品川リフラ Research Memo(10):長期ビジョン「ビジョン2030」及び第6次中期経営計画を発表(2)

2024年7月8日 14:10

印刷

記事提供元:フィスコ

*14:10JST 品川リフラ Research Memo(10):長期ビジョン「ビジョン2030」及び第6次中期経営計画を発表(2)
■品川リフラクトリーズ<5351>の中長期の成長戦略

3. 第6次中期経営計画の重点方針
第6次中期経営計画においては、セクター戦略の深化、生産基盤の整備、グローバル展開の加速、サステナビリティ経営の推進の4項目を重点方針とする。

(1) セクター戦略の深化
各セクターは、「セクタービジョン」に基づき各セクター戦略を深化する計画である。また、セクター別の売上高・営業利益・EBITDA・ROIC目標値を設定している。ただし、売上高・営業利益・ROICの目標数値には、未公表のM&A、JAは含んでいない。

a) 耐火物セクター
「非鉄鋼業界(非鉄・工業炉等)に向けた販売拡大による国内事業規模の維持」「サステナビリティ課題への技術対応力の強化(新製鉄法への対応他)」「海外向け拡販とM&Aの推進」をセクタービジョンとする。国内市場におけるセクター戦略は、国内粗鋼生産量が漸減の傾向にあるため、非鉄鋼業(非鉄・工業炉等)へ業容を拡大するとともに、サステナビリティへの対応を強化する。業界では耐火物と断熱材の両方の事業を行う事業者が他になく、同社グループ独自の強みである。両製品の技術融合による省エネ性能を向上した製品の開発、使用後耐火物のリサイクル原料化により産業廃棄物と新規原料製造時に発生するCO2発生量の削減、熱ロス低減対策となる炉の設計と築炉技術の開発、交換頻度の少ない装置の提供などを、セクター間の協業により推進する。2023年4月には米国Allied Mineral Products社と国内のアルミニウム業界向け不定形耐火物の独占販売契約を結んだ。同社の競争力のある豊富な製品群を生かして拡販に取り組む。また、国内高炉メーカーも大型電炉、水素還元製鉄などCO2発生量を削減する新しい製鉄法を検討しており、こうした製法に対応した製品のラインナップ拡充、Green Refractoryの浸透を図る。

海外市場におけるセクター戦略は、技術力やグローバル拠点を持つ強みを最大限発揮し、機能性耐火物、モールドパウダーなどの拡販、M&Aによりグループ入りしたSRB社製品の北米への販売などを展開していく。また、M&A・JVによる現地製造、これによる事業ポートフォリオ拡大を目指す。2024年4月にはインドネシアに現地合弁会社SRPを設立し、同年7月より不定形耐火物の製造品目を増やして販売を開始する予定だ。

リサイクル原料を活用したGreen Refractoryについては、まずセメント業界に提案・展開中である。従来、セメント製造の回転式窯であるセメントキルンに使用されるマグネシア・スピネル質れんがは、使用後に廃棄処分されてきた。同社はその使用後れんがをリサイクル原料とするための管理徹底と、リサイクル原料を含めた製品粒度構成の最適化による再活用技術(特許取得済)を確立した。同社の優位性は、自社製品だけでなく他社製品も含めた使用後れんがをリサイクル原料化できることだ。新規に採掘・加工された原料の使用比率を減少させることで、原料製造時に発生するCO2排出量削減に寄与する。繰り返し再原料化を行うことで、原料の安全保証面から製品の安定供給が可能となる。また製品が軽量化される。セメントメーカーの上流Scope3を含めたサプライチェーンにおけるGHG排出量削減に寄与する。今後はセメント業界のみならず、耐火物を使用するすべての業界に向け展開する考えだ。海外では、リサイクル原料化のビジネスをすでに確立している企業もある。

2027年3月期の売上高は1,034億円(2024年3月期比5.1%増)、営業利益は113億円(同41.3%増)、EBITDAは143億円(同34.9%増)、ROICは9.5%(同1.4ポイント上昇)を目標とする。

b) 断熱材セクター
「環境負荷を低減する断熱製品のグローバル供給」「成長市場(半導体製造装置業界等)向け拡販に対応する技術開発力の強化」「積極的なM&Aの推進」をセクタービジョンとする。セクター戦略は、脱炭素、省力化、合理化、IT化等への投資を積極的に展開する。3ヶ年累計で54億円の設備投資を投入し、生産基盤を強化する。次に、今後の成長が期待できる半導体製造装置業界や燃料電池(リチウム、NAS電池)用の部材、断熱性に加えて耐火性も兼ね備えた建築用不燃材などを拡販する。この他、コア事業となる耐火断熱れんが及びセラミックファイバーの製造販売の持続的成長、成長分野での拡販、海外向けの拡販を強化し、年5%の持続的な成長を目指す。

2027年3月期の売上高は220億円(2024年3月期比18.9%増)、営業利益は42億円(同23.5%増)、EBITDAは51億円(同24.4%増)、ROICは11.0%(同0.1ポイント上昇)を目標とする。ROICは、持続的成長に向けた投資を拡大するため横ばいを見込む。

高まる省エネ需要に対応し、超低熱伝導率断熱材(LTCシリーズ)を開発した。LTCシリーズは、従来品より断熱性能が高く、厚みが薄くでき、強度が高く、加工性に優れ、人と環境に優しい。熱ロス低減効果が大きく、省エネへの寄与率が向上し、炉内容積の拡大も可能になる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)《HN》

関連記事