NTT東や群馬大ら、ロボットとAIにより医療インシデント削減する実証実験

2023年1月23日 16:55

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自立走行型ロボットのイメージ(画像:NTT東日本の発表資料より)

自立走行型ロボットのイメージ(画像:NTT東日本の発表資料より)[写真拡大]

  • 実証実験の概要(画像:NTT東日本の発表資料より)

 NTT東日本は20日、群馬大学医学部付属病院において、自立走行型ロボットとAIを用い、医療インシデントの削減を目指す実証実験を開始すると発表した。実験には群馬大学のほか、医療関連事業を手がけるユヤマ、PHCと、ITソリューション事業を展開するウルシステムズが参画。NTT東日本が全体統括・推進を担う。実証実験にあたっては、ローカル5Gによる通信環境を構築する。

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 実証実験開始の背景には、医療現場の人手不足がある。新型コロナウイルスの感染拡大や少子高齢化に伴い、医療現場の人手不足が深刻化。さらに医療の高度化と複雑化に伴って、確認漏れや情報伝達不足による医療インシデントのリスクが増しているという。

 医療インシデントとは、医療や看護で実害は無かったものの、患者に影響を与えかねない事象を指す。実施されていたら被害が予測されたものや、実施されたが結果的に患者に被害が出なかったものなどが該当する。

 例えば、渡すはずだった薬や薬剤情報提供書を渡し忘れた、薬剤の量を間違えた、レントゲン写真へ記入する患者名を間違えたなどがある。特に薬剤絡みの事例が多く、医療インシデント全体の約4割を占めているという。

 今回の実証実験では、薬剤自動認識装置を搭載したロボットとAIを活用し、薬剤関連の確認業務を行う。実施項目は大きく3点で、患者が持参してきた薬の確認、処方薬の配布が正しいかといった配薬確認と、処方された薬を間違いなく飲もうとしているか・飲んだかの服薬確認だ。

 実証ではいずれも、医療従事者がロボットのトレイに薬剤(服薬確認は薬の飲み殻も含む)を投入。ロボットが上下2つのカメラで撮影した複数枚の画像をリアルタイムにサーバへ伝送し、サーバに実装されたAIが薬剤解析を行うという流れを描いている。

 AIの解析結果は、患者持参薬の確認では院内薬剤師にデータ連携し、システム登録データとして活用する予定。配薬確認では、医師の処方と異なる薬が配布されることを防ぐ可視化データとして用いる。服薬確認では、誤った薬剤の服用を防ぐために服薬前の確認に、また服薬後データはナースステーションへデータを送り、飲んだ薬に誤りがあった場合の早期対応に活用する予定だ。

 AIによる薬剤鑑別とロボットの活用により、医療インシデントの削減や医療従事者の稼働削減を目指すという。

 実験のベースとなる通信には、ローカル5Gの分散アンテナ技術を採用する。病院は、人や特殊機械など遮蔽物が多く、電波干渉の可能性が高い場所だ。そのため、多数のアンテナをユーザーに近い場所に分散配置して、カバー範囲の広域化と電波干渉の影響低減を図る。

 実証実験は、1月30日から3月17日まで実施予定。院内での実験のほか、地域の薬局との薬剤情報や患者情報の連携なども予定しており、薬剤トレーサビリティの仕組み構築を目指すという。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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