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三機工業 Research Memo(3):主要な事業セグメントは3つで、特に産業空調に強み
*13:23JST 三機工業 Research Memo(3):主要な事業セグメントは3つで、特に産業空調に強み
■事業概要
1. 事業セグメントの概要
三機工業<1961>の主要事業は、建築設備事業・プラント設備事業・不動産事業の3つのセグメントに分けられる。同社は主に各種設備の設計及び施工管理を行っている。受注形態は施主から直接受注する場合とゼネコン経由の間接受注があるが、比率的にはほぼ半々となっている。
受注金額は案件次第であり、数百万円から数十億円と幅が広い。工期(受注から売上まで)も数週間から長いものは数年に及ぶ。利益率も案件ごとに異なるが、労務費や資材コスト、工程管理等の影響により、売上時の利益率が当初の計画から変動する場合もある。
(1) 建築設備事業
建築設備事業は、オフィスビル・学校・病院・ショッピングセンター・工場・研究施設などの設備の企画・設計・施工・保守・改修などを行う。同部門で扱う内容は多岐にわたっており、さらに細かく以下の営業種目(サブセグメント)に分かれている。
a) ビル空調衛生
オフィスビルや学校・病院・デパート・ホテル・倉庫などの一般建築物や施設向けの空調設備、給排水・衛生設備、地域冷暖房施設、さらに厨房設備、防災設備などを提供する。
b) 産業空調
工場・研究施設向け産業空調設備全般、特に同社が強みを有している半導体業界や医薬・食品業界工場向けのクリーンルーム設備や化学メーカー、医療機器メーカー向けなどの特殊な空調設備及び付帯設備、さらに自動車メーカー向けの環境制御装置などを提供する。歴史的背景もあり、同社が特に強い分野である。
c) 電気
電気設備、情報・通信関連設備、電気土木などを提供する。
d) ファシリティシステム
金融機関等の事務所やディーリングルームの構築、移転に伴うプロジェクトマネジメントサービスやコンサルティングサービスの提供、大型ビルの中央監視・自動制御システム、IPソリューション、ネットワークソリューション、BCPソリューションなどを提供する。
(2) プラント設備事業
プラント設備は、さらに機械システムと環境システムの2つのサブセグメントに分けられる。
a) 機械システム
工場や自動倉庫向けに各種搬送機器(コンベヤ、仕分け機器など)や搬送システム、いわゆる「マテハンシステム」などを提供する。需要は民間企業が中心で、設備投資動向に左右される。
b) 環境システム
水処理施設(上下水処理設備、産業排水処理設備、汚泥処理設備、汚泥焼却設備など)、廃棄物処理施設(ごみ焼却施設、ごみ埋立汚水処理施設)などを提供する。主な顧客は地方自治体等である。
(3) 不動産事業
工場跡地などの遊休地を利用して、不動産賃貸業務と建物管理業務を行っている。
2. 特色と強み、競合
(1) 幅広い事業領域とワンストップでの問題解決
国内には、同社と同様の建築設備を提供する企業は無数にある。そのような業界のなかで、同社の強みはビル空調衛生、産業空調、電気、ファシリティシステム、ビル制御システム、搬送、水処理など幅広い事業領域を持っていることである。多くの設備やソリューションを、企画・設計から施工・保守メンテナンス・改修・建替まで建物のライフサイクルに応じて一括で提供することが可能であり、顧客はワンストップでの問題解決や発注が可能となる。また幅広い事業を横断的に融合した「総合エンジニアリング」と「ライフサイクルエンジニアリング」によって、最適で付加価値の高いシステムを提供できることが特色であり、同社の強みとなっている。
(2) トップクラスの技術力と優良な顧客基盤
戦前から培われた高い技術力は同社の強みであり、国内トップクラスの水準と言える。磨かれた技術力は幅広い分野に及ぶ。また、長い歴史のなかで積み重ねてきた実績が信頼につながっており、この信頼関係に基づく豊富で優良な顧客基盤も同社の強みだろう。戦前の実績は言うに及ばず、戦後の高度成長期の東京オリンピックも含めた数多くの実績が「あべのハルカス」や「東京ミッドタウン日比谷」などの大型プロジェクトの受注につながったとも言える。
3. 主な競合企業
競合する企業は正確に言うと事業領域ごとに異なる。大手総合建築設備領域の主な競合企業は、大手である高砂熱学工業<1969>、新菱冷熱工業(株)、ダイダン<1980>、大気社<1979>などである。これらの大手各社と比較した場合の同社の強みは、事業領域が幅広いことと、特に産業空調(クリーンルーム等の工場系空調)に強いことだろう。
4. 受注高推移と経済環境
業績を左右するうえで最も重要なのは受注高である。毎年の受注高は同社の営業努力に加えて市場全体、つまりマクロ経済の影響が大きいと思われる。同社の主たる事業は建築設備であるため、マクロ経済指標の「民間非住宅建設投資」と対比すると同社の受注高は、同じような推移が見られる。そのため同社の受注高と民間非住宅建設投資は、かなり連動性が高いと言えそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)《SI》
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