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楽天グループが4期連続の最終赤字で、迫る正念場?
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楽天モバイルを起点とする、楽天グループの変調がさらに拡大している。
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14日、楽天グループは22年12月期の国際会計基準による連結決算を発表した。売上高(売上収益)は対前期比15%増えて1兆9278億円を計上し、新型コロナによる巣ごもり需要が好調に推移したことを感じさせ、楽天カードや楽天銀行も順調に推移した。
反面、設備投資に追われる携帯電話事業の赤字が4928億円(対前期比17%増)と、過去最高額に達したため、楽天グループ全体では3638億円の赤字。その規模は前期計上した赤字(1947億円)の2倍近くにも増加した。
苦境にある楽天グループが復活するためには、携帯電話事業の収益化が欠かせず、収益化するためには契約者数の増加が必須である。そして日本の高品質な通信環境に慣れ親しんだユーザーを振り向かせるためには、穴のない基地局ネットワークを構築することが求められている。
最後発のスマホ事業者として楽天モバイルは、基地局ネットワークを5万局まで拡大し、22年10月末には人口カバー率を98%まで積み上げた。先行するキャリア並みにネットワークを99%の人口カバー率まで上げるためには、あと1%引き上げる必要がある。だが人口密度の低い広大な面積が残っているため、効率が悪く、目標を達成するためにはあと1万局の設置が必要となる計算だ。
楽天グループは基地局ネットワーク等の構築に累計で1兆円を超える投資を行ない、その多くは社債や借入金で賄われてきた。投資が一巡したとは言えない現在、懸念されるのは24年から膨らむ社債の償還と設備投資の両立だろう。
現状でも、24年には約3800億円、25年には約2500億円の償還があるから、ネットワークの構築に必須の設備投資を行ないながら、社債の償還や借換がスムーズに進められるかどうかが焦点だ。
金利の上昇も無視できない。10日に発行した個人向け債は2年の期間で、利率は3.3%だ。22年6月の個人向け債は3年で0.72%だったから、期間が短くなって金利は4倍超になった。総裁の交代が近い日銀が金融政策をどうするかと注目されているが、極限まで進んだ緩和が揺り戻されるのは時間の問題だから、今後金利負担が増加することは間違いない。
ユーザーが納得できる基地局のネットワークを構築し、社債の償還と借換を並行して進めて初めて、契約者の拡大とそれに伴う売上の増加が見えて来る楽天グループは、まさに正念場を迎えたと言える。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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