いちご Research Memo(1):保有ホテルの稼働が好調に推移するなど、ストック収益で過去最高を達成

2024年6月17日 13:01

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記事提供元:フィスコ

*13:01JST いちご Research Memo(1):保有ホテルの稼働が好調に推移するなど、ストック収益で過去最高を達成
■要約

いちご<2337>は、オフィス、商業施設、ホテル、レジデンスなど幅広いタイプの不動産を対象とし、不動産価値向上ノウハウを活用して投資・運用を行う心築(しんちく)を強みとしている。また同社は、不動産価値向上技術・ノウハウを軸にオフィス、ホテル、再生可能エネルギー発電施設の3つの投資法人を運用・管理するユニークな企業グループである。同社はすべての事業において社会貢献を目指し、心築事業における環境負荷低減やクリーンエネルギーの創出など本業を通じた貢献に加え、Jリーグのトップパートナーとして地域活性に参画するほか、「RE100」や「国連グローバル・コンパクト」に加盟するなど多面的な活動を通じて、サステナブルな社会の実現に力を注いでいる。

1. 2024年2月期通期の業績動向
2024年2月期通期は、売上高が前期比21.5%増の82,747百万円、営業利益が同3.7%増の12,960百万円、ALL-IN営業利益が同25.4%増の21,194百万円と大幅な増益を達成した。全社の好業績を牽引した心築事業では、売上総利益で23,805百万円(前期比37.7%増、ALL-IN)となった。好調なホテルの稼働に加え、全アセットタイプで賃料が伸長し、ストック収益で過去最高を達成した。フロー収益においても、堅調な市場を背景にマルチアセット(商業施設・ホテルなど)及びいちごオーナーズ(レジデンスなど)における売却を成功させた。仕入れは、ホテルやレジデンスを中心に約700億円の不動産を取得し、将来収益の源泉を確保した。アセットマネジメント事業は、前期発生したいちごオフィスリートによる物件売却に伴うフィーが剥落したこと等により減収減益となったが、ベース運用フィーが伸長した。クリーンエネルギー事業は、竣工した発電所の売電収入が寄与して増収となったが、一時的な設備のメンテナンスコストの発生により減益となった。自己資本比率は28.5%だが、鑑定評価額をベースとする不動産の含み益を考慮し、同社に帰属しないリスクを控除した自己資本比率では43.6%とより高い数値になっており、またストック収益の積み上げが進み、ストック収益が固定費の2倍以上をカバーする収益構造である点も考慮すると、十分な自己資本比率を維持しており、財務状況では極めて高い安全性を維持している。

2. 2025年2月期の業績予想
2025年2月期通期の業績予想は、営業利益で前期比23.5%増の16,000百万円、ALL-IN営業利益で同13.2%増の24,000百万円とキャッシュ創出を拡大する計画である。アセットマネジメント事業では、セキュリティ・トークンを活用した新たな投資商品「いちご・レジデンス・トークン」による運用資産残高(AUM)の拡大、賃料収入とホテルオペレーター収益を軸としたいちごホテルの継続的な収益成長が見込まれる。クリーンエネルギー事業では、前期末に稼働開始したいちごえびの末永ECO発電所が通期で利益貢献する。このように全セグメントにおいて、強い成長が見込まれる期となるだろう。心築事業では、ストック・フローの両面で収益が増加する予想だ。ストック収益では、ホテル売上高の増加が期待できるのに加え、新規取得した物件も収益貢献し過去最高を更新する見込みだ。フロー収益では、「いちご・レジデンス・トークン」の組成に伴う売却などにより、運用資産残高(AUM)拡大を加速する計画である。弊社では好調なホテルやレジデンスに加え、同社が保有する中規模オフィスや商業施設は安定した需要があり、売買市場も良好であると考えている。前期に仕入れが好調だったことからストック収益の積み増しも確実性が高い。フロー収益に関しても、グループのリートに加え、セキュリティ・トークンという販路が確立し、多様な出口が選択できるようになっている。これらの要因から、ALL-IN各利益ベースでの予実のブレは少ないと言えるだろう。

3. 中長期の成長戦略
同社では2030年2月期に向けて長期VISION「いちご2030」を推進しており、順調に進捗している。外部環境や進捗状況も変化しており2025年2月期にKPI(重要業績評価指標)の新設・強化による一部刷新を行った。新設した項目は、「キャッシュROE」、「ストック収益固定費カバー率」、「いちごのクライメート・ポジティブ」、「RE100」、「CDPリーダーシップレベル」であり、株主還元策のDOE(株主資本配当率)の目標は3%以上から4%以上に強化された。キャッシュ創出力を高め、安定したストック収益の積み上げと資本効率のさらなる向上を目指しながら、サステナブルな社会の構築を実現する強い意志を感じる変更となっている。

同社では、近年セキュリティ・トークンを活用した不動産取引に力を入れている。セキュリティ・トークンはブロックチェーンにて権利が管理されることでデータの改ざんが極めて困難な、安全性に優れた投資商品である。小口から投資できるため個人投資家も投資機会が得られる。同社では2022年11月の第1号を皮切りに、2023年11月の第3号案件まで、累計で200億円を超えるレジデンスを売却してきた。セキュリティ・トークン市場は将来的に成長力のある市場であり、2032年には、2.6兆円の市場規模(運用残高)に達すると見られている。2025年2月期も300億円の運用資産積み増しを目指し、市場創造期からトップランナーとしてプレゼンスを拡大したい考えだ。

4. 株主還元策
同社は株主還元策として配当を実施しており、配当の基本方針としては、日本で導入例が少ない「累進的配当政策」を導入し、原則として「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」を明確な方針とする。過去12期連続で累進的配当政策を維持しており安定性に定評がある。また、3期連続の増配を予定している。前期実績である2023年2月期の配当金は年間8.00円(前期比1.00円増配)、配当性向は39.1%、2024年2月期の配当金は年間9.00円(前期比1.00円増配)、配当性向は33.5%となった。さらに、2025年2月期の配当金は年間10.00円(同1.00円増配)、業績予想ベースの配当性向を31.2%としている。

また、同社は、長期VISION「いちご2030」において「機動的な自社株買い」を掲げており、この方針に沿って、2018年2月期から2024年2月期まで7期連続で毎年15億円から60億円の自社株買いを実施してきた。強い財務基盤を持つ同社だけに、株式の市場価格によっては、今期以降も自社株購入による株主価値の向上が期待できる。

■Key Points
・2024年2月期通期は、ALL-IN営業利益が25.4%増の211億円。保有ホテルの稼働が好調に推移するなどストック収益で過去最高
・2025年2月期は、ALL-IN営業利益ベースで前期比13.2%増の240億円を予想。全セグメントで利益成長見込む
・長期VISION「いちご2030」の達成に向けKPIを刷新、進捗は順調。セキュリティ・トークンによる投資機会の提供で先行
・2024年2月期は年9.00円配当(前期比1.00円増)配当性向33.5%を実施。株主還元策として自社株買いを7期連続で継続

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《SI》

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