建設技術研究所、道路政策の質の向上に資する技術研究開発(令和3年度採択)において優秀技術開発賞を受賞

2023年11月15日 14:28

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 建設技術研究所<9621>(東証プライム)および国立大学法人東海国立大学機構(名古屋大学、機構長:松尾清一)、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST、理事長:小安重夫)、計測検査株式会社(代表取締役:坂本敏弘)、株式会社フォトンラボ(代表取締役:木暮繁)からなる共同研究チームは、道路政策の質の向上に資する技術研究開発(令和3年度採択)において、名古屋大学の中村光教授を研究代表者として、「レーザー打音検査装置を用いた橋梁・トンネル等の道路構造物のうき・剥離の定量的データ化による診断技術の技術研究開発」を進めてきた。

 同研究開発は、「第48回新道路技術会議」(令和5年8月23日開催)において審議された事後評価の結果、研究目的は達成され十分な研究成果があったことが評価され、優秀技術開発賞を受賞した。

1.研究目的  橋梁、トンネル等の道路構造物へレーザー打音検査装置の適用範囲を拡大し、広く社会に普及させていくためには、4つの課題がある。1つ目は、レーザー打音検査装置の操作性向上や準備、作業時間の短縮化といった高速化である【テーマ1】。2つ目は、橋梁等の構造物に適用できるようにより離れた位置から検出が可能となるレーザー照射技術である【テーマ2】。3つ目は、うき・剥離に対する検出精度の向上である【テーマ4】。4つ目は、診断に必要となる定量的な評価方法の構築である【テーマ4】。本研究は、この4点の課題を解決することで、レーザー打音検査装置の社会実装を大きく前進させることを目的とした。

2.研究内容  各テーマの研究内容は、以下のとおりである。

【テーマ1】「レーザー打音検査装置による計測方法の高速化技術の開発」  計測時間は、人力打音検査時間の約4.2倍掛かっていたが、障害物やひび割れのAI抽出手法結果と組み合わせることで、自動化による計測準備時間短縮、照射範囲適正化による計測範囲縮小を実現する制御機能を開発し、約2.2倍まで短縮した。

【テーマ2】「レーザー打音検査装置の橋梁構造物点検に向けた改良」  可搬型長距離レーザー打音検査装置を開発した。橋梁実構造物の欠陥検知試験では、距離30m、入射角45度の条件下で、点検技術者がレベルⅡと判定した欠陥の検知に成功している。

【テーマ3】「レーザー打音検査装置への複数の状態の異なるうき・剥離の検出能力付与」  短期間に状態の異なるうき・剥離を模した供試体を作成する方法を考案し、多数の損傷供試体の試験から、レベルⅠ~Ⅲのうき・剥離の検出が可能なことを確認した。また、道路橋、道路トンネルの実構造物で点検技術者がレベルⅡと判定した範囲の検知に成功した。

【テーマ4】「継続的な観察や措置に役立つ記録様式と診断支援となる閾値や評価方法の構築」  レベルⅡとレベルⅢを分離する新しい評価方法として、減衰波形の減衰過程に着目した「正規化波形エネルギー積算値曲線」を用いた「減衰グラフ評価法」を立案した。

3.研究成果 【テーマ1】障害物のAI抽出開発は、障害物画像をベースにした約5万個の深層学習により、MIMM取得画像の障害物を90%以上の抽出率で自動抽出を可能とした。ひび割れ密集範囲のAI抽出開発は、AI抽出したひび割れ密集範囲の密度や交差数から、剥離につながる危険度スコア計算の処理ロジックを構築した。トンネル構造物実証実験では、ひび割れ密集目地部への打音範囲絞り込みと適切な打音ピッチ設定に成功した。座標指示による計測準備時間短縮、照射範囲の適正化による計測範囲縮小により、計測時間の高速化を実現した。

【テーマ2】レーザー打音のロングレンジ化の技術開発を行い、供試体を用いた性能評価において、距離40m・入射角60度で深さ10mmの欠陥、距離40m・入射角45度で深さ30mmの欠陥の検知に成功した。また、可搬型長距離レーザー打音検査装置を開発し、橋梁実構造物の欠陥検知試験では、距離30m・入射角45度の条件下で、点検技術者がレベルⅡと判定した欠陥の検知に成功した。

【テーマ3】状態の異なるうき・剥離を模した供試体を静的破砕剤により内部膨張圧を与えて短期に作成する方法を立案し、28供試体に対する供試体実験を行った。①レーザー打音、②点検技術者による打音検査、③AI打音チェッカー、④鋼球落下試験、⑤叩き落とし、⑥切断を行い、レベルⅠ~Ⅲのうき・剥離の検出が可能なことを確認した。また、道路橋、道路トンネルの実構造物でも適用性を確認した。

【テーマ4】レベルⅡとレベルⅢを分離する新しい評価方法として、減衰波形の減衰過程に着目した「減衰グラフ評価法」を立案した。また、レーザー打音の高速化により計測点間隔が広くなることも想定し、面的な損傷が点で計測されることに対する面的評価法も合わせて立案した。これにより、計測結果をコンタ表示することを可能としている。レベルⅡとⅢの検知範囲は、人力打音検査結果、供試体切断面と整合することを確認した。また、道路トンネルの実構造物でも適用した結果、従来の人力打音でうきと診断された範囲の検出に成功している。

4.今後の展望  レーザー打音検査装置の社会普及が進めば、うき・剥離の状態をコンクリート表面の振動値という定量的なデータで記録することが可能となる。これにより、定量的データに基づく診断支援、劣化進行度の評価、正確な位置情報の取得を実現することができ、維持管理サイクルの高度化が期待できる。点検支援技術として広く社会普及するためには、さらなる高速化を進め、従来点検コストと同等以下までコストを圧縮することが必要と考えている。

5.道路政策の質の向上への寄与  レーザー打音検査装置は、本研究の成果を用いて点検現場におけるレーザー照査範囲の設定から計測値による診断までの一連のプロセスを自動化することができれば、経験の浅い点検技術者でも容易に操作が可能となる。これにより、将来の点検技術者不足に対応することが期待される。

※本研究は、国土交通省道路局が設置する新道路技術会議の技術研究開発制度による、国土交通省中部地方整備局の委託研究「レーザー打音検査装置を用いた橋梁・トンネル等の道路構造物のうき・剥離の定量的データ化による診断技術の技術研究開発」で行われた。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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