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ユニリタ Research Memo(6):新たに3ヶ年の中期経営計画を公表(1)
*14:46JST ユニリタ Research Memo(6):新たに3ヶ年の中期経営計画を公表(1)
■新中期経営計画の方向性
1. 前中期経営計画の振り返り
ユニリタ<3800>は、これまで3ヶ年の中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)を推進してきた。基本方針である「共感をカタチにし、ユニークを創造するITサービスカンパニーへ」の実現に向け、1) サービス提供型事業の創出、2) カテゴリ別戦略によるクラウドサービス事業の拡大、3) 新たな事業セグメントに対応したグループ機能の再編、4) 企業価値向上に向けた経営基盤の強化の4つの重点戦略に取り組み、事業会社としての経済的価値と社会課題解決による社会的価値の双方の実現を目指してきた。
新型コロナウイルス感染症の拡大の長期化などに伴い、今後の成長ドライバーと位置付けている「クラウドサービス」の一部(事業推進クラウド事業、ソーシャルクラウド事業)に進捗の遅れが生じたものの、2022年5月に公表した修正計画(財務計画)に対しては、売上高、営業利益、ROEのすべてで目標値をクリアすることができた。
一方、4つの重点戦略については一定の成果をあげることができたものの、新たな課題も見えてきた。各重点戦略に対する成果及び課題認識のポイントは、以下のとおりである。
1) サービス提供型事業の創出
既存顧客のマイグレーション(脱メインフレーム)を踏まえたサブスク型サービスの提供を開始し、クラウドシフト・クラウドリフトに着実に対応したほか、サービスシフト戦略の主力サービスである「まるっと帳票クラウドサービス」が大きく伸びた。また、業務フローを自動化するサービス「bindit」などにも手応えを得ており、同社が重視するストック売上は着実に積み上がってきた。ただ、当初想定に比べて販売件数の伸びには物足りなさがあり、同社自身の評価は「△」となっている。今後はグループ一体となった総合対応力と顧客接点を活かした変革を進め、差別化を図っていく方針である。
2) カテゴリ別戦略によるクラウドサービス事業の拡大
IT活用クラウドは企業のDX推進ニーズを背景に堅調に推移したほか、事業推進クラウド・ソーシャルクラウドも新たな顧客獲得に注力し、ビジネスモデルの確立に一定の形が見えてきた。ただ、事業拡大や収益化のスピードが想定を下回っており、同社自身の評価は「△」となっている。今後は各クラウドカテゴリーのスケールアップに向け、IT活用は事業プロセスの変革、事業推進は協業パートナーの獲得、ソーシャルは共創型事業モデルの確立をさらに進めていく。
3) 新たな事業セグメントに対応したグループ機能の再編
グループ協働体制が着実に強化され、プロフェッショナルセグメントが大きく伸長したことなどから、同社自身の評価は「〇」となっている。今後はさらにグループ総合力の引き上げ、他社との差別化を図ることで高収益モデルへの変革を目指す。
4) 企業価値向上に向けた経営基盤の強化
CSV経営の実現に向け、働きがいの醸成・業務変革が大きく進展したほか、グループ共通の理念を明確化し、浸透・発信する土台を構築したことから、同社自身の評価は「〇」となっている。今後も人的資本の強化や業務変革の加速など、経営基盤の強化をさらに進める。
2. 新中期経営計画の方向性
2024年5月に公表した新中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)では、「Re.Connect 2026」※という基本方針の下、1) サービス提供型事業の拡大、2) 新たな価値提供モデルの確立、3) 事業プロセスの変革の3つの事業戦略をさらに進化させていく。また、グループ理念を軸とした持続的な経営と価値創造の実現に向け、人的資本投資の加速を含む、サステナビリティ基盤の強化にも取り組む考えだ。
※様々なステークホルダーとの接点やつながり方を抜本的に見直し「再度、より良い形でつながり直す」という意味が込められている。
(1) 3つの事業戦略のポイント
1) サービス提供型事業の拡大
引き続き、クラウド成長領域への投資の拡大や顧客の最適なモダナイゼーションの実現、製品・サービスの一部効率化と新規領域への参入検討などを進めていく。
2) 新たな価値提供モデルの確立
前中期経営計画でブラッシュアップした「サービスマネジメント」及び「データマネジメント」をコアコンピタンスに再定義したうえで、グループ横断、エコシステムによる顧客提供価値の高度化、社会課題事業への継続的投資とアライアンス強化などに取り組む。
3) 事業プロセスの変革
サービスシフトを支える品質マネジメントの強化や、プロセス標準化による実装、運用体制の構築、並びに顧客起点での全社的カスタマーサクセス推進体制の確立を目指していく。
(2) 財務目標
最終年度(2027年3月期)の目標として、売上高140億円(3年間の平均成長率5.3%)、営業利益14.5億円(同12.4%)、ROE 8.8%(2024年3月期比+1.7pt)を掲げるとともに、投資計画(研究開発費、設備投資等)は累計24億円(前中期経営計画では累計19.6億円)を見込んでいる。また、利益成長に伴う増配にも意欲的であり、2027年3月期の年間配当は1株当たり75円(2024年3月期比+7円)を予想している。なお、計画には入っていないものの、M&Aも検討していく方針であり、データマネジメント人材の獲得やサービスラインの強化につながるような対象先を候補に考えているようだ。
事業別の売上高計画を見ると、「プロダクトサービス」はメインフレームの縮小と新規成長サービスによるストック売上の拡大がほぼ均衡し横ばいで推移する一方、成長エンジンと位置付けている「クラウドサービス」の各カテゴリは大きく伸びる想定である。また、「プロフェッショナルサービス」についても、引き続きコンサルティングを起点とした高収益モデルへのシフトを進めていく。損益面でも、クラウドへの投資を継続しながらも収益性を重視した計画となっており、特に「クラウドサービス」における利益成長と「プロフェッショナルサービス」の収益性向上が営業利益率やROEの改善に寄与する想定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)《HN》
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