ダイナムジャパンHD Research Memo(5):2024年3月期は2ケタ増収、各利益は2期ぶりの増益(1)

2024年7月4日 18:05

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記事提供元:フィスコ

*18:05JST ダイナムジャパンHD Research Memo(5):2024年3月期は2ケタ増収、各利益は2期ぶりの増益(1)
■2024年3月期決算の状況

1. 2024年3月期の業績概要
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の2024年3月期決算は、営業収入で前期比11.2%増の130,363百万円、営業利益で同32.8%増の8,983百万円、税引前利益で同38.0%増の5,435百万円、当期利益で同88.3%増の3,385百万円となった。営業収入は3期連続の増収、各利益は2期ぶりの増益に転じた。

コロナ禍が収束に向かうなかで、2022年11月より導入が開始されたスマスロが人気化したことで若中年層を中心に客足が戻り、パチンコ事業の営業収入が同8.9%増と好調に推移したことが主因だ。また、航空機リース事業もリース供与中の機体数が前期の6機から10機に増加したことで事業収入が前期比104.6%増となり収益増に貢献した。

コロナ禍前の2020年3月期の業績(営業収入142,483百万円、営業利益21,514百万円)と比べると営業利益の回復が鈍いように見えるが、これは2022年3月期より会計処理の変更によって、購入した遊技機の大半を資産計上し減価償却費で処理(2年定額償却)するようにしたためだ。2020年3月期の機械費は27,753百万円で、2024年3月期は機械費として3,156百万円、減価償却費として35,420百万円を計上した。減価償却費が膨らんでいるのは、2022年1月末に到来した旧規則機の撤廃期限に合わせて該当する遊技機を大量に入れ替えたことや、スマスロを積極的に購入したことが要因で、減価償却費のピークが2024年3月期となったためだ(2025年3月期以降は減少見込み)。遊技機関連費用控除前の営業利益で見ると、2020年3月期の53,569百万円に対して2024年3月期は43,835百万円と8割強の水準まで回復している。

その他収入は前期比1,102百万円減少した。主には前期に計上した店舗立退きに伴う補償金817百万円がなくなったこと、政府からの補助金収入が385百万円減少したことによる。その他費用は364百万円増加した。また、金融収支は同721百万円悪化した。航空機購入資金として金融機関から借入を実施し、有利子負債が前期末比28,157百万円増加したことが主因だ。

なお、2024年3月期末のグループ店舗数は前期末比4店舗増の433店舗となった。7店舗をM&Aで取得し、不採算となっていた3店舗を閉店した。また、期末の連結従業員数はオペレーションの標準化及び効率化に取り組んだ結果、同230名減少の12,492人となった

(1) パチンコ事業
パチンコ事業の事業収入は前期比8.9%増の124,480百万円と3期連続の増収となり、セグメント利益(税引前利益)も同5.1%増の5,259百万円とコロナ禍以降で初めて増益となった。営業収入の内訳を見ると、パチンコが前期比1.5%減の78,767百万円と低迷した一方で、スロットが同33.1%増の45,712百万円と大きく伸長した。スマスロで「北斗の拳」が大ヒットとなるなど人気機種が相次いだことで稼働率が上昇し、また営業政策的にスロットの設置台数を増やしたことが増収要因となった(131店舗で増台を実施)。期末の設置台数を見ると、パチンコが前期末比0.1%減となったのに対して、スロットは同14.0%増となった(合計は店舗数増加により同4.2%増)。店舗形態別事業収入の増減率を見ると、高貸玉店舗が前期比4.4%増の58,466百万円、低貸玉店舗が同13.2%増の66,014百万円となり、低貸玉店舗が好調だった。

増収率に対してセグメント利益の伸び率が低くなっているのは、既述のとおり遊技機関連費用が前期比で6,001百万円増加したことに加えて、大型店舗の大規模リニューアルを10店舗実施したことにより修繕費が同1,044百万円増加したことが主因だ。コロナ禍前の2020年3月期の収益水準と比較すると、事業収入が88%の水準まで回復したのに対して、セグメント利益は20%の水準にとどまっているが、遊技機関連費用控除前利益で見ると、2024年3月期は前期比16.6%増の43,835百万円と2ケタ増益となっており、2020年3月期の水準に対しても82%の水準まで回復した。利益率も2020年3月期の37.7%から2022年3月期は24.4%まで低下したが、2024年3月期は35.2%まで戻している。

収益力の回復については、店舗における業務オペレーションの見直しにより店舗スタッフの最適化と総労働時間の削減を進めてきたこと、並びに外部に発注していた業務の内製化に取り組んできたことが大きい。2020年3月期との比較で主な事業費用項目の対営業収入比率の変化を見ると、店舗人件費が33.3%から30.5%と2.8ポイント低下したほか、清掃費も内製化を進めることで2.7%から2.0%に抑えられた。逆に、水道光熱費は3.9%から5.7%に上昇したが、これは2023年以降の電力料金の高騰が要因だ。ただ、前期比では0.7ポイント低下し、実額ベースでも190百万円減少した。全店舗に導入しているBEMS※を最新システムに更新したことで節電効果が高まったことが主因となっている。

※BEMS(Building Energy Management System)とは、省エネ化も目的に室内環境や、空調・照明・換気等の設備機器の使用状況など、建物内のエネルギーに関するデータを一元的に管理するシステム。


また、1店舗当たりの収益指標を見ると、事業収入は前期比7.9%増の287百万円、遊技機関連費用控除前利益は同15.6%増の101百万円となっており、人件費率を抑制できたことが利益率の改善につながった。なお、1店舗当たりの設置台数は2020年3月期の470台に対して、2024年3月期は493台と増加傾向にある。

グループの中核を成す(株)ダイナムの業績について見ると、営業収入は前期比9.0%増の117,162百万円、営業利益は同148.3%増の3,541百万円、経常利益は同96.1%増の3,582百万円、当期利益は同83.8%増の1,673百万円となった。日本の会計基準となるため微妙な違いはあるが、増減要因は連結ベースとほぼ同様である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《SO》

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