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スパークス G Research Memo(7):2026年3月までに運用資産残高3兆円目指す。営業増益と時価総額増大も
*13:47JST スパークス G Research Memo(7):2026年3月までに運用資産残高3兆円目指す。営業増益と時価総額増大も
■中長期成長戦略
中長期の成長戦略としてスパークス・グループ<8739>は、成長実現のための4本柱として掲げる「日本株式」「OneAsia」「実物資産」「プライベート・エクイティ」の運用資産残高を、2026年3月までに2021年3月期末の1兆5,356億円から2倍の3兆円に増加させる目標を掲げている。同時に、新事業領域の育成にも注力する。高い成長性が期待できる「エネルギー(水素を含む)」「医療」「フィンテック」を成長領域として定め、経営資源を効率的に配分することで、新たな事業領域を育成しながら資本収益性も高めていく方針だ。4本柱の運用資産残高増大とROEの向上を追求しながら、中長期的には営業利益100億円、時価総額1,000億円を目指していく。
(1) 4本柱の運用資産残高拡大に向けた戦略
(a) 日本株式
再拡大しているロング・ショート戦略や長期厳選投資戦略への取り組みを強化していく。特に、長期厳選投資戦略に関しては、海外機関投資家からの注目度も高く規模も狙えるため運用資産残高を積極的に拡大させていく方針だ。長期厳選投資などの伝統的戦略で運用資産残高を拡大させていくことに加えて、価値創造投資戦略など、同社が競争優位を持つエンゲージメント戦略によって投資先企業の企業価値を向上させることにも注力していく。伝統的戦略とオルタナティブ戦略の併用により、同社独自のユニークネスに磨きをかけていく方針だ。
(b) OneAsia
中長期的に大きな成長が期待できる市場であると見ており、アジアの社会変化を捉えて大きく成長できる企業にファンドを通じて投資していく。具体的には、インド、インドネシアの市場を主な投資対象とするファンドを新たに設立しており、これらのファンドの規模を拡大させることにより、基幹ファンドとして成長させていく構えだ。また、各拠点のファンドマネージャーへの教育にも引き続き注力し、同社の投資哲学をグローバルレベルで浸透させることにより、高品質な運用体制を構築していく方針だ。
(c) 実物資産
再生可能エネルギーへの投資実績が積み上がるなかで、エネルギー領域に対する知見が蓄積されてきている状況である。こうした知見を生かして、太陽光から段階的にバイオマスや地熱など高い投資リターンが見込まれる発電所へと、開発の重点を移していく方針だ。同時に、グリーン水素やコーポレートPPAなど、固定価格買取制度後を見据えた、安定的な収益を生み出す投資戦略の開発も積極的に進めていく。
(d) プライベート・エクイティ
「知能化技術」「ロボティクス」「水素社会実現に資する技術」「電動化」「新素材」「カーボンニュートラル」「SDGs」などの切り口から国内外のベンチャー企業への投資に引き続き注力していく。厳選した対象への投資により成功報酬を積み上げ、プライベート・エクイティの収益性をさらに高めていく。また、2024年3月期は同社初となるファンドを通じたTOBも完遂した。今後はファンドを通じたTOBによる運用資産残高の拡大や、再上場時の株式売却による利益の積み上げも積極的に模索していく方針だ。
(e) 新たな領域
AIの利用が前提となった新しい時代の成長領域である「エネルギー(水素を含む)」「医療」「フィンテック」を新たな領域とし、一定の自己資金やグループ内リソースの範囲で投資をさらに進める方針だ。「エネルギー」では、水素エネルギーの使い方について実証実験を積み上げ、具体的なビジネスへと結実させていく。また、「スパークス・グリーン蓄電所ファンド」を新たに設立したように、投資対象として蓄電所にも注力していく。水素、蓄電所を中心に新しいエネルギー領域を拡げていく。「医療」に関しては2024年3月期、持分の売却という形で利益を計上した。今後も、このような新領域への投資を実践し続け、ファンドビジネスを強化していく。
(f) 総括
今後は「日本株式」の運用資産残高が順調に推移し、特に「プライベート・エクイティ」及び「実物資産」の運用資産残高が拡大していくと弊社では予想している。これは、既述のとおり、「プライベート・エクイティ」は徹底した企業調査と優れた仮説構築能力により投資家の気付いていない魅力的な投資対象を見つけ出せるためだ。プライベート・エクイティは想定的に収益性が高いことに加えて、魅力的な投資対象を発掘できることから、投資家の資金を順調に集められると弊社は考える。新たに「宇宙フロンティア2号ファンド」も設立しており、運用資産残高のさらなる拡大が期待される。「実物資産」に関しては、SDGsや脱炭素の潮流が強まるなか制度面での後押しもあり、太陽光発電、風力発電、地熱発電、水素エネルギーなどへの社会的ニーズがますます高まっていくことが予想される。運用資産残高の拡大に加えて、地熱やバイオマスなどの高収益案件への投資も積極化していく方針であり、収益性の向上も期待される。
(2) 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
東京証券取引所からの要請に基づき、同社も資本コストと株価を意識した経営を推進し、さらなる企業価値の向上に継続して取り組むことを表明している。PBRをROE、株主資本コスト、期待成長率の3つの要素に分解したうえで、既存戦略の拡大によるROEのさらなる向上、株主資本コストの引き下げ、新しい投資戦略の投入による期待成長率の向上に取り組んでいく。
同社のROE、PBR、PERを過去5期間について見ると、ROEは株主が要求する収益率(同社は株主資本コストを9〜12%と認識)を上回る水準で推移し、PBRは安定して1倍を上回る水準で推移しており、2024年3月期のROEは22.7%、PBRは2.37倍となった。ROEとPBRは既に十分な水準にあり、前記の基本戦略を推し進めることでさらなる向上を目指していく。一方、PERに関しては、11.48倍(2024年3月期)と東京証券取引所プライム市場の平均(18.3倍)を下回っている状況である。同社はPER向上のために、新規領域への挑戦を強化することで将来的な利益成長に対する投資家の期待を高めていくほか、情報開示のさらなる充実や投資家との面談の促進などによって成長戦略や魅力を投資家に訴求していく考えだ。こうしたIR活動のさらなる充実によって、PERが向上することに加えて投資家の同社に対するリスク認識が減少すれば、株主資本コストも低下していくことが期待できる。株主資本コストの引き下げに関しては、そのほかにも、同社の独立系の強みを生かした高いガバナンス体制や安定性と高収益を両立し得るビジネスモデルなどを丁寧に投資家に説明していくことで、投資家が同社に抱いている不確実性を取り除いていく方針だ。
企業価値のさらなる向上に向けて、キャピタル・アロケーションの計画(2025年3月期〜2027年3月期)も公表している。新規事業への投資及び既存戦略へのシード投資に関しては、営業キャッシュ・フローの金額を目安に成長投資を実践していく計画であり、具体的には80億円(投資の回収も含む純額)を想定している(過去実績を元に算出)。営業キャッシュ・フロー内での投資によって財務の健全性を維持しながら投資家の利益成長に対する期待度を高めていく。株主還元に関しては、引き続き安定性・継続性に配慮しつつ実施していく方針だ。配当金総額に自己株式の取得を含めて、総額約100億円を株主還元に割り当てていく(直近の株主還元実績を元に算出)。積極的な成長投資と株主還元の充実を同時追求することで、ROE、PBR、PERをさらに高めていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)《SO》
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