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キャッシュレスの進展で、意気上がるコード決済とクレカ 黄昏れる銀行 (上)
厚生労働省が進めてきた労働基準法の省令改正案が、10月26日の労働政策審議会(厚労大臣の諮問機関)で了承された。労働者の了解を得ることが前提になるが、企業は労働者に対してデジタルマネーで給与を支払えるようになる。
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11月に省令が公布され、2023年4月に施行される。その後、資金移動業者が厚労相の指定を受ける手続きを踏んで、実際に給与がデジタルマネーで支払われるのは夏近くになると見込まれている。
現在、スマホ決済を利用する場合には、主に銀行口座から○○ペイにチャージをする必要があった。銀行口座に振り込まれた給与のほとんどを、◯○ペイにチャージしてきた人は少ないだろうから、個人の財布では銀行口座が主役で〇〇ペイは脇役という存在だった。
来夏以降は本人が勤務先に手続きをすることで、全額でも指定金額でも〇〇ペイに直接給与を振込することが可能になる。これによって日本のキャッシュレス環境は、新たなステージに向かうだろう。
”あっ”という間にメインプレーヤーに躍り出たPayPayは、22年8月に5000万人の登録ユーザーを抱えている。コード決済に縁のない年少者と高齢者を除けば、ざっと国民の2人に1人がPayPayのユーザーという計算になるから凄い。
従来、現金は経済活動を維持・促進させる血液と準(なぞら)えられてきたから、その血液を社会に供給する銀行は、民間の営利企業でありながらワンランク上の存在であり得た。社会が必要なのはサービスや商品であって、現金はその取引を円滑に進めるための手段に過ぎないから、一種の過大評価を受けていたことになる。
そんな背景があったので、高度成長時代の銀行には、飛び抜けた存在感があった。その後ジリ貧に陥った銀行は、復権のきっかけを掴めずにもがき続け、今後は体力のないところから順に淘汰される雲行きだ。
反対に、コード決済業者の勢いは止まらない。加盟店の店頭には創意を凝らしたステッカーなどのPOPが掲示され、さながら利用者争奪戦の様相を見せている。常に利用を誘導するために、様々な特典をアピールしてシェア拡大に努めてきた〇〇ペイにとって、ユーザーから給与振込先に指定されるかどうかが、生き残りへの分岐点になる筈だ。(続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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