ミロク情報 Research Memo(8):顧客基盤の拡大等により2029年3月期に経常利益120億円を目指す(2)

2024年7月12日 12:28

印刷

記事提供元:フィスコ

*12:28JST ミロク情報 Research Memo(8):顧客基盤の拡大等により2029年3月期に経常利益120億円を目指す(2)
■ミロク情報サービス<9928>の今後の見通し

c) 「統合型DXプラットフォーム戦略」
統合型DXプラットフォーム事業の中核をなす「Hirameki 7」は、既述のとおり中小企業や小規模事業者のDXを推進するための7つのサービスを提供している。累計導入社数は2.6万社を突破するなど順調に拡大中だが、大半は無料プランでの契約となっており、今後これらのユーザーを有料プランに移行させていくことが課題となっている。同社ではこれまでの既存顧客への営業を対象としたマーケティング機能の前後に発生する、新規営業開拓(営業リスト検索、メール配信)や案件管理機能を組み合わせることで、利便性と独自性を提供し有料化プランへ誘導していく戦略だ。また、料金プランも現行のすべての機能が利用できるプライムプラン(月額6,000円(税別)を見直し、より利用しやすい低価格帯の料金プラン(月額800円(税別)~)などを新たに設定する予定である。有料プラン契約のハードルを大幅に引き下げ、契約後に徐々に機能を追加してもらうことでARPUを高めていく戦略を進める方針だ。販売面ではトライベックのデジタルマーケティングだけでなく、同社の全国拠点に在籍する900名超の営業・サポート要員も活用しながら、早期の収益化を実現していく考えだ。2029年3月期のKPIとしては、顧客数で約8万社、ARPUで約2,600円/月とし、売上高25億円、経常利益10億円を目指す。

d) 「クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換」
主力ERP製品の販売形態について、オンプレミスの売切り型からクラウド化を前提としたサブスク型への移行を進める。クラウド・サブスクは顧客にとっては、初期導入コストの軽減や、自社サーバーの構築・運用のための人員を削減しIT人材不足を解消できるほか、常に最新のサービスを受けることが可能となる。一方、同社にとってはサブスク契約が増えることで、外部要因に左右されず安定した売上成長が見込めるほか、リプレースの際の営業工数が削減されるため、営業リソースを新規顧客の開拓に集中投下できること、最新システムを継続的に提供することで、旧バージョン製品のメンテナンスコストを最小化できるなどのメリットがある。また、カスタマーサクセスの取り組みを一段と強化することで、顧客満足度並びに継続率の向上とアップセル・クロスセルを推進し、LTV最大化を目指す。

2029年3月期の目標としては、主力ERP製品のサブスク契約社数で前期比4.7倍増の1.5万社、主力ERP製品のARRで同6.3倍の110億円、ソフト使用料全体ARRで同3.1倍の200億円、サービス収入全体ARRで同1.86倍の310億円を目指している。

e) 「グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進」
同社グループは受託システム開発会社3社とコンサルティング領域2社、フィンテック領域で3社、事業承継支援とCRM領域で各1社の体制となっている。グループ各社はコロナ禍で伸び悩む状況が続いていたが、今後はグループの成長戦略に即した各社の位置付けを明確にし、グループシナジーの発揮と収益性向上を最優先に、グループ再編・強化を実行する方針を示している。

主な子会社の取り組みとして、受託システム開発会社3社についてはグループ開発体制の強化に向け、グループ内製化率の向上による開発ノウハウ及び開発コストの低減につなげていくほか、技術者教育プログラム及び評価基準を共通化し、技術者レベルの向上と技術力の平準化を図っていく。

トライベックについては、統合型DXプラットフォーム事業「Hirameki 7」の収益化を最優先課題として取り組むほか、グループのデジタルマーケティング支援やMJS製品のUI&UX改善を支援し、グループシナジーを創出していく。また、トランストラクチャについては、MJS製品の顧客に対する人事サービスの提供、並びに自社顧客に対するMJS製品のクロスセルの取り組みを推進していくほか、人事系DXサービスの開発や社内業務のDXによる収益体質の改善を図っていく。MJS M&Aパートナーズについては、会計事務所や中小企業の事業承継ニーズを確実に取り込むとともに、社内業務のDXを推進することで収益体質の改善を図っていく。また競争力を強化するため同業者との協業も進めることにしている。

f) 「戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化」
積極的な人材投資により事業成長を加速していくほか、現在開発を進めている社内情報システムの刷新により経営の意思決定の迅速化と最適化、並びに管理業務の生産性向上を実現していく。人材投資に関しては、人事戦略と連動した主要制度の見直しを行う。具体的には従業員のチャレンジを後押しする報酬・評価制度や適性・能力を踏まえた人事制度設計、競争優位性のある報酬制度などへ改定していく。またベースアップや専門職任用者の拡大、キャリアパスの拡充を進めていくことで、エンゲージメントの向上を図る。また、マネジメント力の強化と社員のキャリア支援につながる人材教育制度の拡充や、多様な人材が活躍できる環境・組織風土の醸成、次世代の働き方改革を推進するなどダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを推進していく。

(3) 財務戦略、キャッシュ・アロケーション
キャッシュ・アロケーションの考え方として、同社は5年間累計で創出するキャッシュ400億円超(当期純利益280億円超+減価償却費120億円超+その他(政策保有株式の売却、有利子負債の活用、資産効率の最大化))を、事業投資(新製品開発・機能改良に100億円超、M&A及び事業投資に100億円程度、その他(人材投資、BPR投資他))と株主還元(配当金総額100億円超、資本政策の一環としての自己株式取得)にそれぞれ適切な配分で充当していく方針としている。配当金については年間20億円超となる計算だ。2024年3月期の1株当たり配当金50.0円で配当金総額が約15億円となるため、今後順調に利益成長が続けば増配していくものと予想される。

また、資本効率の向上に関しては2029年3月期のROE目標として18%超の達成を目指す(2024年3月期16.6%)。主にERP事業の成長による収益性向上と、機動的な自己株式取得による資本効率の改善を進めていくことで実現していく考えだ。株主資本も2024年3月期末の260億円から400億円超に拡大する見通しだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《SO》

関連記事