キャッシュレスの進展で、意気上がるコード決済とクレカ、黄昏れる銀行 (下)

2022年11月4日 07:37

印刷

 リアル店舗で破竹の勢いを見せて、23年からは給与振り込みの対象となり得るコード決済勢の、その先を進むのはクレジットカード業者だ。キャッシュレス推進協議会の調べによると、21年のキャッシュレス決済全体の中で、クレジットカードは85.3%という圧倒的なシェアを誇り、コード決済の5.6%を大きく凌駕している。

【前回は】キャッシュレスの進展で、意気上がるコード決済とクレカ 黄昏れる銀行 (上)

 ちなみに、20年と21年を比較するとコード決済による支払額は66.3%の伸びを見せ、クレジットカードは8.8%増加した。本格スタートから間もないコード決済が驚異的な伸び率を示しているが、すでに成熟レベルにあると見られるクレジットカードが1割近い伸びを見せているのも特筆的だ。

 新型コロナ禍によりリアル店舗でのショッピングが制限されたり、抵抗を感じる人達に物品購入の場所を提供したのが、アマゾンや楽天市場のようなEC(イーコマース)だ。宅配業者がシステムを充実させたタイミングにも恵まれて、配達日時が計算できる宅配の取扱は大幅な増加となった。

 ECを利用する際の代表的な決済方法として、利便性を備えたクレジットカードには大きなアドバンテージがある。EC業者が利用可能なクレジットカードを特定することはないが、アマゾンには三井住友カードが発行するアマゾンカードがあり、楽天市場には言わずと知れた楽天カードがある。

 特に楽天は、楽天経済圏と称されるグループ全体で囲い込みを図るべく、巧みな仕掛けを張り巡らせている。楽天市場でショッピングをして、楽天カードで支払って、楽天ポイントや楽天ペイをリアル店舗で使ってもらえれば、ビジネスチャンスは何倍にも広がる。

 クレジットカードを利用するには加盟店であることが必須だが、コード決済にも同様の制約はある。例えば、PayPayは22年5月からアマゾンで利用することが可能になったが、楽天ペイをアマゾンで使うことは(現在は)できない。クレジットカードとコード決済に共通しているのは、加盟店でなければ使えないという点で、現金との最大の違いがここにある。

 PayPayが「あと払い」の導入で1歩クレジットカード機能に近づいたと思ったら、JCBカードは9月5日、23年中にコード決済に参入することを発表した。相互に競合する領域に踏み込んで、待ったなしの殴り合いが始まりそうな気配だが、資金の動きが最大のテーマなのに、銀行の存在感が全く感じられない。銀行の黄昏を感じても無理はないだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事