世界トップレベルのエネルギー密度持つリチウム空気電池を開発 NIMSら

2021年12月16日 16:23

印刷

(a)NIMSが参加している科学技術振興機構 (JST)によるALCA次世代蓄電池プロジェクトでの研究により開発したリチウム空気電池用独自材料。(b) NIMS-SoftBank先端技術開発センターで開発したセル作製技術。 (c) 500Wh/kg級のリチウム空気電池の室温での充放電反応を初めて実験的に確認した。(画像: 物質・材料研究機構の発表資料より)

(a)NIMSが参加している科学技術振興機構 (JST)によるALCA次世代蓄電池プロジェクトでの研究により開発したリチウム空気電池用独自材料。(b) NIMS-SoftBank先端技術開発センターで開発したセル作製技術。 (c) 500Wh/kg級のリチウム空気電池の室温での充放電反応を初めて実験的に確認した。(画像: 物質・材料研究機構の発表資料より)[写真拡大]

 リチウム空気電池は、理論上は非常に軽くて容量が大きいことから「究極の2次電池」と呼ばれており、実用化に向けて研究が進められている。だが過去の研究では、セパレータや電解液などの容量に寄与しない材料を多く使用しないと、実用的な性能が発揮できないという課題があった。物質・材料研究機構(NIMS)とソフトバンクの共同研究グループは15日、現在のリチウムイオン電池のエネルギー密度を大きく上回る重量エネルギー密度の電池の実証実験に成功したと、発表した。

【こちらも】リチウム空気電池の実用化に前進 寿命決定の重要要因を特性 NIMSら

 電池の重量当たりの容量、電圧を示す指標として一般に「重量エネルギー密度」が用いられる。リチウム空気電池は、理論上では正負極の重量当たりのエネルギー密度が大きいことから、リチウムイオン電池の次世代の電池として期待されてきた。

 だが実際にはセパレータや電解液などの重量を小さくしようとすると、寿命が短くなったり容量が出なかったりなどの問題があった。そのため、電池全体での重量エネルギー密度と実用的な性能の両立が課題とされている。

 NIMSとソフトバンクは、その課題の解決に向けて、多孔性カーボン電極やレドックスメディエーター含有電解液などの材料を開発してきた。また、正負極以外の電池重量を軽くするための電解液注液技術や、電極積層技術なども研究を重ねてきた。それらの技術を組み合わせることで、現行のリチウムイオン電池を大きく上回る重量エネルギー密度のリチウム空気電池の充放電反応を、室温で行うことに成功したという。

 今回開発したリチウム空気電池は、数十サイクルの安定な動作にも成功している。他の先行研究との比較では、エネルギー密度とサイクル数の両方の観点において、世界最高レベルの結果が得られたことが明らかになっているという。

 共同研究グループは、現在も材料の改良を進めており、より実用的なレベルのサイクル寿命を備えたリチウム空気電池を開発していくとしている。

 今回の研究成果は15日付の「Material Horizon」誌のオンライン版に掲載されている。

関連キーワード

関連記事