キャスター Research Memo(5):2024年8月期第3四半期は増収も、広告投資の増額とともに損失幅が拡大

2024年8月29日 14:45

印刷

記事提供元:フィスコ

*14:45JST キャスター Research Memo(5):2024年8月期第3四半期は増収も、広告投資の増額とともに損失幅が拡大
■決算概要

1. 2024年8月期第3四半期業績の概要
キャスター<9331>の2024年8月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期比6.6%増の3,316百万円、営業損失が56百万円(前年同期は19百万円の損失)、経常損失が50百万円(同14百万円の損失)、四半期純損失が73百万円(同29百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。

売上高は、ARPUの上昇に伴い、主力の「WaaS事業」が伸長した。単価の高い専門領域サービスが好調であったことや大型顧客獲得による契約時間の延長がARPUの上昇に寄与した。ただ、稼働社数については、第2四半期におけるアドフラウド※の影響を受け、広告投資を一時的に抑制したことでやや伸び悩んだ。一方、「その他事業」は、リモート人材の派遣・紹介が堅調に推移したものの、海外事業の苦戦により微増収に留まった。

※アドフラウド(不正広告)とは、無効なインプレッションやクリックによって広告費用に対する成約件数や効果を不正に水増しする不正な広告のことである。同社では、既にシステム的な対策を施すとともに、広告に関する知見を持つエグゼクティブクラスの人材を追加獲得し、広告投資の最適なアロケーションを検証できる体制を構築している。


KPIの状況については、2024年5月末の稼働社数は1,180社(前年同期比1.0%減)と伸び悩んだものの、第3四半期(累計ベース)のARPUが312千円(前年同期比4.0%増)、MRRが3.6億円(前年同期比5.9%増)となり、稼働社数を除けばそれぞれが改善し、業績の底上げに寄与している。

損益面でも、増収効果及びARPU上昇に伴う原価率の改善が寄与し、売上総利益では前年同期比12.4%増の増益を確保したものの、広告投資の増額が営業損失の拡大を招いた。特に、第3四半期での広告投資の増額は、第2四半期におけるアドフラウドの影響を踏まえ、広告アロケーション検証を実施したうえで行っており、その結果、顧客獲得にも回復の兆しが見えてきたようだ。

財政状態については、現預金の増加等により総資産が前期末比25.7%増の2,355百万円に拡大した。一方、自己資本については、損失計上により利益準備金が減少したものの、株式上場に伴う新株式発行等により資本金及び資本準備金がそれぞれ増加したことから、前期末比20.0%増の1,247百万円となり、その結果、自己資本比率は53.0%(前期末は55.5%)と若干低下した。また、有利子負債は長・短合わせて前期末比約3.3倍の430百万円に増加したが、現預金(1,949百万円)を中心として流動比率は226.6%を確保しており、財務の安全性に懸念はない。

セグメント別の業績は以下のとおりである。

(1) WaaS事業
売上高は前年同期比8.2%増の2,683百万円、セグメント利益は同42.5%増の694百万円と増収増益となった。売上高は、アドフラウドの影響を受け稼働社数がやや伸び悩んだものの、経理や労務関連など単価の高い専門領域サービスの販売が好調であったことや大型顧客獲得による契約時間の延長によりARPUが上昇し増収となった。損益面でも、増収効果及びARPU上昇による利益率の改善により大幅な増益となった(戦略的な広告投資についてはセグメント損益に含めず、本部勘定として処理をしている)。

(2) その他事業
売上高は前年同期比0.5%増の632百万円、セグメント損失は205百万円(前年同期は107百万円の損失)と損失が拡大した。売上高は、リモート人材の派遣・紹介が堅調に推移した一方、世界的なインフレの影響や採用難により海外事業が苦戦したことで微増収に留まった。損益面でも、在宅派遣や「Reworker」が堅調に利益を創出したものの、海外事業の落ち込みにより損失計上となった。

2. KPIの四半期推移
四半期ごとのKPIの推移を見ると、稼働社数はほぼ横ばいで推移した一方、ARPUは力強く拡大してきた。また、解約率も着々と改善しており、その結果MRRは拡大傾向をたどっている。

一方、広告効果に関わるKPIについては、第3四半期におけるユニットエコノミクスは一時の高すぎる水準(投資余力を残した状態)から適正水準(300%~500%)へと落ち着いてきた。構成要素に分解すると、1) CACは高まっているものの、アドフラウドの影響に伴う一過性の要因である点や、2) LTVについては順調に増え続けている点が確認でき、同社としては広告投資に踏み込むタイミングとの認識をしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)《SO》

関連記事