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いい生活 Research Memo(3):不動産事業向けに、SaaSのサブスクリプションとソリューションを提供(1)
*14:33JST いい生活 Research Memo(3):不動産事業向けに、SaaSのサブスクリプションとソリューションを提供(1)
■事業内容
1. 事業内容
いい生活<3796>は、不動産事業者向けに不動産業務・取引を円滑に進め、業務効率・生産性を向上させるクラウドサービスを開発し、月額利用料・継続課金ベース(サブスクリプション)で利用可能なSaaSとして提供している。同社の事業はクラウドソリューション事業の単一セグメントとなっているが、業務の目的に応じて特徴のあるサービスラインナップを提供している。これらはSaaSとして提供する「サブスクリプション」サービスと、DX導入を支援する「ソリューション」サービスに分けられる。
同社は、不動産ビジネスを加速させるITツールを自社で企画・開発・マーケティングし、クラウド上で生産性を向上させるシステムとして顧客である不動産会社に提供する。顧客である不動産会社は、賃貸管理・賃貸仲介・売買の各業務に活用し、エンドユーザーである不動産オーナー・物件の売買希望者、賃貸入居希望者に不動産サービスの提供を行う。同社は、顧客からITツールのサービス利用料を月額利用料(サブスクリプション)として取得する。
(1) サブスクリプション
不動産業務に必要となる業務支援システムをクラウドでSaaSとして提供するサービスであり、同社グループの主力サービスとなっている。主要な顧客である不動産会社からの月額利用料が主な売上となる。顧客がこのシステムを使う利点は、システムの自動アップデートによりシステムが常時進化することで、法改正に対応した最新サービスをいつでも使え、自社でハードウェア設備などを保有する必要がなく、初期投資を抑えられる点、またすでに多数の不動産会社に利用されており、システムの利用を通じて業務の標準化が進められる点にある。同社は新規サービスの開発に積極的であり、事業の拡大とともに顧客の課題・要望を取り入れつつ、1つ1つのサービスを開発・リリースしてきた経緯があり、サービス内容が多岐にわたっている。
同社の不動産業界向けのアプリケーションは、賃貸管理から売買に至るまで広範囲に渡るサービスを提供しており、大きく「業務クラウドシリーズ」と「不動産プラットフォーム」に区分することが出来る。業務クラウドシリーズは、賃貸管理クラウド、賃貸クラウド、売買クラウドという3つの主要サービスで構成されている。「賃貸管理クラウド」は賃貸管理業務の基幹システムとして機能し、「賃貸クラウド」は空室の募集から契約までのプロセスをサポートする一方で、顧客管理と契約書作成も可能だ。「売買クラウド」は物件情報の広告配信と契約書の作成機能を持ち、複数のデバイスとポータルサイトに対応している。一方、不動産プラットフォームでは、「いい生活 Square」「いい生活 Home」「いい生活 Owner」というサービスが展開されている。「いい生活 Square」は業者間での不動産情報の流通を効率化し、リアルタイムでのデータ更新により仲介業者の作業負担を軽減している。「いい生活 Home」と「いい生活 Owner」は、それぞれ入居者とオーナー・管理会社向けのコミュニケーションツールで、スマートフォンアプリを通じて効率的な収支報告や決済機能の提供が行われている。これらのサービス群は、不動産業界のデジタル化を推進し、ユーザー間の効率的な業務遂行を支援することで、業界内での競争力を高め、顧客満足度の向上を図っている。
(2) ソリューション
同社グループは、SaaSの初期設定に加え、SaaSを導入・運用するにあたり、有償で導入・運用支援サービスを提供している。また一部の顧客向けにSaaSの周辺ツールなどを受託開発するサービスを提供している。不動産会社の規模にもよるが、顧客側で十分なIT人材を確保しきれないケースも多く、運用まで手厚くサポートすることでサブスクリプションの継続と解約率の低下につながっている。このサービスは、SaaSのサブスクリプションとセットで提供することで、SaaSの新規申し込みに連動して増加する傾向にある。
同社は、サブスクリプションのSaaSでは対応できない個別のニーズについては、カスタム型のオペレーション・コンサルティング「BPaaS(Business Process as a service)」による「ソリューションサービス」を提供する。SaaSとBPaaSの組み合わせにより、顧客に対して不動産業務の支援だけではなく、より理想的なDXもトータルでサポートする。
(3) サービスの導入事例
2024年3月期における同社のサービス導入事例は、多岐にわたる業界大手および地域の有力企業への導入が進展したことを示している。まず、丸紅リアルエステートマネジメント(株)では、物件の空室情報や入居申込、契約および顧客情報の管理業務をリアルタイムで統合管理するために同社SaaSを導入した。このシステムにより、業務効率化とデータベースの一元管理が実現している。また、NTTアーバンバリューサポート(株)においては、法改正への迅速な対応が求められるなか、システムのアップデートが迅速に反映される点を評価された。NTTアーバンバリューサポートは、住宅管理戸数約16,700戸、オフィス・商業管理面積約300万m2の実績を誇り、同社SaaSの導入によりPM業務のスムーズな遂行をサポートしている。(株)ステージプランナーは、(株)リロパートナーズの100%子会社であり、一都三県で広範な不動産事業を展開している。ステージプランナーは、複数のサービスを組み合わせて賃貸管理を一元管理するために同社SaaSを導入した。加えて、サンセイランディック<3277>では、不動産権利調整に特化した唯一の東証上場企業として、物件・顧客・契約の情報管理の効率化と法改正対応、運用改善提案が評価され、同社のシステムを採用した。大学生協市場では、早稲田大学生活協同組合や慶應義塾生活協同組合が同社SaaSを導入し、新入生や在校生向けの物件情報をリアルタイムで更新し、スマホ対応を強化した。これにより、Z世代やα世代のニーズに応え、DXを推進している。
さらに、地域密着型の多店舗展開を行う有力不動産会社にも導入が進んだ。大阪・兵庫エリアで21店舗を展開する(株)タカラレンタックスグループホールディングスや、栃木県北・県央で9拠点を持つ(株)三和住宅、京都府内に11店舗を構えるウインズリンク(株)などが挙げられる。これらの企業では、物件の空室確認や来店予約、物件・契約情報の一元管理、リアルタイムな物件情報の更新を実現し、業務効率化を図っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)《SI》
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