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「孵化する前にひよこを数える」? 未来をあてにする危険性を説く英語の成句
前回まで数回にわたって、豚やロバなど家畜に関することわざや成句を紹介してきたが、今回は鶏だ。
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英語には鶏にまつわる表現がたくさんあるが、今回は未来の出来事を確定事項として考えることの危険性を示す、英語の成句を紹介する。
■Count One's Chickens (Before They Hatch)
「Count one's chickens before they hatch」とは、直訳すれば「孵化する前にひよこを数える」という意味だが、一般的には否定的な文脈で使用される。
卵がすべて無事に孵化するとは限らないため、すべての卵からひよこが孵ると見込むようなことは早計だという文脈で使用される。
この表現は、イソップ童話の『The Milkmaid and Her Pail』に起源を持つとされる。日本語では、『乳しぼりの女』や『乳しぼりの娘』、『乳しぼりの女と手桶』などのタイトルで知られるようだが、その筋は以下の通りだ。
物語は、貧しい牧場の少女が主人公である。彼女は頭の中であれこれ空想しながら、頭上に乗せた手桶いっぱいの牛乳を市場に売りに行く。
彼女はこの牛乳で得たお金で鶏を購入し、その鶏が産む卵から孵るひよこがさらに成長し、多くの鶏になることを期待していた。その鶏たちが産む卵を売って、そのお金で買ったドレスを着て、パーティーに参加することまで夢見ていたのだ。
ところが、素敵なドレスを着ている自分を想像しながら威張って歩いているうちに、誤って手桶を蹴ってしまう。牛乳は地面にこぼれ、彼女の夢は一瞬にして水の泡と消えてしまうのだった。
未来の利益を確定事項として考えることの愚かさを描いた寓話だが、これがおそらく「Count one's chickens before they hatch」という表現につながったのだろう。
記録に残っているところでは、イギリスの詩人、Thomas Howellの『New Sonnets』(1570年)が、この表現を用いた最も古い例だ。
ここで未来の不確かな成功に対する警告として、「Counte not thy Chickens that vnhatched be, Waye wordes as winde, till thou finde certaintee(未孵化の卵の数を数えるな。確かなことを見つけるまで、言葉は風のように扱え)」と記されている。
この成句と類似の警句や表現は、多くの文化で確認できる。日本では「捕らぬ狸の皮算用」ということわざがぴったりだろう。どちらも未来の出来事を前提に行動を起こすことの危険性を教えている。今でも日常生活やビジネスの場で広く用いられている成句である。
・He's planning to buy a new car with the expected promotion, but I'd tell him not to count his chickens before they hatch.
(彼は昇進に期待して新しい車を買う計画をしているが、私なら「孵化する前にひよこを数えるな」と言うだろう)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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