金融庁、千葉銀や武蔵野銀に業務改善命令へ

2023年6月22日 15:53

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 金融庁が、千葉銀行と武蔵野銀行、千葉銀傘下のちばぎん証券に対して、業務改善命令を出すとの観測が強まってきた。武蔵野銀行は16年に千葉銀行と「千葉・武蔵野アライアンス」という包括提携を結び、その後徐々に関係を深めてきたから、統合には至っていないものの非常に深い関係にある。

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 その千葉銀行と武蔵野銀行では、自行の顧客をちばぎん証券に紹介して、ちばぎん証券はその顧客に仕組債を販売していた。往々にして、一般の人は証券会社に対する警戒心が強く、銀行に対しては何故か信頼感が高いから、顧客を丸め込む主役を銀行が演じていたことになる。

 金融庁は22年5月の「資産運用業高度化プログレスレポート」の中で、「株式に代えてEB債を購入する意義はほとんどない」と、明確に切り捨てた。EB債とは「他社株転換可能債」との別名を持ち、指定株価に連動して償還条件が変化し、一定水準まで株価が上昇するか下落すると強制的に償還される一種の仕組債だ。

 金融庁がこんな直截的な表現をEB債に向けたのには、19年4月に売り出された個人向けEB債856本の運用成績に対する検査結果を得たからだ。

 金融庁は調査結果をまとめて、「リスクの大きさにリターンが釣り合わない」とEB債に対する評価を下した。中には3カ月で元本の8割を溶かした例もあったから、金融庁が厳しい判断に至ったのは当然だった。だが金融機関の中には、EB債に付随する高額な手数料に目が眩んで、方針転換ができない銀行も多かった。

 銀行に証券の窓販が解禁された時にも、似たような事例は多かった。当時、銀行員にとって証券取引は縁遠いものだった。おまけに取り扱う商品も幅広く、商品内容も複雑で速やかに理解するのは困難だった。

 だから本部から示達される手数料目標を、手取り早く効率に稼ぐ商品を顧客に勧めるのは、ある意味自然だった。ただし商品説明を徹底することは決められていたから、顧客は理解不足の銀行員による回りくどい説明に長時間付き合わされた。

 最後には、「自己責任ですから」と駄目押しの上で購入させられた。「商品内容を理解して、自己責任で購入した」というアリバイ作りに付き合わされたようなものだ。

 リスクを顧客に押し付けて銀行が利益を掠め取ろうとした事例は、シェアハウス問題で主役を演じたスルガ銀行が悪名高いが、銀行員が善良な紳士振って顧客をないがしろにしてきた事例は、数多い。「オレオレ詐欺」と銀行を同一視することはどうかと思うが、自浄能力を失った銀行が存在する以上、利用者は「自分を守るのは自分だけ」という鉄則を噛み締めるべきだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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