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新型コロナ、現実的な対応望む声上がり始めて・・やっと、前向きに進めるか?
感染の急拡大がマスコミで喧伝されながら、重症化が減少してきたとされる新型コロナウイルス(新型コロナ)の、取扱いを見直す動きが広がって来た。
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7月29日、全国知事会は新型コロナに関わる感染症法上の扱いを見直すことと、早期に目に見えるロードマップを作成することが必要だとする緊急提言をまとめた。
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では、感染症に位置付けられていない感染症(新型コロナのように新しく発見されたもの)に対して、感染症法上の措置が必要と認められる場合に、都度指定感染症として対応する措置を政令で指定できる。更に、その後に得られた知見等により、政令を改正してその措置を変更することも出来る、と規定されている。臨機応変に対応できるということだ。
新型コロナが中国で発見された2020年の初期には、食用に供された野生動物から感染した(未だに真相は不明だが)と伝えられた薄気味悪さや、世界各国で多数の死亡例が報告されたことなどを背景にして、厳格な対応を要する2類相当の感染症に指定された。
ちなみに感染症の1類に指定されているエボラ出血熱は、スーダン型で50%、ザイール型で90%の致死率と言われるから、2類相当に指定された新型コロナに対する当時の危機感は相当なものがあった。感染拡大初期に、新型コロナが原因で亡くなった患者が無孔の遺体袋に収容されて、遺族が直接別れを告げることが出来ないという扱いを受けていたのは、こうした認識が背景にある。
第7波の感染拡大が過去最高の患者を生み出す中で、「2類相当」の体制を維持することが不可能で、過重な態勢であることも明らかだ。医療現場では「無症状者が多い」という実態を背景にして、入院対象者の選別や隔離期間の短縮などという対応で乗り切りを図っているが、既に運用で辻褄を合わせる時期ではない。
全国知事会の提言は、「ウイルスの変異に対応して、分類も柔軟に変更すべきだ」ということだ。例えば新型コロナの2類相当という現在の指定を5類に変更すると、「ただの風邪」程度の扱いになり個々人が自分の症状に合わせて、自分に合った対応をすることが出来る。
2日には、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長を含む専門家の有志が、2段階に分けた新型コロナへの対応を提言した。緊急性のある「ステップ1」と、法改正に踏み込んだ「ステップ2」に分かれているが、「ステップ2」に到達した段階では、(1)一般の外来で対応し(2)医療機関が自ら入院調整を行い(3)感染者の把握には新たな手法を導入して(4)重症患者は公費で負担するもののそれ以外の患者は保険診療とする、等に対応が変化する。重症患者の費用が公費で負担される以外は、季節性インフルエンザ等の対応と同等に見える。
7月31日には岸田文雄首相が公邸で受けた記者団の質問に対して、感染症法上の位置付けを変更することについては考えていないとしながらも、「2類相当として規定される項目については(専門家の意見も聞きながら)丁寧に検討する」と述べた。最終的な着地点は別にしても、実質「5類」への扱いとすることを示唆するものだろう。
今回の動きの中で興味深いのは、分科会の尾身会長が専門家の「有志」と共に2段階の対応を提言したことだ。図らずも、分科会を構成する専門家の意見が対立して、膠着状態にあるかの雰囲気をうかがわせたと言えよう。通常、意見が激しく対立するのは「利害」が絡む時である。尾身会長の苦衷が「有志による提言」として形になった、と受け止めることが妥当だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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