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フレアス Research Memo(1):2024年3月期は大幅な増収増益
*14:01JST フレアス Research Memo(1):2024年3月期は大幅な増収増益
■要約
フレアス<7062>は、訪問マッサージ、看護小規模多機能型居宅介護、ホスピスなどを展開し高齢者等の療養から看取りまでを支援する総合企業である。経営ビジョンを「全国津々浦々に一人でも多くの方に速やかにフレアスのサービスを提供し、日本の在宅事業を明るくする」としており、医療依存度の高い主に高齢者を対象にした“在宅”にこだわった事業展開に特徴がある。指揮を執るのは、創業者で自らも訪問マッサージの技術を持つ澤登 拓(さわのぼり たく)社長である。2000年に山梨県で訪問マッサージ事業を創業し、属人化したサービスが主流の業界でサービスの標準化・均一化に成功し、現在では全国No.1の店舗網(413店、フランチャイズ(FC)店含む)まで拡大している。2019年には東証マザーズ市場に上場し、同年に訪問マッサージのFC展開を本格的に開始した。2022年には看多機事業、2023年にはホスピス事業をそれぞれ開始し、2025年3月期を初年度とする新中期経営計画では、これらの施設系介護サービス事業への先行投資によって次世代の柱として育てる戦略を遂行している。2024年3月末の従業員数は834名、433拠点で展開している。2022年の東証区分見直しにおいてはグロース市場に移行した。
1. 事業内容と強み
主力のマッサージ直営事業では、主に医療保険制度の適用となるマッサージサービスを提供する。2024年3月期のセグメント売上高は3,525百万円(全社売上高の61.7%)、セグメント利益は999百万円(全社営業利益の104.1%)を占めており、収益貢献が大きい。マッサージFC事業は、全国328ヶ所のFC加盟店に対して、開業支援、開業後の事業運営上の課題等に関する助言、施術研修などを提供する。全社売上高の15.6%、全社営業利益の23.4%である。施設系介護サービス事業は、看多機及びホスピスの運営を行う。全社売上高の15.4%存在感を増しているが、まだ黒字化に至っていない。
同社は一般的に属人性が強く個人営業が主体のマッサージ業界で異例の成長を遂げてきた。それを支える本質的な強みは、属人的なサービススキルを標準化する力である。マッサージ事業の実例では、施術者は年1回、約150項目のスキルチェックを実施し、施術や接遇のレベルの均一化を徹底している。また、タブレット端末を全員に貸与し、Eラーニングで約600本のオリジナル動画を、いつでも、どこでも、自主的に学習できる環境を整えている。これらの強みは、マッサージFC事業の運営や施設系介護サービス事業などの多店舗展開にも如何なく発揮されている。
2. 業績動向
2024年3月期は、売上高が前期比24.6%増の5,710百万円、営業利益が同647.5%増の110百万円、経常利益が同78.6%増の126百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同84.6%増の58百万円となり、大幅な増収増益となった。売上高に関しては、主力3事業ともに増収となった。最も売上を伸ばしたのは施設系介護サービス事業であり、看多機が3拠点増、ホスピスは2拠点増と拡大した。マッサージ直営事業では新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で閉鎖していた介護施設の再開が進んだのに加え、従来よりも高頻度なサービス提供を提案するなどの営業努力もあり堅調だった。マッサージFC事業では、同事業がテレビ番組で紹介されたことによる認知度の向上や法人への営業活動の強化などによりFC新規加盟数が増加したのに加え、加盟店の施術件数増加によりロイヤリティ収入等が増加した。増収に伴って売上総利益は同20.4%増となったのに対し、販管費は同16.2%増と相対的に伸びを抑制し、営業利益は大幅増益となった。セグメント利益では、マッサージ直営事業が同29.7%増の999百万円と稼ぎ頭となり、戦略投資を行う施設系介護サービス事業(セグメント損失285百万円)をカバーする構図であり、事業ポートフォリオが十分機能していると言えるだろう。
2025年3月期の業績目標は、売上高で8,062百万円(前期比41.2%増)、営業利益で200百万円(同81.2%増)、経常利益で79百万円(同37.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益で35百万円(同38.5%増)としており、大幅な増収及び営業利益の増益を見込んでいる。マッサージ直営事業においては、売上高で同10.6%増の3,900百万円を見込む。マッサージFC事業においては、売上高は同31.9%増の1,173百万円を見込む。施設系介護サービス事業では、期中に看多機4拠点、ホスピス7拠点の開設を予定しており、拠点数は11拠点から22拠点に倍増。売上高で同190.6%増の2,553百万円を見込む。利益面に関しては、マッサージ2事業を磨き上げることによって稼ぎ、施設系介護サービス事業の成長投資をカバーする構図が継続する。弊社では、新規開業が多くなる施設系介護サービス事業が計画どおり立ち上がれば、計画は達成できると考えている。
3. 成長戦略
同社は、2025年3月期を初年度とし、2027年3月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定。2027年3月期の売上高16,678百万円、営業利益2,001百万円を目指す。成長のドライバーとなるのが施設系介護サービス事業であり、売上高の3年間平均成長率128.6%と毎年倍増以上のペースで成長する計画である。マッサージ2事業もこれまでどおり着実に成長するものの、施設系介護サービス事業と比較するとペースはゆるやかである。結果として、2027年3月期の売上構成比では、施設系介護サービス事業が62.9%となる予想であり、“マッサージの会社”から“総合的に介護サービスを提供する会社”にシフトすることになる。利益面では、中期経営計画2年目の2026年3月期に施設系介護サービス事業が黒字化して利益貢献を開始し、3年目の2027年3月期にはセグメント利益で1,762百万円と、稼ぎ頭になる計画である。
4. 株主還元策
同社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題の1つと位置付け、業績の推移、財務状況及び投資資金の必要性等を勘案し、内部留保とのバランスを図りながら配当の実施を検討している。実績としては、2022年3月期より配当(年10.57円)を実施している。2024年3月期の配当金は10.57円、配当性向は42.7%となった。弊社では、新中期経営計画が順調に進捗すれば、利益の成長に伴い大きな増配が期待できると考えている。現在は先行投資フェーズのため、中長期的な視点での投資スタンスが適切だろう。
■Key Points
・主力のマッサージ直営事業は堅調。第2の柱にマッサージFC事業が成長、第3の柱に施設系介護サービス事業に参入
・2024年3月期は、大幅増収(前期比24.6%増)及び増益
・2025年3月期は売上高で前期比41.2%増の80億円超を見込む
・ホスピス事業を積極拡大し、2027年3月期の売上高166億円、営業利益20億円を目指す新中期経営計画を発表
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《HN》
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