日大アメフト部が廃部に向かっているのは、ガバナンスの機能不全そのものだ!

2023年12月12日 15:58

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 日本大学のアメフト部員が大麻を吸引していた問題が、いつの間にかアメフト部廃部問題に発展している。

 組織は最高意思決定機関が最終判断を下して方針を決める。前段で、事務レベルや実施部門で調査や意見の取りまとめをすることはあっても、最終判断をする上での材料に過ぎない筈だ。

 廃部方針を決定したのは、競技スポーツ運営委員会である。日大の組織の中では競技スポーツ全般の指導・調整を行う末端の機関だ。これほど社会の耳目を集めたアメフト部の廃部を、副学長が所管する一運営委員会が決定し、日大の方針として公表されたことに強い違和感を抱く。

 4日に開催された記者会見でも、林真理子理事長は「理事会の継続審議事項」だとして、決定には至っていないとの認識を示していた。もし理事会で廃部が決定事項に格上げされるとしたら、理事会自体が「飾り物」である証明である。

 ところが、日大アメフト部は6日夜に部員や保護者を集めて、廃部方針についての説明会を実施した。大学側からは、沢田康広副学長、益子俊志スポーツ科学部長、中村敏英アメフト部監督とコーチが出席している。

 日大が組織としての判断を下していない廃部問題が、一運営委員会の決定を元に既成事実化が進んでいる。これがガバナンスの機能不全でなくてなんであろうか。

 林理事長は田中英壽前理事長が一連の不祥事を受けて退任したのち、理事長選考委員会の推薦を受けて2022年7月1日に理事長に就任している。作家として活動を続けてきた同氏の適性を疑問視する声はあったが、火中の栗を拾う人がなかなか現れなかった当時の状況を憂えて、日大の卒業生として止むに止まれぬ思いを吐露していたことは記憶に新しい。

 当時から田中前理事長の残党が改革を妨害すると懸念する声はあったが、そうした問題がなかったとしても、組織はトップが変わったぐらいでは変わらない。

 林理事長は理事会の構成メンバーにほとんど知識のない状態でトップについた。対面した時にあからさまに反抗するような理事はいないだろうから、公的な接触の中で人物を見極めることは不可能だ。今回の騒動は各理事の人物本来の姿に触れる好機となった筈だ。林理事長は今回の事態を契機として日大の改革に努めて欲しい。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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