オーバル Research Memo(6):アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーを目指す(1)

2024年7月17日 14:46

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記事提供元:フィスコ

*14:46JST オーバル Research Memo(6):アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーを目指す(1)
■中長期の成長戦略

1. 中長期の業績計画
オーバル<7727>では、2022年3月に「中期経営計画『Imagination 2025』」(2023年3月期~2025年3月期)を発表し、その前提となる中長期経営ビジョンも発表した。長期的には「アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーへ」を目指して、10年後の2032年3月期には売上高200億円、経常利益率10%以上、ROE10.0%の達成を計画する。

2032年3月期の連結売上高200億円達成のために、事業ポートフォリオとしては、重点領域と探索領域に優先的に経営資源を投下する計画だ。具体的には、システム部門は重点領域として成長をけん引し、売上高30億円(2022年3月期実績比150%増)を計画する。サービス部門は重点領域として成長の中核に置き、売上高50億円(同92%増)を計画する。主力事業であるセンサ部門は基盤領域と位置付け、引き続き利益の創出を担い、売上高100億円(同30%増)を計画する。これら既存事業に加えて、新たに新事業による売上高の純増20億円を計画し、探索領域として事業創造を目指している。

中期経営計画「Imagination 2025」は、中長期経営ビジョン達成に向けた最初のステップである「構造改革期(フェーズ1)」との位置付けで、“想像力”と“創造力”で「10年後の経営ビジョン」実現に向けた構造改革を推進する時期と定めている。当初は、中期経営計画最終年度の2025年3月期の業績計画として、売上高130億円、経常利益7.0億円、親会社株主に帰属する当期純利益3.8億円、ROE3.0%を掲げてスタートした。初年度の2023年3月期には、営業の効率化並びに外部委託していた一部のプロセスを自社生産に切り替えて工場稼働率の向上を進めるなど、製造経費の圧縮に努めた。その結果、中期経営計画最終年度の業績計画を2年前倒しで達成したことから、業績計画を見直した。修正計画では売上高140億円(当初計画比10億円増)、経常利益14.0億円(同7.0億円増)、親会社株主に帰属する当期純利益8.8億円(同5.0億円増)、ROE5.7%(同2.7ポイント増)へと大幅な上方修正を行った。修正計画は、2022年3月期実績比では、売上高25.6%増、経常利益198.1%増、親会社株主に帰属する当期純利益207.6%増、ROE3.5ポイント増を見込む非常に意欲的な計画である。それにもかかわらず、さらに2年目の2024年3月期実績は、修正計画のすべての項目で計画値を1年前倒しで達成する好決算であった。2025年3月期は減収減益の業績予想ながら、中期経営計画最終年度の計画値は達成する見込みであり、フェーズ1は順調に推移している。

2. 中期経営計画達成に向けた戦略
中期経営計画の基本戦略として、「成長戦略」と「経営基盤強化戦略」を定めている。成長戦略については、事業環境の変化を的確に捉え、「既存事業の変革」と社会の課題を解決するための「イノベーション」を実現し、企業価値を高める戦略と定義し、(1) センサ事業成長戦略、(2) サービス事業成長戦略、(3) システム事業成長戦略、(4) 新事業創出戦略、で構成されている。また、経営基盤強化戦略については、現在の経営基盤の見直しや改善と、時代の変化に即した新しい組織・運用の導入により、強靭で社会から信頼される経営基盤を構築する戦略と定義し、(1) 製造BCL戦略、(2) 人事財務強化戦略、(3) DX推進戦略、(4) サステナビリティ推進戦略、で構成されている。

成長戦略の具体的な取り組み計画は以下のとおりである。

(1) センサ事業成長戦略
新製品開発として、成長エンジンとなる既存技術の派生センサの開発を目指すとともに、成長市場や潜在ニーズに合致した新製品の企画をする。また、既存製品リニューアルとして、マーケティングにより顧客志向の開発を推進し、付加価値を創造する。さらに、アジア事業拡大として、中国、韓国、台湾、東南アジアを中心に販売チャネルの見直しと再構築を行い、製造・販売・技術一体体制構築による中国市場の拡大を目指す。

(2) サービス事業成長戦略
メンテナンス事業拡大として、サブスクリプションなど事業領域の拡大とともに、受け身のサービスから攻め(提案型)のサービスへの転換を図る。また、校正事業拡大として、JCSS校正については自動車関連市場向け流量計、他社製流量計、海外向け流量計を中心に販促強化を目指す。

(3) システム事業成長戦略
M&Aアライアンスとして、新たな良きパートナーとともに未開拓市場の開拓を行う。また、脱炭素社会への貢献として、脱炭素関連システム(燃料用の水素・アンモニアの供給関連など)への参入を目指すとともに、カーボンニュートラル実現までのエネルギー安全保障に関わる石油・天然ガスの安定供給に貢献する。さらに、アジア事業拡大としては、シンガポールを中心に、東南アジア、中国、韓国、台湾のグループ会社連携強化による販路拡大を行うとともに、中国、韓国、台湾での小規模システム案件の売上拡大を目指す。

(4) 新事業創出戦略
社内自社技術の展開として、自社保有技術(設計・製造)を再点検し、創出できる新事業の検討を図る。また、社内ベンチャー制度を創設し、意欲ある従業員の有益な意見を吸い上げ、将来を見据えて社内で起業家を育成する。

同社は脱炭素化に向けた次世代技術とイノベーションに挑戦している。これらの成長戦略の実績として、特に水素関連事業については、センサ事業では、「120MPa 超高圧形コリオリ流量計」「超音波流量計」「熱式質量流量計」などの豊富なラインナップを取り揃えていることを強みとし、水素サプライチェーンの流量計測と校正までをワンストップショッピングで対応することを目指している。SDGsにも資するこれらの製品について、センサ事業の2024年3月期の水素関連売上は前期比74.4%増と売上高の規模は小さいが大きく伸びている。また同じく脱炭素に寄与するアンモニア関連売上も同15.8%増と水素関連同様に売上高の規模はまだ小さいものの、順調に拡大している。サービス事業では、水素製造時や貯蔵・輸送時なども含めた取り組みが必要となる中で、水素実ガス校正設備「OVAL H2 Labo」(仮称)建設の構想がある。流量計の精度を左右するのが、「校正」と呼ばれる工程である。校正とは、実際に計測する流体(気体や液体)を流量計に流し、基準器との計測値のズレやバラつきをチェックする作業のことだ。この校正が徹底されていないと、正確な計測値を得られなくなってしまうおそれがある。同社では、脱炭素化に本気で取り組むためには、水素計測用流量計のクオリティを今まで以上に向上させなければならないと考え、水素専用の校正設備「OVAL H2 Labo」(仮称)の開設を決めた。このように、同社は、次世代エネルギー市場にリソースを傾注し、サプライチェーンの一翼を担って新たなビジネスチャンスとするとともに、気候変動など持続可能な社会にも貢献する計画である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)《SO》

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