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温暖化により「台風の強さ」がどのように増すか、高精度に予測 名大
大気海洋相互作用による温暖か気候下の台風発達緩和メカニズム(画像: 名古屋大学の発表資料より)[写真拡大]
名古屋大学は10日、精度の高い気候モデルを使ったシミュレーション実験の結果、温暖化に伴って台風の強度は増していくものの、大型で移動速度が速い台風では温暖化の影響は比較的緩和されることが予測されると発表した。
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研究グループでは、今回用いた精度が高い気候モデルを使えば、温暖化した気候下における台風の強度について予測精度が向上するでなく、現在における台風の強度についても予測精度の向上に貢献できるとしている。
■温暖化によって台風の強度は増していく
温暖化の進展に伴って台風の強度は増していくと考えられている。温暖化によって台風のエネルギー源である海水面の温度が上昇するためだ。
ただ、温暖化の進展に伴って台風の強度が一方的に増していくというわけではない。台風が大型化すると、風などによって海水面が掻き回されることで、海水面の温度が大きく低下するためだ。
しかしこれまでの気候変動による台風の強度変化を予測する研究は、水平解像度が粗いモデルを使って実施されてきた。そのため精度の高い予測は難しかった。
そこで研究グループは、領域大気海洋結合モデル「CReSS-NHOES」を使い、水平解像度1~2kmという高解像度において、上記2つの要素を盛り込み、シミュレーションを実施。これまでにない高い精度で、温暖化による台風の強度の変化を予測することに成功した。
■温暖化による台風の強度変化
研究グループは、令和元年東日本台風(2019年)など日本に影響を与えた4つの非常に強い台風を、温暖化した気候条件下に置きその成長をシミュレーションした。検討した温暖化した気候条件は、産業革命以前、現在、2度上昇、4度上昇の4つだ。
その結果、温暖化によって台風の強度は増していくことがわかった。ただその増し方は、大型で移動速度が遅い台風では小さく、小型で移動速度が速い台風では大きかった。
これは、台風が大型化すると海面が激しく掻き回される結果、海水面の温度が大きく低下すると共に、移動速度が遅いと、その海水面の温度低下の影響をより強く受けるためだという。
研究グループでは、今回グループが用いた高解像度の領域大気海洋結合モデル「CReSS-NHOES」を使うことで、温暖化による台風強度の変化予測精度を向上させるだけでなく、現在の台風強度の予測精度についても向上が期待できるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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