【ビッグモーター不正問題】辞任した兼重父子は、何食わぬ顔で経営に復帰できるのか? (上)

2023年8月10日 17:59

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 7月25日の記者会見で、ビッグモーターの兼重宏行社長(当時)と息子の兼重宏一副社長(当時)の辞任が発表された。経営からは手を引くと言いながら、実質上100%の株式を所有したまま雲隠れした2人に対する反発は根強い。果たして2人は首をすくめて現在の混乱状況をやり過ごし、落ち着いた頃復活して再び経営に携わることが可能なのか?

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 ビッグモーターのホームページを見てみると、業務内容として、1つ目は国産車、外国車の中古車・新車販売及び車両買取業務、2つ目は車検・一般整備及び板金塗装業務、3つ目は損害保険代理店及び自動車関連業務となっている。

 今回話題になっているビッグモーターの不正問題は、顧客から修理の依頼を受けたクルマに対して、より高額な修理が必要となるように修理関係者等が車両にダメージを加えた上、嵩上げした修理代金を損害保険会社に請求したということだ。2つ目の整備板金塗装業務と3つ目の損害代理店業務にまたがった不正が行われていたことになる。

 国土交通省は7月28日、整備工場を持つ135の事業所(立入検査対象の34事業所を含む)全てに対して、道路運送車両法の違反事例の有無を調査するようにビッグモーターに対して指示を出すとともに、全国24都道府県の34事業所に対して一斉の立入検査を行った。

 道路運送車両法の施行規則(62条)には、「依頼されない点検・整備を不当に行って料金を請求しないこと」との規定がある。

 ビッグモーターでは「なかった傷や凹みをクルマに加えて利益目標の14万円を超える工賃を請求していた」例が、数多く伝えられている。法律違反どころか器物損壊行為を働いた上、自動車保険の支払いを請求するという詐欺行為まで伝えられた。

 立入検査などの結果、報道されてきたことが事実だったと裏付けられれば、行政処分の対象になることは言うまでもない。斉藤国土交通大臣も28日の会見で、「事実関係を確認して・・・厳正に対処する」と発言している。

 処分は事業所毎に行われるから、立入検査対象の34事業所全てが「クロ」だったとすると、整備工場を持つ事業所の1/4が営業停止や認証取り消し処分を受ける可能性がある。現在までの状況を踏まえた心証は限りなき「クロ」であり、注目すべきなのは処分の軽重と不正の広がりにあると言っていい。

 重大な疑惑のもう1つの柱には「保険金詐欺問題」がある。ビッグモーターと代理店契約を締結していた損害保険会社は相次いで、契約解除の方向に進んでいる。現契約者に不利にならないように慎重に進めているようだが、いずれ全7社の代理店契約は解除される可能性がある。

 代理店契約が解除されると、ビッグモーターには保険契約に係る手数料収入がなくなる。損保会社とビッグモーターの代理店契約では、ビッグモーターが圧倒的に優位な立場を占めていた。22年、代理店である東京海上日動、損害保険ジャパン、三井住友海上が損害保険の水増し問題を追求していた際、ビッグモーターの手前味噌な説明(「間違いや不慣れだった」と結論していた)を真っ先に受け入れて、一時は自賠責保険の総取りを始めたのは損保ジャパンだった。

 流石にバツの悪さを感じた損保ジャパンが他の損害保険との協調に復帰したが、ビッグモーターの言いなりで動いていた印象すら受けた事例だ。(下に続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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