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銀行の常識が、社会の非常識 ジリ貧の銀行に足りないもの (下)
三井住友銀行で規定されている両替の手数料は501〜1000枚で1540円、1001枚を超える場合には500枚ごとに770円が加算されるから、枚数が多くても手数料の呪縛から逃れることはできない。おまけに、他の銀行もほぼ同一の取り扱いなので、日本国内では501枚の1円を両替しようとすることは、およそ1000円ほどの負債を意味することになる。
【前回は】銀行の常識が、社会の非常識 ジリ貧の銀行に足りないもの (上)
財務省のHPには「・・・通貨の流通状況を適切に把握し、・・・通貨制度の適切な運用を行っています」と通貨に対する姿勢を宣言しているが、財務省が銀行の両替手数料に対して苦言を呈したとは、寡聞にして聞かない。
こんな矛盾が発生しているのは、1円〜5000円という金額の開きに頓着しないで、枚数だけで手数料を設定したことに尽きる。最大5000倍もの価値の開きがあるにも関わらずも、一括(ひとくく)りにしているところに、配慮の不足が明確に物語られている。
ちなみに1円硬貨の場合は、1万枚持ち込んでも10万枚持ち込んでも、両替するために持ち込んだ金額以上の手数料を請求される。国家が発行する通貨を冒涜している、と感じる人が現れても不思議では無い。
手数料の例として、現在好調なQRコード決済の手数料は、負担に感じている加盟店も少なくないと言われるが、概ね2〜3%程度だと伝わる。クレジットカードの手数料も同程度で運用されていることから、両替手数料の料率を金額合計の2.5%と仮定する。
1円硬貨だけの場合、手数料は1000枚で25円となり、5000円札が1000枚で12万5000円になる(5000円札を1000枚両替する人は殆どいないだろうが・・・)。負担感は人によって様々だから一概に決めつけることはできないが、現在よりも納得感が増すことは間違いないし、何よりも両替に持ち込んだ合計額を超える手数料を請求されるという不条理は解消される。
そもそも銀行にとって手数料は、金融業に付随するサービスという商品の対価を意味しているはずだが、銀行間にほとんど格差がないのが不自然だ。よもやカルテルや談合ということはないだろうが、注目されずに済む横並びを選択しているのだとするなら、バブル崩壊を教訓として放棄された筈の「護送船団方式」の居心地の良さを、銀行が自ら認めているようなものだろう。
ジリ貧を続ける銀行の、原因の一端が垣間見えるようだ。
※「護送船団方式」とは、戦時中に船足の遅い貨物船を守るために護衛船も速度を落として航行すること。日本特有の「行政指導」という形で行われたが、本来市場から撤退すべき企業まで保護したために、「業界全体に切磋琢磨する空気が生まれにくくなった」という評価もある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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