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クレディ・スイス買収でも燻り続けるAT1債問題
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●UBSがクレディ・スイスを買収
スイス金融大手のUBSが、経営危機に陥っている同国金融大手のクレディ・スイスの買収に関して、30億スイスフラン(約4300億円)で合意したとロイター通信などが報じている。
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買収報道を受けて、20日のNYダウは382ドル高で反発した。シリコンバレー銀行(SVB)破綻に端を発した金融危機への警戒が和らいだ。
しかし、クレディ・スイスを巡ってはAT1債という火種が残っており、予断を許さない状況は続くのだろうか?
●AT1債問題
今回の買収劇に当たり、スイスの規制当局は株式に転換可能なハイブリッド債であるAT1債が無価値になると述べており、混乱が広がっている。
AT1債は銀行の財務状況が一定水準を下回れば、株式に転換できるという特徴があり、銀行の債務を減少させる役割がある。
クレディ・スイスは約2兆円のAT1債を発行している。
規制当局の発言には投資家が憤慨しており、他の銀行のAT1債を投げ売りしているとみられ、法的措置に発展する恐れもある。
●AT1債問題はどこまで波及するか
米国の大手運用会社もクレディ・スイスのAT1債を多く保有しており、無価値になると損失は計り知れない。サブプライムローン問題のような悪夢も想定される。
クレディ・スイスに留まらず、他の欧州の銀行が発行するAT1債も、同様のケースが起きれば無価値にされるのではないのかという信用不安が、最も恐れることである。
このスイス規制当局の判断は契約条項に基づく妥当な判断、という声もあれば、契約書を読み違えているという批判的な声もあり、評価が分かれる。
今回のAT1債無価値問題で、欧州も米国も銀行株が大幅に売られた。
リーマンショック後、金融規制強化によりリスク資産の保有を減らし、債券などの安全資産を増やす傾向になっている。
しかし、SVBにしても、AT1債問題にしても、皮肉にもリーマン後の規制強化の欠点が露呈した形となった。
盤石と思われていた金融システムに対する投資家の不安は、今後も続きそうで、クレディ・スイスだけの問題ではなさそうだ。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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