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日販、都市型植物工場「City Farming」を本格展開へ 店舗スペース活用
日販グループホールディングスと日本出版販売は28日、植物工場を生活空間に提供する「City Farming」を本格展開すると発表した。展開に先立ち、2022年8月から日清紡と共に実証実験を行ってきた。実証実験を通じて、収益性や導入ニーズを確認できたため、本格的な事業化に踏み切るという。
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City Farmingは、いちごを収穫できる小型の植物工場を本屋などの生活空間に提供するサービス。日販グループが事業開発を担い、日清紡が開発した完全制御型植物工場を用いている。
光源や温度、養液循環などを自動で制御するため、農業の専門知識が無くても導入可能。コンパクトな作りで、100Vのコンセントがあれば設置できる。気温や天候に左右されずに、無農薬で1年中栽培可能で、毎日15~20個程のいちごを収穫できるという。
実証実験では、日販グループが手がける3施設に導入。第1弾は、飲食サービスも展開する入場料制の本屋「文喫 六本木」で、栽培したいちごをトッピングするスイーツを提供した。約1カ月間導入した結果、スイーツメニューの売上高が前年比の4倍に増加したという。
その他、おはぎメインの和菓子屋「ohagi3南町田店」でも栽培いちごを使用したオリジナル商品を提供し、前年比1.2倍を達成。22年10月から導入中の「TSUTAYA BOOKSTORE下北沢」では、京王電鉄と連携してCity Farmingのいちごを活用した地産地消の商品開発プロジェクトも展開している。今後も継続的にコラボレーターを募り、下北沢産いちごを使った取り組みを広げていくという。
そうした実証実験の結果を受け、カフェやスーパーマーケットなど、25の法人が導入検討中で、その内5社はすでに導入準備を進めている段階という(23年4月28日時点)。また検証を行ったohagi3とは専門店も開始。23年3月、愛知県名古屋市にCity Farmingのいちごメインに据えたスイーツ専門店「ichigo3尼ケ坂店」をオープンしている。
日販の祖業は、出版社と書店をつないで本を届ける出版取次の事業だ。出版不況や電子書籍の台頭などもあり、特に2000年代に入ってからは事業領域の拡大を図ってきた。現在は経営理念に「人と文化のつながりを大切にして、すべての人の心に豊かさを届ける」を掲げている。
その中で、文化コンテンツを用いた事業企画・場所提供を行う、プレイス創造事業を展開。文喫や、本に囲まれて過ごせる複合施設「箱根本箱」を手がけてきた。
City Farmingもその流れの1つだ。都市空間に持続的な植物工場を提供することで、新たなコミュニティの創造を目指しているという。日販グループは今後、全国47都道府県への展開を目指し、同事業への投資を拡大していく方針だ。(記事:三部朗・記事一覧を見る)
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