMV JAPANが発売した「携帯アルコール除菌スプレー」などに採用されている。また、2022年2月には次世代創傷用洗浄器の開発を目指し、ファインバブル技術のリーディングカンパニーである(株)サイエンスと共同開発契約を締結したほか、同年12月にファンペップヘルスケアが(株)ASメディカルサポート及び(株)N3と幹細胞化粧品の共同開発で、2023年2月に(株)サンルイ・インターナショナルとフェムテック化粧品の共同開発でそれぞれ契約を締結した。

なお、2020年12月に東京証券取引所マザーズ市場に株式上場を果たしており、2022年4月の市場区分見直しによりグロース市場に移行した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《HN》

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