自動車造りの基本から学ぶべきでは? テスラのリコールに見る問題点

2022年1月10日 15:35

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ボンネットピン装着状況  画像提供: (有)スクランチ

ボンネットピン装着状況  画像提供: (有)スクランチ[写真拡大]

 2022年元旦、年明け早々の報道で、2021年12月30日に「米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)」がテスラの「モデル3」と「モデルS」合計475,318台のリコールを発表した事が報じられた。

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●「モデル3」(2017~20年式35万6,309台)の欠陥

 「モデル3」の場合は、「後方トランク開閉によってケーブルが損傷し、運転席のディスプレイに後方カメラ画像が表示されない可能性」があるとされる。

 通常、4~50年前の車ならいざ知らず、「トランク開閉によってケーブルが損傷」するなんて、お粗末な設計の乗り物を「自動車」だと名乗るのはおこがましい。

 しかし、これはせいぜい「後方カメラ画像が表示されない」程度の、可愛い部類の故障ではある。

●「モデルS」(2014~21年式11万9,009台)の欠陥

 深刻なのは「モデルS」で、「前方トランクの掛け金に不具合があり、走行中にフードが開いてドライバーの視界を妨げ、衝突の危険性を高める恐れがある」という。

 「掛け金」と表記された部分は、ボンネットの「ロック機構」の事で、ボンネットロックすら満足に作れない技術レベルだとは、現在の車では考えられない、初歩の初歩の不具合だ。

 「自動車造りの基本」に、技術的にも未熟な部分があった4~50年前も大昔の頃、確かにフロントボンネットが突然開く事故が発生した事もあった。

●大昔の状況

 4~50年前の、標準的な車のレイアウトは、前方にエンジンを積み、プロペラシャフトで動力を後輪に伝える「フロントエンジン・リヤドライブ(FR)」だった。

 そして、「車体前方に搭載したエンジンのフード(フロントボンネットフード)」は、「ロック部分」が車両の前端にあり、運転席側のフロントウインドウ下部付近に「ヒンジ」があって、正面前方側から上に開く「アリゲータータイプ」つまり、「鰐が口を開ける姿」の様に開いた。

 エンジン整備をするには、この方式が作業をやり易かったので、一般的だった訳だ。

 ところが、何等かの原因でフロントのロック部分に不都合が起こると、走行中に前方からの風圧でボンネットフードが開き、前方視界が妨げられる事による事故も発生した。

●当時の工夫

 そこで当時のマツダ車等は、前方にヒンジを設けて、「フードのヒンジ」は車の前端で固定。フロントウインドウ側に「ロック部分」を設けて、横から見て「L字型」に開く形状にしていた。

 この方式なら、万一フードのロックが外れても、風圧でフードが押さえられて、大きく開いて前方視界を妨げる事が無い。

 「逆アリゲータータイプ」と呼ばれたこの方式の欠点は、エンジン回りの整備作業で、「前から全部に手が届く」アリゲータータイプに較べて、フードが邪魔になって、「右側に回ったり左側に回ったり」する手間がかかった点にある。

●ボンネットピン

 昨今でも、万一に備えて、レーシングカーやラリーカーでは「ボンネットピン」という部品を装着する。これは、万一ボンネットロックが外れても、フードがガバッと開かない様に押さえてくれる器具だ(画像参照)。
 
 レースカーやハイパフォーマンスカーをイメージさせるので、現代では、一般車に装着するのは「ファッション」要素が主要目的となっている。

 だが装着しておけば「宅配トラックが平坦な路上でもタイヤに歯止めをかける」様に、万一の事態に対応する「追加安全装備」となるのは事実だ。

 テスラも、「操作をする際に飛び出してくるドアハンドル」みたいなギミックを考える前に、フロントボンネットフードの設計を学び、もしその技術に自信が無いのなら、ボンネットピンでも採用すれば良いのだろう。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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