propetec Research Memo(4):リアルとテクノロジーを融合した中古住宅再生事業

2024年8月15日 15:04

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記事提供元:フィスコ

*15:04JST propetec Research Memo(4):リアルとテクノロジーを融合した中古住宅再生事業
■事業概要

2. 中古住宅再生事業
(1) マンション買取再販事業
マンション買取再販事業は、property technologies<5527>が仲介会社を通じ、売り主(所有者)から中古マンションを買い取って、リノベーションにより価値を高めたうえで再販する事業である。展開ブランド「FURVAL」では、厳選された家具や生活必需品の家電、調理器具などを、デザインや機能、サイズなどリノベーション空間にあわせて取り揃え、時間的な労力をセーブするだけでなく、家具や家電を含めた価格で販売する(ローンを組む)ことで金銭的な負担も軽減するサービスを提供している。なお、ホームネットでの購入者に限定して、住宅設備の故障に10年間何度でも利用できるアフターサービス「住設あんしんサポート」も提供している。

マンション買取再販事業の特徴は、北海道から沖縄まで地方の主要都市部で、30~40代の一次取得者層をターゲットに、リアルなネットワークとテクノロジーを駆使して事業展開している点にある。ターゲットが一次取得者層であることのメリットは、子供の成長など顧客のライフサイクルからニーズが明確なうえ安定した実需が期待できることにある。一方、一次取得者層にとっても、東京都の中古マンション平均価格が56百万円であるのに対して同社は29百万円と、一般的な借入期間で一定の金利上昇があったとしても住宅ローンの返済額が家賃以下になるという値ごろ感にメリットがある。また、地方圏の比率が同業他社で4割程度だが、同社は6割と高くなっていることもメリットである。なぜなら、地方圏は物件密度が薄く営業効率が低いという事実はあるものの、築30年以上の物件が増加しているにもかかわらず競争が緩やかなため、同社のように広範に営業ネットワークを構築すれば、効率的な情報交換によって主要な収益源にできるからだ。

(2) iBuyerビジネス
不動産テックを活用する一部企業が、iBuyerという取引形態を掲げて事業を行っているが、販売に苦労していることが多いようだ。しかし、同社はリアルの不動産事業を展開しているため、販売に苦労することなくiBuyerビジネスを拡大している。その基盤となっているのが、2021年にスタートしたiBuyerプラットフォーム「KAITRY(カイトリー)」である。「KAITRY(カイトリー)」は複雑な不動産の売買プロセスをオンラインで容易に実行できるうえ、査定から売却まで通常3ヶ月以上かかるところ、査定はAI査定によって最短5秒、販売(現金化)も同社が買い取ることで最短3日と大きく短縮できるため、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)のなかでも、同社が同業他社を上回る業績を上げた要因の1つとなった。さらに、住みながら売りたい人にはセール&リースバック、新居を買ってから売りたい人には先日付買取保証、お得に売りたい人には共同投資型売却など様々なメニューを揃えており、ユーザーの住み替えニーズを後押ししている。

こうした新しいビジネスモデルにより、不動産売買において個人の心理的ハードルが下がることで、将来的に住み替え市場が拡大、同社が目指す「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることのできる未来に近づいていくと思われる。同社は「KAITRY(カイトリー)」を普及するため、ネット広告やTVCMの活用、仕入クロージングの体制強化、UI/UXなど基盤の強化を進めている。この結果、「KAITRY(カイトリー)」の認知度が向上し、仕入件数が毎月安定的に増加、コンバージョンの拡大にもつながってきた。なお、同社が直販売に乗り出したことで仲介会社とのコンフリクトが懸念されるが、同社の直販売により住み替え市場自体が拡大しており、同社が仲介会社のDXなど業務効率化も支援していることから、仲介会社にもメリットがあるため信頼関係は保持されている。

(3) SaaSサービス
同社のAI査定や「KAITRY(カイトリー)」が目覚ましい実績を上げつつあるなか、仲介会社などの要望により同社が蓄積してきたテクノロジーを公開し、2022年にスタートしたのがSaaSサービスである。SaaSプロダクトが広く受け入れられれば、ターゲットは全国33,000社以上の仲介会社に留まらず、不動産会社全体31万社や、不動産関連業務を幅広く扱っている弁護士など士業41,500事業所、1,000の金融機関へとニーズが拡大していく可能性があると思われる。一方で、SaaSプロダクトの提供により関係強化が図られるため、物件紹介という形での同社収益へのフィードバックも期待できる。このため、金融機関向けに「KAITRY finance」、士業向けに「KAITRY professional」、仲介会社向けに「HOMENET Pro」という3つSaaSプロダクトを開発、提供を開始した。なお、「KAITRY finance」と「KAITRY professional」については、ニーズを捉えて早期に収益化するべく展開を急ぐ方針だが、「HOMENET Pro」は将来のサービス拡張を見据えて、まずは取引間口を広げるため無料での登録を中心に拡大を進めている。

このなかで金融機関向け「KAITRY finance」は、AI査定機能(売出価格/成約価格)のほか、与信管理や資産活用提案などで活用する不動産価格調査書を作成可能で、業務の効率化や金融サービスの高付加価値化につながるため、幅広い金融機関、しかも複数部署でニーズがあるようだ。このため、地方銀行を含む全国の金融機関向けに販促を開始、早くもみずほ銀行など7行で導入または導入に向けた運用が開始された。各銀行では、法人融資において融資先資産実態把握の手間軽減や行内基準の統一化・属人性排除、個人業務においてはプライベートバンキングでの顧客資産全体を把握した総合的提案、遺言信託/遺産整理における商機拡大、住宅ローンでの借換え相談時の提案充実、債権管理においては保証会社/サービサーの査定業務の効率化などに利用しているようだ。直近では、各銀行の不動産価格調査業務の効率化に向けて、ゼンリン<9474>の「住所地番変換」機能をAPI連携した「地番でAI査定」をリリースした。

弁護士や税理士、司法書士など士業向け「KAITRY professional」は、AI査定機能のほか、不動産の遺産分割や財産分与時に活用する不動産価格調査書を作成できる。士業による不動産価格の算定には客観性が求められるため、複数の不動産会社に調査を依頼する必要があるなど手間と時間がかかることが課題だった。しかし「KAITRY professional」は、スピーディかつ低コストで価格算定できるうえ業務の効率化にもつながることから、相続や離婚など迅速な解決が必要な場合に適しており、今後の導入拡大が期待される。また、士業での導入拡大が進めば買取再販事業の新たな仕入ルートにもなり、同社のデータベースのさらなる強化が期待できる。仲介会社向け「HOMENET Pro」は、同社が業務用に構築してきた業務効率化ツールをパッケージ化したもので、AI査定や提案書作成、オンライン上で取り扱い可能物件の確認などの機能による、業務の効率化への貢献が期待できる。現在、仲介会社の囲い込みやデータベースの強化、仕入販売の拡大につなげる狙いもあり無料登録を推進しているが、2022年11月のローンチ以降、アカウント数、査定数ともに順調に増加を続けているようだ。将来的には、機能拡充による収益化を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《HN》

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