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新晃工業 Research Memo(9):想定を超える受注を背景に、中計目標を1年前倒し達成
*14:49JST 新晃工業 Research Memo(9):想定を超える受注を背景に、中計目標を1年前倒し達成
■業績動向
1. 2024年3月期の業績動向
新晃工業<6458>の2024年3月期の業績は、売上高51,943百万円(前期比15.9%増)、営業利益は8,627百万円(同43.8%増)、経常利益9,120百万円(同39.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,580百万円(同45.8%増)となった。期初計画との比較では、売上高出5,443百万円、営業利益で2,327百万円、経常利益で2,420百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で1,980百万円の過達となった。このように業績が非常に好調に推移したため、2024年3月期第2四半期決算発表時には、前中期経営計画「move.2025」の目標(2025年3月期売上高目標520億円、営業利益目標75億円)を2024年3月期に1年前倒しで達成することが予測され、新たな中期経営計画「move.2027(2027年3月期売上高目標560億円、営業利益目標86億円)」を公表することとなった。しかし、データセンター向けなど需要がさらに加速したため、2024年3月期決算発表時には早くも「move.2027」の売上高目標を600億円、営業利益目標を100億に上方修正することとなった。
日本経済は、コストカット型経済から活発な投資と賃上げがけん引する成長型経済への変革を目指すなかで、消費者物価の上昇や企業収益の改善が認められるなど緩やかな景気回復が続いた。空調機器業界では、製造拠点の国内回帰を背景に産業空調を中心とした投資が続いたほか、AIやクラウドサービスの拡大を見据えたデータセンターへの投資が広がるなど、受注が引き続き高水準で推移する良好な環境が継続した。こうした環境下で同社は、新中期経営計画に則り、産業向けやデータセンター向けなど5つの重点ターゲット※に対する販売施策、事業のデジタル化、生産能力の増強を推進するとともに、製品の販売からサポート体制、迅速なメンテナンス体制までを一貫して提供し、建物価値を向上させるバリューチェーンの強みを生かして市場の攻略を進めた。
※5つの重点ターゲット:前中期経営計画で定めた市場ターゲット。水AHUで大型ビル向け、産業向け、データセンター向け、更新向け、ヒートポンプAHUでは個別空調向け。
この結果、売上面では、特に産業向けなどが好調に推移したほか、空調工事の拡大や2023年4月の価格改定、オーダーゆえにできる綿密な提案やきめ細かな工程管理、選別受注などによる製品・サービスの付加価値向上が順調に進展し、大幅増収・大幅過達となった。利益面では、価格改定と製品・サービスの付加価値向上により、売上総利益率が大きく改善した。価格改定はタイムラグがあるため2025年3月期に入っても効果が残るが、2024年問題(2024年4月に始まる建設業並びに物流業における働き方改革規制)などを背景に2024年7月に再び価格改定を行う予定である。販管費はベースアップなど人件費や物流費が増加したが、増収と売上総利益率改善の効果で吸収し、営業利益も大幅増益・大幅過達となり、営業利益水準は2020年3月期に続く過去2番目の高さとなった。期初計画との比較で売上高・営業利益ともに大幅な過達になったのは、産業空調と空調工事、それに売上総利益率が想定以上に好調だったことが要因である。
また、受注高が37,315百万円(前期比19.6%増)、受注残高20,883百万円(前期末比27.9%増)と大きく伸びた。これは、データセンターや産業空調・空調工事といった国内案件、公共インフラ施設など中国の案件が好調だったことに加え、受注タイミングの早期化も影響していると思われる。なお、下期の受注高が上期に比べて少なくなったのは、上期にキャパシティを上回るような想定以上の受注が入ったため、下期の受注を意図的に一時抑制したことが要因である。こうした意図的な抑制は、2年後の受注を予測できる生産予約システムにより発動したもので、選別受注による採算改善につながるものと思われる。市場は引き続き需要が過剰になっているような状況で、このため今後も、業界全体で選別受注が広がるとの予測もある。
セグメント別の業績動向は、日本が増収大幅増益、中国を主とするアジアが大幅増収、黒字転換(前期比203百万円の増益)と全般的に好調だった。
日本では、データセンターや産業空調の機器販売が伸びたほか空調工事が高水準で推移したため売上高が44,426百万円(前期比15.0%増)となった一方、増収効果に加え価格改定や製品・サービスの付加価値向上によりセグメント利益が8,448百万円(同40.4%増)となるなど、売上高・セグメント利益ともに好調だった。アジアでは、中国において政策効果で景気が持ち直し始めるなか、円安の影響や、コロナ禍の影響で納期が前々期から前期へとずれ込んだことなどにより売上高が7,517百万円(同21.8%増)と高伸長、こうした増収効果や販売面・製造面での採算改善が進んだことにより、セグメント利益は135百万円(前期はセグメント損失68百万円)と黒字転換した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《SO》
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