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新晃工業 Research Memo(5):SIMAプロジェクトによる新しい製販体制も強み
*14:45JST 新晃工業 Research Memo(5):SIMAプロジェクトによる新しい製販体制も強み
■事業概要
3. 同社の強み
新晃工業<6458>は、ビル建築工事の中でもニッチな二次側空調機市場を深掘りすることでリーディングカンパニーとなった。そうしたポジションを得ることができた背景には、空調機を24時間常時安定稼働させ、不具合が生じた場合には即対応しなければならない設備工事独特の世界で培われた同社の製販体制と事業運営の強みがあり、顧客に長年「高い環境価値」「建物の価値向上」「信頼性の高い稼働」「充実したサービス」の4つの付加価値を提供してきたことが要因と言える。
製販体制の強みは、具体的に、同じ建物でも1台ごとに要求される仕様・能力・サイズが異なるため、そうした個別のニーズに応える製品開発力・設計力や、個別に設計するためばらつく生産に生産現場が柔軟に対応してフル稼働するノウハウ(生産量を安定化できないため過去に大手メーカーが撤退し、現在では新規参入もない理由である)、長年の実績を背景とする製品や作業の品質の高さなどである。さらに、営業から技術・製造・サービスまで緊急時でも一体となって迅速に動くことができる、製造から販売、工事・サービスまでの製販一貫体制も強みである。事業運営面では、長年の実績に基づく案件情報量と設計段階で得られる早期情報による需要予測精度の高さが強みとなっている(2年先の制度の高い需要動向予測が可能)。さらに、必要に応じて更新案件や小口案件を取り込むことにより営業面から各工程をコントロールし生産量を安定化するノウハウ、長年の経験と科学的管理手法に基づく細やかな現場調整や生産物流計画なども強みと言える。
こうした強みも、人口減少やベテランの退職、需要構造の変化などにより、中長期的に発揮できなくなる可能性があると言われている。しかし、そのために推進しているのが、デジタルの力を用いて労働集約型事業からの脱却を目指すSIMAプロジェクトである。SIMAプロジェクトは、個別対応の多い空調機製造においても、できるところは効率化や標準化を進めるという考え方に基づいている。そのため、製造面ではBOM(部品構成表)を中心としたデジタル設計・生産体制のスマート工場による新たな生産スタイルを、販売面では需要予測の精度向上とインパクト営業の実行など新たな営業スタイルを構築することで、新しい製販体制の確立を目指している。現状本格稼働に至っていないが、2023年12月に設計から展開図・加工機までをデータ連携できる「新設計システム」、2024年4月には顧客が簡単に図面を検索できるサービス「SINKOダイレクト」をリリースするなど効果が既に顕在化しつつあり、新中期経営計画「move.2027」を支える基盤にもなっている。このSIMAプロジェクトを含めた強みを背景に、同社の更新案件比率は約50%と非常に高く、新国立競技場やあべのハルカス、スーパーコンピュータ「富岳」(理化学研究所)、海外では上海タワーやザ・ペニンシュラ香港など、有名施設への納入実績が顕著である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《SO》
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