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QRコード決済は定着するのか? 加盟店は決済手数料に我慢できるか
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現在、キャッシュレスサービスの一翼を担う存在として注目を集めているクレジットカードが、登場したばかりの黎明期には「信用でショッピングができる」として、ステータスを象徴する存在だった。当然審査も厳しく、根掘り葉掘り質問された挙句に「謝絶通知」を受けて、憤慨した人も少なくない筈だ。
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徐々にカードホルダーが拡大するにつれて、クレジットカードが持つ「後払い機能」が注目された。元々は、銀行等に十分な残高を持っているような人でも、多額の現金を持ち歩かずに「信用」でショッピングができる機能がクレジットカードの売りだった。後には、手許にも銀行にも余裕はないが、1カ月後のボーナスを当てにしてショッピングができると、カード会社自体がPRを始めるようになってイメージはガラッと変わった。
資力のある人や臨時収入の当てがある人が、高額商品を購入する入り口としての機能は、加盟店にも理解されるメリットだったから、数パーセントとされる手数料を販売経費として受け入れる余地はあった。クレジットカードの加盟店になれば高額商品を購入してもらって、売上増加が期待できるから手数料も吸収できた。
クレジットカードでの利用金額にも、利用者ごとに心理的な下限があった筈だ。数百円の支払いにクレジットカードを出して「1回払い」なんて口にすることに、余裕がないことを公表するような行為だと感じる人はいた。
今は、クレジットカードの決済端末を店頭に設置する店舗は格段に増加し、少額の利用にも抵抗感はなくなった。累積利用金額に応じたポイント還元システムを設けているカード会社は珍しくない。
PayPay(ペイペイ)の「100億円あげちゃうキャンペーン」で圧倒的な注目を集めたQRコード決済は、消費者にとっては現金を出し入れする煩わしさから解放されて、ポイント還元等への期待が持てるというメリットが増えた。加盟店には、現金管理の手間から解放されるものの、少額の商品ももれなく手数料の対象となるから、メリットとデメリットが同時に発生するという戸惑いがある。
現金管理という手間が減ることと、売上から数パーセントの手数料を控除されることが等価だと受け止める加盟店は少ないだろう。導入初期で「手数料は無料」と告知されていたキャンペーン期間中は兎も角、実際に決済手数料が控除される時期には素面に戻って、再検討を始める加盟店が出てきてもおかしくない。
おまけにQRコードでの売上は決済業者が一定期間保管するため、加盟店では運転資金として活用することも出来ない。
加盟店がQRコード決済から離脱したとしても、それを理由に消費者から敬遠される懸念は大きくない。現金やクレジットカード等の支払いに戻るだけで、利用者が被る不利益はほとんど考えられないからだ。
決済手数料を本格的に徴求しても従来の加盟店を維持できるかどうかは、やって見なければ分からないが、いつまでも利益を生む見込みがなければ、ビジネスとして成立することは難しい。1900億円を3年で溶かしたとされるペイペイは、ソフトバンクというバックがあるからできただけのことだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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