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オメガ3脂肪酸の代謝物、アレルギーや糖尿病を抑制 医薬基盤研
腸内細菌によるオメガ 3 脂肪酸 の代謝と「αKetoA」の抗炎症作用(画像: 医薬基盤・健康・栄養研究所の発表資料より)[写真拡大]
食べ物を腸内細菌が分解、代謝した物質が体にとって有用な機能を持つものを「ポストバイオティクス」と呼び、注目されてきている。医薬基盤・健康・栄養研究所は、アマニ油やエゴマ油に含まれるオメガ3脂肪酸を腸内細菌が分解してできる物質が、ポストバイオティクスとして、アレルギー性皮膚炎や糖尿病を抑制することを、動物モデルで発見したと発表。またそのメカニズムも明らかにした。
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この研究は、医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純センター長や長竹 貴広主任研究員らにより行われ、1月10日のMucosal Immunologyに掲載された。
油にはバターや牛脂の脂のような飽和脂肪酸と、植物油のような不飽和脂肪酸がある。不飽和脂肪酸にはさらに、オリーブ油などのオメガ9脂肪酸、大豆油やコーン油のようなオメガ6脂肪酸と、エゴマ油やアマニ油、魚油のようなオメガ3脂肪酸が存在する。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、人間の体内では合成できないため、食事として摂取する必要がある必須脂肪酸である。このオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取のバランスが、健康の維持のために重要であることがわかっている。特にオメガ3脂肪酸は摂取不足になりがちなため、EPAやDHAのサプリメントなどとしても利用されている。
研究グループは、まずマウスにオメガ6脂肪酸を持つ大豆油、またはオメガ3脂肪酸を持つアマニ油を与えてその便を調べた。すると、アマニ油を与えたマウスの便にαKetoAという脂肪酸の代謝物質が多く含まれていることが判明。
次に、腸内細菌を持っているマウスと持っていないマウスに、オメガ3脂肪酸であるリノレン酸を与えて、その便を調べた。すると腸内細菌を持っているマウスの便にはαKetoAが多く含まれていたが、腸内細菌を持たないマウスの便にはαKetoAがほとんど含まれていなかった。つまり、オメガ3脂肪酸がαKetoAとして代謝されるには、腸内細菌が必要であることがわかったのだ。
このαKetoAの作用を調べたところ、マウスのアレルギー性接触性皮膚炎の症状を強く抑えることがわかった。また、慢性的な炎症が関連していることがわかっている二型糖尿病を改善することも判明。これらのことより、αKetoAは強い抗炎症作用を持っていると考えられる。
さらにαKetoAが抗炎症作用を示すメカニズムを調べた。すると、免疫細胞の1つであり、炎症に大きな役割を果たしているマクロファージに作用し、炎症を抑えることが判明。またマクロファージや糖尿病の発症にも関わっているペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γに作用することで、炎症を抑えることが明らかになった。
研究グループは、ヒトの糞便中のαKetoAについても調査。するとオメガ3脂肪酸を持つα-リノレン酸を多く摂ることで、便中のαKetoAが増えることがわかった。またこのαKetoAの量は個人差が大きかった。これは腸内細菌叢の個人差によるものと考えられる。
今後、腸内細菌の働きで作られたポストバイオティクスであるαKetoAの産生に関わる菌を特定し、ヒトでの効果を明らかにしていく必要だあるだろう。そして医療や栄養指導の分野で役立っていくことに期待したい。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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