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タキロンCI Research Memo(8):資本効率経営を推進し、成長投資を強化する
*15:08JST タキロンCI Research Memo(8):資本効率経営を推進し、成長投資を強化する
■タキロンシーアイ<4215>の中期経営計画
4. 事業ポートフォリオマネジメントと成長投資
長期目標の連結純利益100億円をターゲットに事業ポートフォリオマネジメントを高度化しており、ROICの目標として2027年3月期に全社平均7%以上の達成を目指している。そのため、事業を35ユニットに分類してROIC水準によりA~Cにカテゴリ分けを行い、カテゴリごとの優先課題をA) 事業規模の維持・拡大、B) 営業利益増大・在庫削減・固定資産効率化、C) 税後営利ベースの赤字脱却と設定。経営企画部が改善ポイントを分析し主管本部が策定したROIC改善計画に対して、事業構造改革会議(重要モニタリング会議とは棲み分けされている)が進捗を管理することとした。最終的に各事業で少なくともWACC(4%)を上回るROICを目指すが、4%を下回るROICの事業ユニットについては重点的に改善策を実行したうえで経営が継続可否を判断、ROICが3期平均でマイナスとなった事業は撤退を原則とする。これにより事業成長の精度を引き上げて、長期的に連結純利益100億円とPBR1倍以上を狙う。一方で、借入を含めた成長投資によってWACC自体を引き下げることも考えているようだ。
結果的に守りとなった前中期経営計画において、積極投資を強みとする同社のキャッシュ・フロー(3年間で324億円)の配分が、配当金62億円、設備投資143億円、社内留保118億円と投資不足になった点は反省材料と言える。このため、攻めに転じる今中期経営計画では、3年間の想定キャッシュ・フロー370億円に対し、配当金70億円、設備投資300億円を予定しており、キャッシュを成長目的の設備投資に重点的に配分する方針である。設備投資のうち成長投資と維持更新投資の比率も、前中期経営計画の61:39から85:15へと大きく変える計画で、これにより成長投資の実額は87億円から255億円へと3倍近く増える計算になる。成長投資の中身として事業構造改革で15億円、増産・増強で80億円、生産合理化で60億円、IT・DXで30億円、研究開発で55億円程度を計画、維持更新枠は45億円となる予定である。さらに、追加の成長投資やM&Aに特別投資枠として400億円を用意しており、最大で700億円の投資枠を見込んでいる。こうした強気の投資計画に対する準備は、体制的には2024年3月期の単年度経営計画の達成で、資金的には営業キャッシュ・フローに加えて借入枠の確保と預け金の回収で万全と言える。なお、設備投資300億円のうち、決定しているものが米国での能力増強投資など既に180億円程度あり、残りの120億円も工場のスマート化など方向性は決まっているようだ。
持続可能な社会への貢献を目指す
5. サステナビリティの取り組み
同社はグループ企業理念に基づき、環境保全やダイバーシティ&インクルージョン、人権、持続可能な調達、ガバナンス、持続的な企業価値向上など、具体的に取り組む内容を明確にしたサステナビリティ基本方針を新たに策定した。マテリアリティについても、社会的要請との整合や事業戦略との連動が必要と判断し、ESGの観点から見直しを実施。気候変動への取り組み、ダイバーシティの推進、人権の尊重、持続可能な調達活動、コーポレート・ガバナンスの充実、事業を通じた社会課題の解決を新たなマテリアリティとして特定した。マテリアリティを各セグメントのアクションプランに落とし込むことで、同社の収益性と企業価値の向上を通じて持続可能な社会に貢献していくことを目指すこととしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《HN》
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